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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

現代の随想 井伏鱒二集

2017-04-11 10:29:46 | 読書


現代の随想 17 井伏鱒二集 小沼 丹 編, 彌生書房 (1982/7).
刊行時,著者は 84 歳で存命だった.

どうでも良いことを,どうでも良いような口調で語るのを聞くのが,精神衛生上よろしい.話題がどんどんずれていって,そのまま終わったりする.
テーマは動物のことが 1/3 くらい.あとは,釣り,文壇の付き合い,戦争など.

意外にも著者は芥川賞作家ではなく直木賞作家であった.文春の佐々木茂索から「貰う気があるかね.芥川賞でなく直木賞だ」と聞かれ「やはり時計もくれますか」と聞き返し,「うん,やるやる」と言われて喜んで受賞することにした...というのが「時計もくれますか」の骨子.
「時計も...」では受賞作「ジョン万次郎漂流記」について「記録文学とはどんなものか知らないが...資料に頼って書いた.平野零児が資料を貸してくれるとき「ジョン万次郎漂流記」は「桃太郎」や「かちかち山」と同じように,誰が書いてもかまわない物語だと云った」と書いている.ちなみに,著者の没後「黒い雨」が誰かの日記をそのまま使ったものだと話題になったことがある.

解説によれば,「軍歌『戦友』」という作品は小説として発表されたものだという.著者の場合,小説と随想の境界は曖昧だ.旅館で宴会をやっているうちに皆の財布が盗られる話だが,「ここはお国を何百里...」は 14 番まであるから,これが始まると泥棒は安心して物色できるのだそうだ.
編者は弟子.某日,井伏さんが病院で心電図をとることになって,身体のあちこちに電極をつけられたら,井伏さんは「これは嘘発見器ですか?」と聞いた...と言う話があったりで,解説もおもしろい.

装画 丹阿弥丹波子,装丁 安野光雅.

古書で 350 円.

☆☆☆☆

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