Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

文学的な川柳

2020-10-01 09:02:51 | 新音律
時実新子「咲くやこの花 - 川柳秀句を味わう」東京美術 (1993/6).

時事川柳,サラリーマン川柳,シルバー川柳しか知らなかったが,裏帯によれば
*****川柳はながいあいだ,滑稽と機知でアハハと人を笑わせる五七五のあそびと思われてきましたが,今はそうではありません.*****

30年近く前の出版だが,ここに出ている句の多くは今では俳句として通用するんじゃないの? と思えてしまう.例えばここにある

 背信の背をキリンに舐められる

が川柳で,五味太郎

 中庸の鰐は寡黙の皮を着て
 
を俳句とするなら,境界はどこにあるの?

さて本書は1975年に発足した著者の季刊個人誌「川柳展望」に,著者が「前号十秀」として選出したものを集めたという.各句に添えられた著者の「鑑賞文」はときに上から目線ですこし邪魔.「はじめに」で著者がいう言うように,百人よれば百の鑑賞が生まれるのが短詩文芸の特長であるので,以下に16とんのこころに響いた12句を,説明なし作者なしで引用させていただく.

 くるものはくる大根を抜いている

 見たことのない猫がいる枕元

 すまじきは恋うつくしきものよ恋

 舌先で昨日はあった歯をさぐる

 信号をほどよく守り霊柩車

 さびしさに炬燵の足を握りおり

 つまらない男わたしも男だが

 折り紙の上手な人を疑おう

 綱わたり落ちる落ちると渡りきる

 わたくしのわるい噂はほぼ事実

 弟の妻にうっとりしてしまう

 老人はこわいぞ呆けの武器を持つ

下は3ページある目次の最初の2ページ.各章の扉には著者の川柳があり,たとえば「5 履歴」には

 七草や男の数は言わぬこと

古書として購入.

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