柴崎友香「百年と一日」筑摩書房 (ちくま文庫 2024/4).
PR 誌「ちくま」隔月連載.2020 単行本.
書店で長谷川憐次郎によるカバー装画に目がいってしまった.
目次第1ページのコピーのように3行に及ぶ長いタイトルの全 33 編 (例外は「娘の話 1,2」「ファミリーツリー1,2」).解説 (深緑野分) によれば,著者は担当編集者に「時間が経つ話が書きたい」と言ったそうだ.百年は怪しいが,どれも数十年を経過するはなしである.16 トンが歳取って悟ったことは,「時が経てばどうでもよくなる」ということだ.著者はお若いのに悟ってしまったらしい,というのが読後感.
*****学校、島、家、映画館、喫茶店、地下街の噴水広場、空港……
さまざまな場所で、人と人は人生のひとコマを共有し、別れ、別々の時間を生きる。
大根のない町で大根を育て大根の物語を考える人、屋上にある部屋ばかり探して住む男、
周囲の開発がつづいても残り続ける「未来軒」というラーメン屋、
大型フェリーの発着がなくなり打ち捨てられた後リゾートホテルが建った埠頭で宇宙へ行く新型航空機を眺める人々……
この星にあった、だれも知らない、だれかの物語33篇。作家生活20周年の新境地物語集。*****
自分のブログを著者名で検索したら,結構読んでいることがわかった.芥川賞作家だが,ジャンル不明の人であり,手を変え品を変えいろいろ試すのがお好きらしく,そこがぼくの好みにもあっている.
第1回「みんなのつぶやき文学賞」国内編第1位だそうだ.
文学賞は Twitter に投票で選出.第1回有効投票数は 407.第4回 (2023 年度 : ちなみに国内編第1位は「水車小屋のネネ」) には 192 まで減少している.つぶやき文学は好きだから協力したいが,新刊となると投票に参加するほど読んでいないなぁ.