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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

老人による老人のための短編集「自殺卵」

2014-08-13 08:25:07 | 読書
眉村卓,出版芸術社 (2013/8).

「BOOK」データベースより*****
年金生活者で独り暮らしの主人公の自宅に、「われわれの贈り物で、死んで下さい」と書かれた異様な手紙が届けられた。世界中で、差出人不明の卵型の自殺器と手紙がばらまかれる。キャップを外すと中に針があり、それを自分の体に刺すと、一瞬にして死ぬことが出来る。徐々に人口が減り始め、“死”が日常になる…終末SFの傑作「自殺卵」ほか書き下ろし「退院前」、「とりこ」の2作を収録した全8編! *****

著者は 79 歳.1960-80 年代の人気 SF 作家で,作品はずいぶん読んだはずだが覚えていない.
癌で2002年に死去したオクサマに日々捧げたショート・ショートが『僕と妻の1778の物語』として出版されている.

この本は年金の独居老人の立場で描かれた短編集で,「豪邸の住人/アシュラ/自殺卵/ペケ投げ」の4編は解決のない奇妙な味.「自殺卵」の,出来れば改良された死体が消滅するバージョンが欲しい.冷蔵庫に保存できないだろうか.

残る4編は敢えて言えばファンタジー.いずれも老人特有の あきらめ・あせり・ひがみ といったものが反映されている.16 トンも高齢者の仲間入りしたので,このきもちがよく分かる.
最後の「退院後/とりこ」の2編では,主人公(たぶん著者)は癌で入院し退院し再発する.このあたりになるとちょっと付き合いきれない感じ.もう十歳若かったら途中でリタイアしたことだろう.逆にもう数年先には深く共感するということかもしれない.

16 トンの年齢は両親が亡くなった年齢をとうに過ぎてしまった.この先どうなるか,見本も手本もない.こういうご同類の人たちがこうした本を読むのだろうか.「老人による老人のための短編集」は最近になって生まれたジャンルかもしれない...「短編集」なのは,年をとると長編が読めなくなるから.

奥付に続く広告にはこの著者の著書が何冊も出ている.

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