三井住友銀行をはじめ、3大財閥「三菱」「三井」「住友」グループ間の合併が行なわれるようになったいまでも、3大グループは熾烈な競争を繰り広げている。その象徴が、東京の玄関口である東京駅周辺の開発事業だ。空撮写真を見れば、このエリアが3大グループの陣取り合戦の舞台であることがわかる。
駅の西側に広がる丸の内エリアには、三菱商事や三菱東京UFJ銀行、日本郵船など多くの三菱のグループ企業が本社を置く。
元々は三菱財閥の2代目である岩崎弥之助が明治政府から買い取った広大な野原を、三菱が日本屈指のビジネス街に育て上げた。今では丸の内エリアの3分の1を三菱が所有するといわれている。
線路をまたいで東京駅の北東に広がる日本橋エリアは、三井財閥発祥の地であり、三井不動産の本社や三越本店などが立ち並ぶ「三井村」だ。2004年には三井不動産の「コレド日本橋」がオープンし、三井村のランドマークとなった。
ところが2015年、三井の象徴ともいえるコレド日本橋の真正面に住友不動産が「東京日本橋タワー」を竣工した。高さ180メートルの同タワーは高さ120メートルのコレド日本橋を見下すように屹立する。
丸の内を牙城とする三菱、日本橋をホームとする三井に対し、元来、大阪を本拠とする住友は東京に確たる拠点を持っていない。その住友による“殴り込み”に三井グループ関係者は苦々しい表情だ。
「先祖代々、守ってきた土地に“新参者”が入ってきた。社内では『これは住友との戦争だ』との声もある」
三井も黙ってはいない。「日本橋再生計画」を推進し、東京日本橋タワーのすぐ隣に高さ175メートルの高層ビルを建設中で、竣工は2018年度の予定だ。
ビルが完成すれば、コレド日本橋とともに住友の東京日本橋タワーを挟み撃ちすることになる。まさにオセロゲームのごとく、苛烈な陣取り合戦が繰り広げられている。
反転攻勢を強める三井は「南進」し、東京駅の東側にある八重洲エリアにもグイグイと押し寄せ、日本橋から八重洲にかけての8地区で再開発を行なうことを表明した。住友も旧八重洲富士屋ホテル周辺の一体開発を発表し、両者の戦いが激化している。
三井と住友のバトルによる火の手が周辺まで迫り、これまで丸の内で“専守防衛”に徹していた三菱も動いた。2015年8月、三菱地所は東京駅の北側、大手町と八重洲にまたがる「常盤橋街区」に総額1兆円を投じる再開発プロジェクトを発表した。不動産関係者が驚きの声をあげる。
「ついに三菱が丸の内の外にまで進出を始めた。この先も東京駅周辺はさらなる争奪戦が繰り広げられるだろう」
3大グループは、いまなお切磋琢磨し、拡大を続けている。そうした覇権争いの特徴は、単なるビジネスや利益の奪い合いではなく、「プライド」を懸けたせめぎ合いでもあることだ。その「プライド」こそ「財閥力の源泉」といえるだろう。