何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

幸せの青い月

2018-01-31 22:51:50 | ひとりごと
2018年1月31日は、満月よりも月が大きく見える「スーパームーン」で、見ると幸せになるという言い伝えがある一月 ひとつき に二度の満月「ブルームーン」で、そのうえ皆既月食のため月が赤銅色に見える「ブラッドムーン」だという。
これを総じて、巷では「スーパー・ブルー・ブラッドムーン」という言葉が出回っているが、この名称が正式なものか否かは、天文学に明るくないので分からない・・・分からないが、それさえ見れば幸せになれるのなら、今は何にでも縋りたい私なので、帰宅途中は空ばかり見上げて歩いていた。
20:43 春霞に浮かぶブルームーン

月が欠け始める頃から雲が出てきたせいで、ブラッドムーンは見損なったが、春霞に浮かぶスーパームーンは ’’春’’がすぐそこまで来ていることを教えてくれた。
そんなブルーブーンの恩恵に与るため、写真を掲載しておきたいと思っている。

こちらを見て下さった方々にも、幸いが届きますように・・・・・

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その金に愛はあるのか

2018-01-30 21:08:07 | ニュース
600億近い仮想通貨を流出させてしまうという大失態で、現在世間を賑わせている仮想通貨問題。
このニュースで又、性懲りもなく、ある本を思い出したのだが、この本については「愛を運んでくれるワンコ」 「ワンコの愛は一生犬命①」で<つづく>としていたのでヨシとすることにする。

<コインチェック社長が記者会見=仮想通貨580億円流出で> 時事通信映像センター2018/01/28公開より
仮想通貨取引所大手のコインチェック(東京)は26日、仮想通貨「NEM」が不正に外部に流出したと発表した。流出額は580億円相当で、外部からの不正アクセスで引き出されたと説明。被害に遭った顧客数や口座数は「調査中」として、明らかにしなかった。同社はNEMのほか、ビットコインなど取り扱う全通貨の出金を停止した。
和田晃一良社長は26日深夜、東京都内で記者会見し、「お騒がせし深くおわびする」と陳謝。不正に流出した仮想通貨の行方や原因の究明を急ぐ考えを表明した。
https://www.youtube.com/watch?v=KUnbltLuWME


<昔 貝殻、今チョコ金貨>

問題となっているコインチックの社長(27才)は、東京工業大学に在学中(2012年)に起業し、現在それは世界の仮想通貨市場(取引高)の一割をしめるまでに成長していたというが、これを聞き、「靴磨きの少年が、株の話をし始めたら、その相場はおしまい」という言葉を思い出したというと、何とかエモン筆頭に どの筋からかお叱りを受けるだろうか?

だが、経済や経営を学んだ学生が 銀行に就職し立派なバンカーになろうと研鑽を積んでいる小説を読んだばかりで、しかもその主人公が今世間を賑わしている社長と同世代だからか、あるいは銀行が扱う生身のカネに対し一方が仮想通貨だからか、この手のモノに どうにも胡散臭さを感じてしまう。

「アキラとあきら」(池井戸潤)
本の裏表紙の あらすじ より
『零細工場の息子・山崎瑛(あきら)と大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬(かいどうあきら)。生まれも育ちも違うふたりは、互いに宿命を背負い、自らの運命に抗って生きてきた。やがてふたりが出会い、それぞれの人生が交差したとき、かつてない過酷な試練が降りかかる。逆境に立ち向かうふたりのアキラの、人生を賭した戦いが始まった――。感動の青春巨篇。』

子供の時に父の町工場が倒産し夜逃げした経験のある瑛と、大手企業の御曹司として恵まれた道を歩んできた彬は、ともに同じ大学で経済を学び、大手銀行に就職する。
現実の銀行、しかも その融資担当の仕事がキレイごとではないのは、知れた事だし、それは瑛の父の工場が融資を絶たれたために倒産した場面にも表れているが、二人のあきらの新入行員研修での融資部長の訓話は、銀行とは斯くあるべきと思わせるモノだ。(『 』「アキラとあきら」より引用)

『銀行は社会の構図だ。ここにはありとあらゆる人間たちが関わってくる。
ここに来る全ての人間たちには、彼らなりの人生があり、のっぴきならない事情がある。
それを忘れるな、諸君。
儲かるとなればなりふり構わず貸すのが金貸しなら、
相手を見て生きた金を貸すのがバンカーだ。
金貸しとバンカーとの間には、埋め尽くせないほどの距離がある。
同じ金を貸していても、バンカーの貸す金は輝いていなければならない。
金に色はついていないと世間ではいうが、色をつけなくなったバンカーは金貸しと同じだ。
相手のことを考え、社会のために金を貸して欲しい。
金は人のために貸せ。
金のために金を貸したとき、バンカーはタダの金貸しになる。』

勿論、仮想通貨とバンカーの世界が異なることは承知しているのだが、本書がバブル崩壊直前の設定と思われるため、実態定かではない現在の株高と 仮想通貨の危さが重なってしまったのだ。
そんな危機感を呼び起こすセリフが本書には、ある。

『たしかに、今はイケイケドンドンの戦略がまかり通っている。だが、この景気もいつかは終わる。
そのとき、いま正しいと思えたものが誤りになる。
正しい融資というのは、いつの時代でも、どんな景気の下でも、きちんとした原則に基づいている。
実需と妥当性。その有価証券投資にそれがあるのか』
『カネは人のために貸せ』

『株は永遠に上がり続け、地価は上昇を続ける。世の中は好景気が当たり前になり、投資すれば必ず儲かる。
そんな世の中が続けば、銀行にとってーいや、世の中にとってこんな楽なことはない。
だけど、どうだろう。そろそろ・・・・・』

融資だけでなく、正しい仕事・業務というのは、いつの時代でも、どんな景気の下でも、きちんとした原則に基づいているのだと思う。
仕事や業務により原則は異なるが、その根幹が「人のため」であるのなら、全ての原則の根幹を問うに相応しいセリフが、以前よく見たドラマにある。

「そこに愛はあるのかい」(「ひとつ屋根の下」あんちゃん名言)

青くさすぎて恥ずかしいセリフについては、も少し<つづく>かもしれない。

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ワンコと私 愛は一生犬命 魂の伴侶と呼んでおくれ

2018-01-29 00:05:31 | ひとりごと
「ワンコの愛は一生犬命①」「ワンコの愛は一生犬命②」「ワンコの愛は一生犬命③」より

ワンコ 久しぶりにワンコの夢をみたよ
ワンコを思わない日は一日としてないけれど、
意外なことに、ワンコが夢にでてきたことは、数えるほどしかないんだよ
今朝方、庭で一緒に遊んでいる夢をみながら、
「これは夢なんだ、でも、この夢の間だけでもワンコの匂いに包まれていたい」と思っていると、
門扉が開けっ放しになっているのを見つけたワンコが、通りに出ていってしまうんだよ
いつもの散歩コースではない方角へ一目散に駆けていくワンコを、
「これは夢なんだ」と思いながら、半泣きで追いかけ・・・見失ってしまうところで、
目が覚めたよ ワンコ

犬は、生活圏内で迷子になっても、自分の残してきた匂い(ちっち)を頼りに帰宅できるけれど、
生活圏外で迷子になると帰れないことも多い、と聞いたことがあるから、
目が覚めた時は、呆然として、
そして、もしかすると、それがワンコからのメッセージなのかと思い、寂しくなったよ ワンコ

「雨降り地区」(芝山弓子)にあるように、
家族がいつまでもメソメソしていると、ワンコは安心してお空組生活を満喫できないのかい
これでも皆少しは立ち直り、最近では笑顔でワンコのことを話すまでになっているんだよ ワンコ
でもさ、一つ大きな問題があるんだよ

家人は「又そう遠くない いつか わんこを家に迎えよう」と言うんだよ ワンコ
「ワンコはきっと我が家で幸せだったから、優しいワンコは、次の犬が幸せになること喜ぶ」って言うんだよ

でも、私は「ワンコでなければ嫌なんだよ ワンコ だからワンコに帰ってきておくれ」とお願いするんだよ

最近読んだ本にさ、同じ問題に戸惑う家族が描かれていたんだよ ワンコ
「陽だまりの天使たち ソウルメイトⅡ」(馳星周)

本書「陽だまりの天使たち」は、相互にソウルメイトたる犬と人間の物語なんだよ
病と闘う少女に寄り添う犬、妻と息子と仕事を失い絶望した男の前に現れ救う犬
使役犬との関わりに戸惑う人、犬の安楽死問題に直面し苦しむ人
7編の短編はいずれも心打たれるものなんだけど、
その中に、今の私に悩ましい場面があるんだよ

それは、愛犬を喪い4か月、
泣き暮らしている娘を尻目に、母が保護センターの犬を勝手に引き取ってきてしまう話のだけど、
そこにある文が、今の私には悩ましいんだよ (『 』「陽だまりの天使たち」より)
『最愛の犬を失い、うちのめされ、それっきり犬を飼わなくなる人がいる。
 また新たな犬を迎えて、以前の犬と変わらぬ愛を注ぐ人がいる』
娘は、「自分は前者で、母は後者だ」と怒っていたのだけれど、徐々に考えを変えていくんだよ
『犬は飼い続けるべきなのだー今ではそう思う。最初の犬から次の犬、さらにその次の犬。
 代が替わっていくうちに人間も成長する。
 人間が成長すれば、犬はもっと幸せに暮らしていけるようになる』

本書にはね、最初と最後に、犬の語りがあるんだよ
『(心配していないで、泣いていないで)今を生きようよ。
 一瞬、一瞬を大切に生きようよ。~略~
 ぼくはずっとあなたのそばにいるんだよ。
 ぼくとあなたたちは魂で繋がっているんだから。
 魂の絆は永遠なんだから。
 だから約束してよ。
 新しい子を迎えるって。
 その子に、ぼくにしてくれたのと同じことをしてあげて。
 愛してあげて。幸せにしてあげて。~略~
 その子との生活の一瞬、一瞬を楽しんでね。
 だって、あなたたちが幸せなら、
 ぼくの魂も幸せになれるから。
 あなたたちの幸せがぼくの幸せなんだから。
 だから、今を大切に生きてね。』

『(犬が生まれてくるのは)あなたと魂の伴侶になるため。あなたを愛し、あなたに愛されるため。
 わたしたちは誰かを愛さないと、だれかに愛されないと幸せじゃないの。』
『新しい犬を迎えてあげて。わたしたちにしてくれたようにその子を愛して慈しんであげて。
 そうしたら、わたしたちも嬉しいから。
 だって、その子、わたしたちの群れの一員になるのよ。
 魂の伴侶のひとりになるの。』

ねぇワンコ
ワンコが天上界の住犬になって一年の頃にお告げしてくれた本
「A Dog's Purpose」(W.Bruce Cameron)
「野良犬トビーの愛すべき転生」(W・ブルース・キャメロン 青木多香子・訳)
あの本は全てが感動的だったけど、特に次の二つが心に残っているんだよ
「犬はいつも目的(仕事)を持って生きていて、それが達成できることに喜びを感じる」
「トビーの仕事は生まれかわるたび異なるが、いつも一番の目的は、最初の飼い主に出会うことだった」
だから ワンコ
いつもいつも 「ワンコ 帰ってきておくれ」と星に願いをこめるのだけど、
それはイケないなことなのかい?
次の子を、別の子として受け入れなければならないのかい?
それとも、魂の群れの一員は皆つながっているから、別の子でありながら’’別’’ではないのかい?

私はさ、ワンコ
そもそも別も次も、まだ考えられないんだよ ワンコ
でも、そこにワンコを感じることができたら・・・

今は、本書での犬の語り『一瞬、一瞬を大切に生きようよ』『今を大切に生きてね』
これを、ワンコからのお告げと思い、
新しいこれからを、ちょっと頑張ってみるよ ワンコ
また本のお告げ、頼むよ ワンコ

追記
ワンコの目的が、我が家にあることを祈りつつ改めて「A Dog's Purpose」を読んでみたよ ワンコ
「相棒と呼んでおくれ ワンコ」 「ワンコ'purpose 相棒」  「永遠に相棒だよ ワンコ」

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ワンコの愛は一生犬命③

2018-01-27 12:00:00 | ひとりごと
ワンコ
「ワンコの愛は一生犬命①」「ワンコの愛は一生犬命②」<つづく>としながら、
なかなか③を書けなくて、ごめんね
また噴火があって、被害に遭われた方がいらっしゃり、お見舞いの気持ちを認めたり、
それに伴う、反省をしていたりして、遅くなってしまったよ 
でも、東日本大震災の日、
家人と一緒にテレビに向けて、被災地の無事を祈っていたワンコなら、
被害が拡大しないよう祈る気持ち、分かってくれるだろう ワンコ

世界中で地震や噴火が頻発していて、こっちの世界は大変だよ ワンコ
こんな世界へ帰って来ておくれと頼むと 迷惑かい? ワンコ

「ワンコの愛は一生犬命②」で、「虹の橋」の原詩を紹介したけれど、
作者不明のあの詩を中心に、「虹の橋」三部作というものがあるそうなんだよ
二作目「虹の橋で」は、とても重いテーマだけれど、
生き物にとっても人間にとっても、希望と救いを与えてくれるものなのだけど、
三作目「雨降り地区」が、最近読んだ本とあわせて、重く心ののしかかっているんだよ 

「雨降り地区」(芝山弓子)
こんな風に、幸せと愛の奇跡に満ちている、『虹の橋』の入口に、
『雨降り地区』と呼ばれる場所があります。
そこではいつもシトシト冷たい雨が降り、動物たちは寒さに震え、
悲しみに打ちひしがれています。
そう、ここに降る雨は、残してきてしまった誰かさん、
特別な誰かさんの流す涙なのです。
 
たいていの子は半年もしないうちに、暖かい日差しの中に駆け出して
仲間と戯れ、遊び、楽しく暮らすことができます。
ほんの少しの寂しさと、物足りなさを感じながらも・・・
 
でも、1年たっても2年たっても、ずっと『雨降り地区』から
出て行かない子たちもいるのです。
 
地上に残してきてしまった、特別な誰かさんがずっと悲しんでいるので、
とてもじゃないけれど、みんなと楽しく遊ぶ気になれないのです。
地上に残してきた誰かさんと同じつらい思いをして、
同じ悲しみにこごえているのです。
 
死は全てを奪い去ってしまうものではありません。
同じ時を過ごし、同じ楽しみを分かち合い、愛し合った記憶は、
あなたの心から、永遠に消え去ることはないのです。
地上にいる特別な誰かさんたちの、幸せと愛に満ちた想い出こそが、
『虹の橋』を創りあげているのです。
 
ですからどうか、別れの悲しみにだけ囚われないでください。
彼らはあなたを幸せにするために、神様からつかわされたのです。
そして、何よりも大事な事を、伝えにやって来たのです。
 
命と儚さと愛しさを。
つかの間の温もりに感じる、慈悲の心の尊さを。
 
その短い生涯の全てを以って、教えてくれるのです。
癒えることのない悲しみだけを、残しにくるのではありません。
 
思い出して下さい。
動物たちが残して行ってくれた、
形にも、言葉にもできない、様々な宝物を。
 
それでも悲しくなったら、目を閉じてみて下さい。
『虹の橋』にいる、彼らの姿が見えるはずです。
 
信じる心のその中に、必ずその場所はあるのですから・・・


ねぇワンコ
ワンコが天上界の住犬になってしまってからの一年は、
季節が変わるごと、何を見ても何を聞いても、ワンコとの思い出が甦り、
身も世もなく泣いたものだけど、そのせいでワンコは困ってしまったのかな
季節が二巡目を迎えても、
ワンコに触れることのできない寂しさは変わらないけれど、
色々な思い出を笑顔で話せるようになっている家族を見て、
ワンコは少し安心しているかな 

でもさ、ここで問題が、大きな問題があるんだよ ワンコ
最近読んだ本は、それを考えるとき、私に重くのしかかってくるんだよ ワンコ
その本については、又つづくとするね ワンコ

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性懲りもなく、本

2018-01-25 12:00:00 | ニュース
「’’想定外’’の誤解を詫びる」より連作

私には フィクションである物語の世界を安易に現実に持ち込む癖がある、と分かっていながら、性懲りもなく、あるニュースからある本を思い出している。

<京大iPS研で論文不正 図を捏造、山中所長は辞職も検討> 1月22日(月)17時43分 共同通信配信より
京都大は22日、京大iPS細胞研究所の山水康平特定拠点助教の論文に捏造と改ざんがあったと発表した。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って脳の構造体を作ったとの内容で、主要な図6点全てに不正があったと認定した。同研究所の山中伸弥所長は京大で記者会見し「非常に強い後悔、反省をしている。心よりおわび申し上げる」と謝罪した。
今後、山水氏ら関係者を処分する。山中所長は所長を辞職するかに関し「その可能性も含め、どういう形が一番良いのか検討したい」と話した。


研究費捻出に奔走される姿を見るたび嘆息し、募金という形で僅かながらでも応援できないかと家人と話していた矢先の出来事であったため、深く頭を垂れる山中教授の姿にショックを受けている。
この道で日本はすでに、一つの知性を喪っている、しかも同様の事例で。
では何故 同じ過ちを繰り返すのかと問うたとき、ただ当該科学者の倫理観の欠如のみを問題視しているのでは解決できないと思われる。
勿論、第一義的には科学者のモラルが問われなければならないが、「衣食足りて礼節を知る」「恒産なくして恒心なし」は紛れもない事実だ。
そして、現在多くの日本の科学者が、「(iPS細胞研究所の9割が有期雇用であることについて)民間企業ならすごいブラック企業」(山中教授 弁)という過酷な環境で研究しているのも、また確かな事実だ。

今回の件、「見栄えある論文にしたかった」というのが、渦中の助教の論文ねつ造の理由らしいが、その弁で思い出した本がある。

「虚栄」(久坂部羊)
本書は、政府の肝いりで設立された「がん撲滅プロジェクト4G」が、内科・外科・放射線科・免疫療法科の本筋を外れた主導権争いの挙句の果て頓挫する過程を、医療界の内幕を暴露しながら描くもので、さすがは財前五郎ナニワ大学教授の後輩(阪大医学部卒の著者は、財前もとい神前五郎教授の薫陶を受けてもおられる)が書いているだけのことはある、と思わせる。
そんな「虚栄」にある、功を焦った助教が論文を捏造してしまう場面は、タイトルが「虚栄」だけに、傲慢と虚飾に満ちたミットモナイものとして描かれている。

本書の著者は、先にも書いている通り現役の医師なので、その医師が書く医療モノは一面の真実を描き出しているに違いないと思いがちだが、今回は本の世界をそのままに受け留める危険性について反省したばかりなので、著者の生の意見を知ることができないかと検索していると、次の記事を見つけた。

「カドナビ」「著書インタビュー久坂部羊 虚栄」
https://store.kadokawa.co.jp/shop/pages/interview_002.aspx

この記事の中で久坂部氏は、『(データーの改竄について)すでにたくさん起こっていますよ。研究者は結果が出るまでにものすごい努力を積み重ねているんです。しかも世界レベルで競争が行われていて二着では意味がない。実験でいい結果が出たとして、論文を書いて発表するまでの間にほかの誰かが発表したらアウトなんですよ。そういう状況にいる研究者たちが、ついつい実験結果の確認を十分せずに見切り発車したり、データの誇張みたいなズルをしてしまう。マスメディアから見ると、医学者が論文を捏造したり、盗作したりするのはけしからん、と単純に割り切りますが、研究している側からすればそんな単純な話ではないということもわかってほしいですね』と述べている。

久坂部氏ご自身が研究の世界に精通されていることを考えれば、研究者の過酷な状況が、ただ世界レベルで争われていることのみに起因するものではないことはご存知だろう。傍から見れば、傲慢とも云えるプライドを頼りに、不安定な有期契約で寝食を削って研究していることを十分に知ったうえで、『そんな単純な話ではない』と訴えたいのだと思う。
そして、そのような思いを知り、再度「虚栄」を手に取ると、自分の見立てが正しいと盲信し それを証明(強調)したいがためにデーターを見栄え良いものに揃えてしまう場面に、悲哀さえ感じてしまった。

私はもともと物語の世界に引きずられ過ぎるという癖があるのは承知していたが、今回の件で、作者が言外に秘めている思いを汲み取る能力にも問題があると分かってしまった。
おそらく、これからも性懲りもなく、ニュースを見ては関連本を思い出すだろうとは思うが、その時々に再考する習慣を身に着けたいと、反省し考えている。

ところで、久坂部氏の記事には、今の自分的には非常に気になる文がある。
『優れていて性格のいい人なんてほとんどいないですよ。優れている人はだいたい性格が悪いし、性格がいい人は得てして無能だったりする。それはどこの業界でも同じじゃないですか? 性格が悪くて無能な人はいっぱいいますけど(笑)。』

この年になれば、自分が「優れている」や「性格がいい」と云われるだけの人間でないことは十分に分かっている。
だが、せめて『性格が悪くて無能な人』とまでは云われないよう精一杯努力しようと、悲しい覚悟を 少し 持っている。(この年になれば、ふてぶてしくも開き直ってしまおうかとも思っている)

追記
日本はすでに、同じ分野で、優れた知性を喪っていている。
勿論、科学者のモラルは、特にそれが命に関わる分野においては厳しく問われる必要があるが、そうだとしても、あの時のように下衆の勘繰りとしか思えない 何とか砲的な魔女狩りで、あたら有為な人材を失ってならない。
山中教授や関係者の方々が、適切な対応をとられた後には、日本で更なる研究をしてくださるよう願っている。


参照
<iPS細胞研究所の9割有期雇用 山中教授「民間企業ならすごいブラック企業。何とかしないと」奈良で講演>http://www.sankei.com/west/news/150524/wst1505240031-n1.html
<非正規雇用多く組織基盤脆弱 背景に根深い研究者事情>
http://www.sankei.com/west/news/180123/wst1801230009-n1.html

愚見
「本当のことを乗り越えさせる希望」 「’’虚栄’’が打ち砕く希望」

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