羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

探偵の探偵 1

2015-09-11 21:37:55 | 日記
「痛ぇ、くそぉ、罠に掛けやがったなぁ」「コンビニ袋で近所の買い物帰りを装うやり口、依田総合探偵社でしょう? 名前は?」「痛ぇ、つってんだろ? スタンガンされた者におもてなしの気持ちはねぇのかよ?!」玲奈がさらにスタンガンを喰らわそうとすると、減らず口を叩いていた探偵は慌てて名刺を出した。男の名は鴨居。「正規の探偵社がなぜあたしをマークしてる?」「はぁ? お前狙ってんのは俺だけじゃねーよ、表見てみろよ」鴨居は金にもならずいい迷惑だが犯罪の証拠を見付けて警察に付き出すと息巻くが、玲奈がさっさと外へ出ようとすると「おい、待て待て待て! こっちは怪我してんだよ?!」と呼び止め、玲奈は引き出しから事務用糊を取り出し投げ渡した。軟膏代わりになるらしい。
外へ出た玲奈はポストから偽の不在通知票から嶋エージェンシー、不要な郵便物に仕込んだ万引き防止タグから竹内調査事務所と割り出し、探偵社に直接電話を入れて張り付いてる探偵に姿を表すよう電話を入れた。前回澤柳菜々を追っていた竹内調査事務所の探偵はすぐに顔を出した。「さすがだな、本家対探偵課の紗崎玲奈」程無く、「どうも」嶋エージェンシーの探偵も顔を出した。竹内調査事務所の探偵は児玉。嶋エージェンシーの探偵は黒川といった。黒川に関しては半年前に玲奈が着手金の横領を暴いた経緯があったが、シレッと顔を出してきていた。鴨居も糊片手に現れ、一同は須磨の提案で昨日付けで各社に対探偵課が発足させられ、持ち回りで玲奈の見張りをすることになったことを話したが、当の玲奈が何も知らないことを呆れていた。「でも、妙だな」児玉は玲奈が罠として借りたマンションについて指摘してきた。死神のことは他の探偵は知らない。「消えて、あなた達を待ってたんじゃないの」玲奈はマンションに戻っていった。児玉達は益々呆れたが、
     2に続く

探偵の探偵 2

2015-09-11 21:37:46 | 日記
荒い息で物陰から様子を伺う者が一人いた。
「峰森さん? 一緒に居て下さい」彩音の元へ向かおうとする琴葉に戸惑う凜。「外からは誰も入って来ません。鍵はここに置いてあります」台所の引き出しに鍵をしまう琴葉。「嫌です、一人にしないで下さい」「ごめんなさい、どうしても行かなきゃいけないんで」「嫌です! 行かないで」琴葉の腕を掴む凜。「ごめんなさい」琴葉は凜の腕を解き、隠れ家を出て行った。
須磨が公安に命じられた通り、事務所を15日間閉じるよう指示していると、病院から連絡が入った。「もしもし、須磨ですが」須磨は慎重に電話に出た。かつて、玲奈の母が入院していた病院だった。
死神の襲撃を待つ玲奈は須磨の忠告を思い出し、スマホを手に取ったが、その時窓を突き破り、ガスマスクを付け噴霧機を背負った沼園が侵入してきた! なぜかスタンガンを床に転がしたままだった玲奈! 噴霧機で何かの薬剤を振り掛けられる!「んあッ!」苦しみ、咳き込む玲奈!「凜はどこにいる? どこに隠したぁッ!!」マスクを外し、迫る沼園は玲奈に睨まれると、「しぶとい女だぁッ!!」激昂し、マスクを下ろし、さらに薬剤を振り掛け出した! あくまで口を割らない玲奈! 沼園はさらに薬剤を振り掛けようとしたが駆け付けた桐島に殴り付けられ、蹴り飛ばされた!「ああっ!」追い込まれた沼園はナイフを取り出したが、殴られ、腕を取られナイフを取り落とし後ろから首を締められわりとすぐにコテッと落とされた。
「大丈夫か?」「どうしてここに?」佐伯を傷付けた沼園を桐島はずっと追っていた。沼園スマホのデータは消されていた。そこへ児玉と黒川が現れた。「何があった?」戸惑う児玉達。「紗崎を監視しておいて、今頃お出ましですか?」「やり過ぎだ」「その内目覚めますよ」桐島と児玉が話していると
     3に続く

探偵の探偵 3

2015-09-11 21:37:38 | 日記
竹内まで現れた。「美人が台無しじゃないか?」「社長、何でここに?」驚く児玉。「現場見学だよ」「随分暇なのね」しばらくグッタリしていたが、案外あっさり薬剤散布から回復した玲奈。お酢でも散布されたのか?「警察に付き出すのは事情を知った後だ。なぜ勝手に暴れてんのか? 把握できなきゃ、こっちが無能だと思われる」手早く判断する竹内。「おーい、こんなもん出てきたぞ?」遅れていた鴨居が沼園の車から即席らしい簡易な『調査報告書』を持ってきた凜が玲奈達の車に乗っていたことや玲奈が借りたウィークリーマンションについて記載されている。日付は昨日。「探偵業届け出番号の記載がありませんねぇ」報告書を見る黒川は送り主の名を認めた。「澤柳菜々?」「見せて!」報告書を手にする玲奈。「澤柳って」「何か知ってるの?」呟く児玉に玲奈は聞いた。「説明するのはそっちが先だ? 澤柳っていう女とは、どういう関係なんだ?」竹内が遮って問い返した。
琴葉は彩音を踏み切りの周囲で探していた。遮断機の下りた踏み切りの向こうに彩音がいた!「お姉ちゃんっ、お姉ちゃん!」茫然としていた彩音は、電車が過ぎると姿を消していた。轢かれた様子も無い。探し回り、踏み切り近くの陸橋下を駆ける琴葉。「琴葉」呼び止められると、脇の階段の辺りから彩音が出てきた。「よかった」「何がよかったの? ようやく邪魔な姉が死んでくれるって思ったから?」「何言ってんの? 帰ろ」琴葉が手を取ると、その手を振り払い、代わりに腕を拡げる彩音。琴葉は困惑した。「胸に飛び込んで来てよ? 抱き付いてよ! 胸に顔を埋めてめそめそ泣いてよッ! 小さい頃、よくしてたみたいに」「何でそんなこと」「琴葉には私が必要なの、アンタ一人じゃダメなんだから。玲奈に何か騙されちゃダメ! 全部知ってんだからね! 玲奈が琴葉が何喋ったか全部! 全部全部全部全部」
     4に続く

探偵の探偵 4

2015-09-11 21:37:28 | 日記
迫る彩音に後ずさる琴葉。「菜々が全部教えてくれたから」笑顔の彩音。「菜々って?」ここで背後から琴葉より小柄で細見の者に随分軽く羽交い締めにされる琴葉! 緩そうだが、合気道の技にでも掛かったように動けなくなる琴葉!「しっかり押さえてて菜々」彩音に催眠ガスのマスクを当てられた琴葉は意識を失っていった。
「死神か、なるほどな」玲奈は竹内達に全て聞かせた。「死神は今まで調査報告書に名前を載せたことは無かった。これは私に見られることを前提として書かれた物」「気に食わねぇっ、ソイツを送り込んだのもお前を挑発する為だろう?」まだのびてる沼園を指す鴨居。工業高校中退の沼園に毒ガス擬きは作れないとみられ、これも死神の指示と思われた。「今度はそっちの番」玲奈は澤柳について話すよう竹内を促した。「いいだろう、じゃあウチの会社に来い」竹内が答えると、「そういえばウチにも」と黒川が嶋エージェンシーでも澤柳菜々絡みらしい依頼を受けたことがあると言い出した。「各社、情報を持ち寄ろうじゃないか」竹内の提案に黒川と鴨居も自社に戻って確認しに行こうとすると「感謝してる」と、不意に玲奈が述べ、鴨居達を戸惑わせた。「勘違いするなよ、お前が美人だからって」「行きますよ、ほら」黒川と共に鴨居は部屋を出ていった。玲奈達も、この場の始末を桐島に任せ竹内調査事務所に向かった。
咲良の事件が起きた頃、澤柳菜々は精神病棟で玲奈の母と接触し、その後、姿を眩ましていたことを須磨は突き止め、何処かへ向かっていた。
「これが、澤柳菜々」竹内の会社で、児玉が撮った写真を見る玲奈。既に黒川も合流していた。入手経緯を簡単に説明する児玉。「でもこれって」「男だ。だが、本人である可能性は高いと思ってる」黒川の事務所も澤柳菜々の調査に失敗していた。遅れて鴨居がくると、資料を出した。
     5に続く

探偵の探偵 5

2015-09-11 21:37:18 | 日記
資料を出した。澤柳は最後の夫と死別後、合法的に名前を変えていた。「今の名前は、澤柳邦夫。性別は男」鴨居の事務所は家裁にツテがあり、仕入れた情報だった。「逃げ回る為に性別まで変えたんですか?」驚く黒川。鴨居は澤柳『邦夫』の住所までは突き止められなかったが、電話番号は掴んでいた。「それだけわかれば、住所割り出すのはワケないだろ?」竹内の言葉通り、玲奈はピザの注文を装い、電話番号だけでピザ屋に登録された澤柳邦夫の住所を割り出した!「事情が事情だ。君を一人では行かせないぞ?」須磨より、直接的に世話を焼くタイプらしい竹内は同行を決め、その場の全員で澤柳邦夫の自宅に向かうことになった。
須磨が玲奈の父と落ち合っていた。母の入院時のことについて質問する須磨に、父は不快感を示した。「何なんですか? 今さら、人の家庭のこと勝手に調べあげて、探偵っていうのはほんっとに常識知らずですね! もう終わったこと何ですから」「終わった?」「そうです終わったんですよ! 失礼する」席を立とうとする父。「あの事件は終わって何かいない。少なくとも、玲奈さんの中ではまだ」須磨は父に話し出した。
「初めて彼女に会った時、何て落ち着き払った。感情の無い人だろうと思いました。だけど、その瞳の奥には深い悲しみを感じた。彼女の時は止まったままだ。彼女は不幸な境遇から、自らの命を懸けて、立ち向かうことを選んだんです。彼女は前へ歩き続けている。なぜ彼女の話をしたかわかりますか?」「いや」座り、聞き入っていた父。「まだ若い彼女が、たった一人で孤独を背負って生きるのは余りに過酷だ。ならば、一人くらい庇ってやる大人がいてもいい。私は、そう思ったんです」父は笑い出した。「何なんですか? 私が玲奈を見捨てたとでも言うんですか? 私だってねぇ、咲良を失った時、心底悲しんだ。悔しかったんだよ!
     6に続く