羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

ルパン三世 1

2015-12-25 20:36:06 | 日記
イタリア北東部の孤島にある金庫のような牢獄の中で、痩せ衰え髪も髭も伸びたルパンは鼻歌を歌いながら横たわっていた。
時は遡り、ルパンは最初イタリア内地のごく普通の監獄に収監されていた。ただし、看守は500名、他の囚人は全て別の監獄に移されていた。イタリアには死刑が無い為、ルパンは終身刑であった。警備は万全という看守長は満足していない風の銭形に「あなたの豊富な経験によると、いつどうやってルパンが脱獄すると?」と挑戦的に言ったが「おそらく、今頃」と銭形は応え、実際に監獄に警報が鳴り響いた。「きたかぁ」何やら嬉しそうな銭形。ルパンはベッドの下の床に穴を開け、ダクトを通って脱出を計っていた。
これは銭形があっさり見抜いて看守を引き連れ先回りしていた。「死ぬまで逃がしはしないぞ? ルパン」「俺を閉じ込めたきゃ、全面鋼鉄にでもしなきゃダメだろう?」居直るルパン。銭形はリクエスト通りに監獄内に鋼鉄の牢獄を新設してルパンを閉じ込めた。さらに看守長は「牢獄内は監視カメラで把握しているっ」とムキになったが、ルパンはカメラを破壊し、慌てた監視員が牢獄に急行するとルパンは組み付いた。「ダメだよ不用意に扉を開けちゃ」不敵に笑うルパンだったが「その通り」読んでいた銭形がすぐに現れた。「監視カメラになんて頼ってちゃ、肝心なこと見落とすぜ?」言ってくるルパン。銭形は「もう監視カメラ等に惑わされることはないぞっ!」即、監視カメラを外した。
「さすがのルパンもこれで脱獄の手は、ありませんよねぇ?」すっかり弱気になってきた看守長。しかし、看守長は牢獄に神父を呼んでいた。「彼は己の罪を悔い改めております」牢獄から出た神父はもっともらしいことを言ったが「俺の目はごまかせんぞっ、ルパン?!」立ちはだかり、神父の変装を剥ぎ取る銭形。中からルパンが出てきた。
     2に続く

ルパン三世 2

2015-12-25 20:35:52 | 日記
「たくっ、張り合いがねぇなぁ、ここは変装天国かっつぅの」悪びれないルパン。銭形は、人が多ければ変装されるリスクが高くなるとして船で鎖でグルグル巻きにしたルパンを冒頭のイタリア北東部の孤島に作らせた金庫のような専用牢獄に護送し、収監した。
「信じるモノは己の二つの目のみ! お前が脱獄することは不可能だ」牢獄の覗き窓からルパンを見て宣言する銭形。「どうやら今度ばかりは本気みたいだなぁ、とっつぁん」冒頭の状態のように痩せ衰えてはいないが、既に髪も髭も伸びてきているルパン。「お前の時代は終わりだ、ルパン!」覗き窓の蓋を閉める銭形。それから銭形は牢獄の前にテントを張り、石を組んでクリームシチューを煮、覗き窓からルパンに出した。銭形は捜査員に変装させて次元、五ェ門、不二子に張り付かせてもいた。半年余り、次元達に動きは無かった。
カレーを煮て牢獄に持ってゆく銭形。中から異臭がして、蝿まで飛んでいる。「なんだこの臭いは?」「毎日無駄な手料理、ごくろうさん」ルパンは食事を取っておらず、置いた皿の料理が腐って、蝿と異臭の原因となっていた。「とっつぁん、敗けを認めるよ」「ハッ?」「俺もお手上げだ。このまま行き続けるなんて、無様にも程がある」「貴様っ?!」「潔く死を選ぶよ」銭形は咄嗟に牢獄を開けようとしたが「あっ!」思い止まる銭形。「騙されんぞ! 作戦だろう?!」テントに引き返した銭形。季節は冬で火を起こし、暖を取ったが「俺は騙されんぞぉっ!」苛立って岩を殴って「ぬぉーっ?!」痛がり「何を企んでる、ルパン?」銭形は牢獄を見ていた。
日が替わり「一口でも食べろ」サンドウィッチを覗き窓から差し出す銭形。ルパンはかなりやつれていた。フラついて倒れるルパン。「ルパンっ!」動揺する銭形。「あのバカがっ!」すぐに掌認証と鍵で
     3に続く

ルパン三世 3

2015-12-25 20:35:42 | 日記
牢獄を開けようとする銭形だったが「待て、これもヤツの作戦かもしれん」再び思い止まる銭形。「そんな三文芝居で俺が鍵を開けると思ったか?! 諦めてメシを喰えっ!」覗き窓の蓋を開けて怒鳴る銭形。「言ったろ? 無様に生きるつもりはねぇ、ってな?」ルパンの応えに窓の蓋を閉める銭形。ルパンは倒れたまま鼻歌を歌い始め、雪の中、しばらく牢獄の前に立ち尽くしていた銭形。
「クソォっ! 本当に死ぬつもりか?!」テントの前で手近な岩に頭突きを喰らわす銭形。「次元! 五ェ門! 不二子! このままではヤツはホントに死ぬぞぉっ?! ルパンを助けに来るヤツはいないのか?!」牢獄を振り返る銭形。中ではルパンが冒頭の場面と同じように鼻歌を歌い、力無く体を横たえていた。朝になり、(ルパン三世を捕らえる、それが俺の長い刑事人生における俺の使命だった。だがなぜだ? 現状に焦りを感じる俺がいる。ならば、俺にとって、ルパンを捕まえることは何を意味していたというんだ? 俺は、なんの為にルパンを追い続けてきたというのだ?)髭を剃りながら、銭形が自問しているとレベッカに張り付いていた捜査員から連絡が入った。レベッカはレモンを持って雑誌? の取材に応じる等、また何事も無くメディア活動を再開していた。ロブソンを含め、怪しい動きは無い。
「うわぁあああッ!!」苛立ちが頂点にきた銭形は手近な岩を持ち上げて投げ付け、ひび割れさせていた。当のレベッカは移動中「いいのかな? こんなことしてて?」ロブソンに心中を漏らしていた。「彼の脱獄に手を貸すことはもっとも罪深きこと」応えるロブソン。「例えルパンが死んでも?」「そう申しておりました。あの方々が」次元達は待っていた。「遅い」カジノで暇を潰し、呟く次元。滝行する五ェ門。「いつまで待たせるのよ」レストランのテーブルの
     4に続く

ルパン三世 4

2015-12-25 20:35:26 | 日記
向かいの空いた席にワインの注がれたグラスを置いている不二子。レベッカもまた、脱出の際、借りる形になったネクタイを取り出し、ルパンを思っていた。
さらに時が経ち、銭形がテントの前でナポリタンを作るがやるせなくなり投げ出していると「とっつぁん」牢獄からルパンに呼ばれた。「どうした?!」「案外、人間って死なねーもんだな。でも、ようやくお迎えがきたようだ。最後に俺の願い、聞いてくれねぇか?」ルパンは煙草と髭の始末をする為の剃刀を求めた。銭形は煙草を一本、差し出し、ルパンがくわえると火を点けてやった。自分も煙草を吸い出す銭形。牢獄の扉越しに、二人は話した。「お前を捕まえる、それが俺の全てだと思っていた。しかしこうしてお前の最後を目の当たりにして、ようやくわかったことがある。俺が恐れていたのはルパン三世の最後ではない。刑事、銭形の最後だ」「続けりゃいいじゃねぇの?」「お前程張り合いのあるワルがいればの話だがな」「現れるさ、いつかきっと」「解せん、お前程の男がたった一人の女の為に最後を迎えるなど」逮捕し、連行する際、『愛』を盗んだというルパンは車窓から見える景色を見たルパンは手錠の両手の指を構えて額縁を作り「絵みたいだなぁ」と言っていた。
「己の美学を貫き通す、それが男ってもんだろう? 楽しかったぜ、とっつぁん」煙草を床で揉み消すルパン。銭形も雪で煙草の火を消した。「剃刀は渡せない。凶器になるからなぁ」「とっつぁんはとっつぁんの美学を貫き通せばいい」ルパンは牢獄の奥へと歩いてゆき、そこで倒れた。銭形は必死で堪えた。程無く雪が解け出すと、改めて銭形は牢獄に向かった。覗き窓から中を見る銭形。奥にルパンが倒れている姿が見えた。銭形は衝撃を受け、膝をついたまま泣いた。
掌認証を行い「安心しろ、ルパン三世の名に
     5に続く