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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

若尾裕「親のための新しい音楽の教科書」

2014-08-17 08:09:08 | 新音律

Amazon の内容紹介にあるように,「明治期における西洋音楽の性急な受容がもたらした日本人のいびつな音楽観を,音楽教育/子育てといった観点から照らしだす,新しいかたちの音楽論」である.著者は当地の大学の先生をしておられたので,お話をうかがったことがある.親でもないし,これから親になることもないので,読者失格かなと思いつつ,あっという間に読了.
カバーのイラストレータの名がどこにも見つからないのが不満.

目次を見ると,「こども用の音楽/壊れやすい音楽/はずかしい音楽/むずかしい音楽/へたくそな音楽...」などと章題のほとんどが「...音楽」で統一されている.
以下,- で始まる文章はこの本の記述の要約.= で始まる文章はそれに対して私(16トン)が妄想したことで,若尾さんの意向に沿ってはいないかもしれない.

- 音楽を喜怒哀楽の感情を発露するためのものとするのは,さほど古くない時代に欧米に出現した考え方であって,高々 200 年の歴史しかない.--- 序章

= バッハの音楽も,チャーリー・パーカーやセロニアス・モンクの音楽も喜怒哀楽とはべつのところにあるようだ.

- 自閉症者から見たふつうの人たちは,嘘をつく・群れたがる・階層を重んじる・あいさつや贈り物を気にする,奇妙な人たち ということになる.あちらから見ればこちらの方が病気であり,現在世の中に蔓延しているのはそうした病気の音楽である.--- 第2章

= 音楽にはヒトに聞かせる音楽と,勝手に演るための音楽があり,自閉症者の音楽は後者.ふつうの人の風呂場の鼻唄も後者.現在は前者に比重がかかり過ぎているかとも思う.ピアノのお稽古もバンドの練習もヒトに聞かれて恥ずかしくないことが第一の目標になっている.

- 音楽の「免震構造」: 祭りなどでみんなで歌うと,うまいひともへたなひとも渾然一体となってコミュニティ的なサウンドができる.しかし西洋音楽のオーケストラではひとりでもとちると,一発でその演奏はおじゃんとなる.言うなればクラシックは免震構造的には性能が落ちる音楽である.「技術があって成立する」というのは西洋音楽の常識にすぎないのだが,このことが「音楽は苦手だ」という人を量産している.--- 第2章

= ジャズはクラシックに比べれば免震的だが,コードだモードだというお約束かある.こうしたお約束を無視したフリージャズは,演ってみると楽しいが,正直言って聴くのはイヤだ.聞かせる音楽と,演る音楽の違いだろうか.

- 学校で教える音楽にはリアリティがない.バンド仲間と競って貶されたりしながら自主的に学ぶのがリアルな音楽.--- 第 7 章

= 今は多少変わったが,戦後何十年かは,儲かる音楽産業を担ったのは不良出身の素人音楽家で,ちゃんとした音大出身は学校や音楽教室の先生になっていたようだ.

- 音楽教育はひとびとから音楽の自主性を奪い取っているのかもしれない.--- 第 7 章

= ビートルズの音楽が革新的だったのは,彼等が音楽を勉強せずにスタートしたからだろう.
= 現在はバークレーとかでジャズを系統的に教えるようになった.高級な教科書をだれでも入手でき勉強できる.その結果ジャズもクラシック同様に高級な音楽になり,バイタリティを失っている.

この項 後を引くかも.

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