何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

昭和は遠くなりにけり

2017-11-03 20:45:00 | 
今日11月3日は、明治節や文化の日の祝日として知られているが、実は日本国憲法が公布された日でもある。
今日 読み終えた本は、それに直接かかわる本ではないが、最近ニュースになったことも含めて幾つか関わりがあるので、本の本筋からは離れるだろう私の感想を記しておこうと思っている。

「総理の夫」(原田マハ)
タイトルを一瞬 見ただけでは、「総理を務めている夫」なのか「女性総理の伴侶たる夫」なのか判然としないが、タイトル「総理の夫」の下に小さな飾り文字で「First Gentleman」とあるので、女性総理大臣の夫の話だと分かる。そして、この総理の夫となる鳥類学者の相馬日和(ひより)が、日本初の女性総理大臣・相馬凜子が誕生する日に、歴史の生き証人とすべく書き始めた「日記」という体裁をとっているのが、本書「総理の夫」というわけである。

実業之日本社による本書の紹介文より
『「待ったなし」の日本に、史上初の女性&最年少総理誕生
20××年、相馬凛子(そうま・りんこ)は42歳の若さで第111代総理大臣に選出された。
鳥類学者の夫・日和(ひより)は、「ファースト・ジェントルマン」として妻を支えることを決意。
妻の奮闘の日々を、後世に遺すべく日記に綴る。
税制、原発、社会福祉。
混迷の状況下、相馬内閣は高く支持されるが、陰謀を企てる者が現れ……。
凛子の理想は実現するのか!?
痛快&感動の政界エンターテインメント!』
http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-55318-4

本書の帯に踊る「女性総理で世界は変わる!」などという文字を見れば、否が応でも最近の解散総選挙のドタバタを思いだしてしまうのだが、私は小心者ということもあるし、実際の政局はもっと魑魅魍魎・複雑怪奇だとも思うので、本書の内容と現在の政局について深く言及するつもりは、ない。
ただ、時世に鑑みて2点だけ記しておきたい。

まず今日11月3日が憲法記念日なので、二点のうちの一つ’’希望’’ あるいは ’’幸福’’ について
相馬凜子総理の初めての所信表明演説は、国民に直接語りかけるというスタイルが世論に支持され、その直後の世論調査で支持率が80%を超えるのだが、そこで繰り返される言葉が、私に、憲法の授業の一コマを思い出させた。

凜子総理は所信表明演説で、『(新年を迎え)あなたのところへやってきた年が、誰にとっても心弾む、希望溢れる、平和な年であって欲しい』『幸せな年であって欲しい。幸せな1年であるためには、幸せな毎日を重ねていくことが必要。国民の皆さん一人一人が、あまねく幸せな毎日を重ねていくために、皆さんの一日一日を、私は、責任をもって支えていきたい。それこそが私に課された使命であると考えています』『私達の子供たちの未来を、幸せで彩り輝かせましょう。皆さんの生活を私が守ります。あなたを、私が、必ず守ります』と語りかける。(『 』「総理の夫」より)

この程度ならば、どの総理も言っていそうな気もするし、逆にこれほど明確に「国民の’’幸せ’’を守る」と言い切る総理はいないので羨ましい気がしないでもないが、ここで繰り返される’’幸せ’’という言葉が、最近とみに胡散臭さが増している’’希望’’とセットとなっているため、過剰に反応している節は、確かにある。

だが、その胡散臭さは別にして、「国民の皆さん一人一人」を、あまねく納得させる事の難しさと、しかし果たして「国民皆さん一人一人」あまねく同じ’’幸せ’’を希望すべきなのかという問題に、ぶち当たる。

これを考える鍵が、憲法最初の講義で提起された教授の設問にあると、私は思う。
「自由と平等、どちらが人間にとって重要だと思いますか」
「幸福(権)と、幸福追求権(憲13条)はどう違うと思いますか」

生まれたての赤ちゃんも含めて国民一人あたりの借金は837万円(総額1062兆円 2016年9月末)だとか、2025年問題だとか、超少子高齢化により2040年には地方自治体が半減するだとか聞かされれば、御上が 国民一人一人にあまねく’’平等’’に ぶら下げる、もとい提示する’’幸せ’’やら’’希望’’やらで納得し、それ以上は決して追求してはならないのだろうか。

現下の政治情勢に鑑みると、今日の日に公布された憲法が変更される日も近いかもしれない。
その時、真に見定めなけされならないのは、7条解散の制限やら9条云々やらよりも、天賦人権思想に関わる根源的な問題かもしれない。
それは、「皆が平等でありさえすれば、より良い社会を求める自由は制限されてもよいのか」という問題に行きつくように思えてならない。

つづく

追記、
本書に伝説のスピーチライターとして登場する久遠久美は、同じく原田マハ氏の「本日はお日柄もよく」でオバマ大統領が誕生したアメリカに颯爽と旅立つ久遠と同一人物だと思われる。だとすれば、「本日はお日柄もよく」から何年経った日本を想定して本書が書かれているのか、いろいろ気になることもある。
「CHANGEをチェンジし CHANCEをつかめ」 「CHANGEを一歩進めて CHANCEをつかめ」
そのあたりは、つづく、とする



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