琵琶湖という宇宙③

何も残さず、
根まですっかり抜き取るという名の疑似餌。
その疑似餌は、琵琶湖の水で産声を上げる。
硬い木片を削り研かれた塊は、
美しく着飾り身をくねらせ妖しく魚を魅了する。

手に入れた者は、夜な夜な妄想に溺れる。
放たれた瞬間、独特の緊張感で目眩がする。
竿先に伝わる振動が胸の高鳴りと同調する。
そして血の流れが加速する。

魅入られているのは、魚ではなく
糸の先の人間かもしれない。


純粋に人の手から生み出されるモノの凄さと温もり。
ひたむきな手は、いつしか特別な業を纏う。
人生を掛け湖（うみ）に集いし輩たち。
ここには、魔法使いが多く棲む。

琵琶湖という宇宙。
夜空を泳ぐ星を探す。



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琵琶湖という宇宙①
琵琶湖という宇宙②