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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

原発推進者の無念―避難所生活で考え直したこと

2011-10-31 08:42:26 | 読書
北村 俊郎 著,平凡社新書 (2011/10)

著者は日本原子力発電株式会社を経て現在は社団法人日本原子力産業協会参事.気候温暖で環境が整備された,事故現場から 7km の富岡町に家を建てたために避難所生活を送ることになる.この本の 1/3 はその体験記で,肝心な部分は日記スタイル.当事者だからこそ可能な記録である.

なかほどは避難所という視点から,避難のための行政・補償・復興などを考える.第一原発廃炉のために人が動き,金が動くことで,原発の町はふたたび活性化するだろうという指摘.

後ろ 1/3 ほどが,「原発を考える」.原子力ムラの住人は日本のエネルギーを担うという責任感とエリート意識を持って来た.彼らの挫折感は「原発推進者の無念」と言うタイトルによく現れている.

いつも理科系の著者に読み慣れているのだが,この本の著者・北村さんは慶応の経済卒.
「原子力災害といえば放射線障害とと考えがちだが,命を守るために,家も家財も職業も(避難所生活のために)自由を失うのが避難災害.放射線障害には実感がなく,避難災害と,これに加えての生産停止・出荷停止こそが原子力災害」という発言が印象的.
原発推進者として真摯に反省しておられるが,でも 原発をやめろとはひと言も言ってない! 北村さんは避難所生活はこりごりだが,原発そのものには望みを捨ててはいないのかも.

読者としての感想は,
この先,原発をやめるのも地獄,やめないのも地獄,ということ.

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