羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

俺物語!! 5

2015-09-24 20:36:30 | 日記
「大丈夫だよ、大和さんはお前が好きだよ」「ありがとうな」砂川はまた笑った。「俺もお前が悩んでたら、笑ってやるからな!」「笑わないよ、お前は」二人は暫く海辺にいた。
会場では、一之瀬が道具一式店に忘れていた!「無理だ、おしまいだ!!」膝をつく一之瀬! 店長に店を放って持ってきてくれとは言い出せない意外と気を使う一之瀬!「諦めないで下さいっ! 頑張ってきたじゃないですか?!」一之瀬の肩を揺さぶる大和!(オレのミューズ、強くね?)「ウチ、こういう時、何とかしてくれそうな人、知ってますっ!」「え?」悪い予感がした一之瀬。「もしもし? 猛男君?!」大和はバスで帰る途中だった猛男に事情を伝えた。「必ず届ける! 心配すんな!! 砂っ、行ってくるっ!」「会場の場所メールするから」「おう!!」猛男はバスを降り、走り出した!
一之瀬は困惑していた。「彼、来ないと思うよ」「大丈夫です! きっと何とかしてくれます!!」大和は確信していた。猛男は爆走して店にたどり着くと、道具の入ったケースを店長から受け取り、店長がタクシーの手配をする前に店から物凄い勢いで飛び出して行った! 程無く、「ウオオオォォッ!!」雄叫びを上げて、会場スタッフを動揺させながらケースを担いだ猛男が会場に飛び込んできた! 一之瀬にはその姿が飛脚に見えた!!「頑張って下さいッス」「あ、ありがとう」ケースを受け取った一之瀬。そのまま作業場に行こうとしたが一之瀬は振り返った。「君も居てくれないか? 金賞取ってみせるから」「うッス」コンクールの調理作業は始まった!
作業に集中する一之瀬。(なぜだか、頑張ってくれと思われてる気がする。バカじゃねぇの? 金賞取って、凛子に告白するって言ったのに)チラリと、客席の猛男を見る一之瀬。砂川もシレッと客席にいた。猛男の顔は完全に自分を応援していた。
     6に続く

俺物語!! 1

2015-09-24 20:35:09 | 日記
「うわあああぁぁッ!!」全身泥まみれ猛男に暗い廊下で遭遇した砂川は悲鳴を上げた。「生まれて初めて驚いて大声出した」ロクに反応しない猛男。「大丈夫?」「大丈夫だ」大丈夫じゃなさそうな猛男だったが、家に戻り、大和から電話が掛かってくると少し元気になった。「今日ね、街で見掛けた気がするんだけど?」「いや、気のせいだろう」行ったことを隠してしまう猛男。それからバイトの休みに久し振りに遊ぼうと誘われ、猛男は喜んで受けた。
翌日、大和が店で作業していると一之瀬が声を掛けてきた。「凛子! コンクール用のケーキのことなんだけど」休みを利用して試作するからと、手伝いを頼まれる大和。「えと、明日は」「頼む! 俺のパティシエ人生が懸かっているんだ!!」一之瀬は結構な勢いで頼んできた。結局引き受けた大和は猛男に訳を話し、遊びの約束は取り消しとなった。「それは応援しねぇとな。大和もコンクールまで頑張れよ!」応援してしまう猛男を傍で見ていた砂川は、拾った大好きな犬を飼い主に良かった、と寂しそうに返してしまった子供の頃と変わらない姿を思い浮かべていた。
「ここに大和さんいないの、不思議な感じするよなぁ」大和と遊ぶはずだった日、猛男は砂川、アフロ、短髪、モブ男子の一人と、モブといつの間にか付き合っていた? お下げ娘でボーリングにゆき、その帰り道にふとアフロが言ってきていた。「大和は、俺でいいんだろうか? もっと合う相手がいるのに、大和は知らないだけなんじゃねぇのか?」猛男は思わず悩みを打ち明けた。「いいに決まってんじゃん?! 凛子が知らないだけとか、凛子バカじゃないんだからさぁ!」強めだが、フォローしてるつもりらしい短髪。「俺は、誰にも渡したくねぇ!」答えに呆気に取られる短髪達。「結局ノロケかよっ!」モブ男子にも突っ込まれる猛男。砂川も微笑んでいた。
     2に続く

俺物語!! 2

2015-09-24 20:34:57 | 日記
猛男はその場から走り出した。(俺は、煎餅みたいなクッキーしか作れねぇ、楽しませる話もできねぇ、車もねぇし、まだ名前で呼ぶこともできねぇのに、すげぇ勝手だが、大和が自分で考えてこれから先、他の誰かを選ぶのかも知れねぇ、だけど今は! 俺の隣で笑ってくれている今は)店の前まで来た猛男。ちょうど勝手口の前に一之瀬がいた。「大和は渡さねぇ」「それをわざわざ言いに来たのか?」「そうだ」「俺が引き下がるとでも?」「思わねぇ、だが渡さねぇ!」対峙する一之瀬と猛男。「俺への戦線布告と受け取っておく!!」ハイテンションの一之瀬! 猛男も闘志も燃やした。
「戦線布告って、受けてたつ方だろ? お前」砂川家で報告すると呆れる砂川。「まあ、いいだろう! 大和が好きだという立場は同じだ。そこに強いも弱いもねぇっ!」腕を組む猛男。「あんたはもっと強く出ていいんだよぉ?!」まだ東京にいた愛がなぜか持っていた牛乳を猛男のコップに注いだ。「二人きりにして大丈夫なの?」(それは)そういえば心配な猛男。
当の一之瀬は大和は大和として、ケーキ作りの方に悩んでいた。「これだ! という手応えが無い。出会った、ていう感じが」「頑張りましょう! 出会ったって気持ちわかります!」(凛子も感じた?)と、店の外に気配を感じた一之瀬、凛子にメレンゲを搾るよう指示して『対応』に向かった。「何してる?」「でぉおおぅ?!」背後から一之瀬に声を掛けられ、店の前に潜んでいた猛男は驚いた。砂川も付き合いでひっそり来ている。「俺と凛子の邪魔しに来たのか?!」「違う! 大和に無理に手を出すかもしれねぇから」「バカにしないでもらおう! 両思いになる前に無理矢理襲ったりする訳ないだろう?! 俺は今、集中したいんだ!!」「日本おやつコンクールだったか?」「セ・ヌーヴォパティシエコンクールだっ!」
     3に続く

俺物語!! 3

2015-09-24 20:34:46 | 日記
「手ぇ出したりしねぇな?」「当然だ、手順は踏む。俺はこのコンクールで金賞を取る。取って凛子に告白する! 凛子が来てから、俺は全てが上手くゆき出した。俺の世界が変わり始めた。お前にはわからないかもしれないが、凛子はミューズだ」「コンクール、頑張って下さいッス」猛男は去って行った。一之瀬の処理の仕方がわからない風で、黙っていた砂川も続いた。
「何、応援しちゃってんの?」「あの人が本当に金賞取れたらいいと思うがよ。俺も頑張らねぇとな!」その帰りに猛男は砂川と話していた。「何を? 金メダルとか?」「名前で呼ぶとかよぉ」照れる猛男。砂川は笑ってしまった。「何で笑うっ!」「いや、頑張って」「ところで、ミューズって何だ?」その場では、雰囲気で流していた猛男だった。
店に戻った一之瀬は、大和に打ち明けていた。「俺は凛子に会うまで、ずっと一人で、理解されないことに傷付き、一度売れなかったことに拘って頑なになっていた。素敵なケーキを見て、自分も作ってみたいと思ったこと、自分のケーキを買って貰って嬉しかったこと、そういう気持ちを思い出させてくれたのは、凛子だ! 俺のミューズ」まだ金賞取ってないが勢いでほぼ告白する一之瀬!「え? え?」照れる大和。行けそうな流れだが、猛男との約束があり、それ以上は押せず軽く舌打ちする一之瀬。
「猛男君は、あ、ウチの彼氏なんですけど、クッキーとかも凄い豪快なんですよ。猛男君らしくて、インパクトあったぁ」いまいち会話が噛み合わない二人だったが、一之瀬はただのナンパ者ではなかった!「あっ」一瞬、猛男の作ったらしいゲテモノを想像して呆れたが、この時アイディアが飛躍した!!「それだ凛子っ! 個性! なおかつリピートしたくなる味! 忘れられないインパクト!! 思い付いたぁっ!
     4に続く

俺物語!! 4

2015-09-24 20:34:33 | 日記
出来そうだ!」テンションMAXの一之瀬!「おっと、もう遅いな。凛子、先に帰ってくれ。俺は今からこの閃きを形にする」「お先に失礼します」「凛子、コンクールが終わったら言いたいことがある」戸惑う凛子。「はい、頑張って下さい!」凛子は帰って行き、リアクションから一之瀬は脈有りと見ていた。
翌日、一之瀬の出展用の菓子は完成した。コンクール時はサポート不可だが、一之瀬は会場に来てくれるよう頼み、凛子はこれを快く引き受けた。そして後日、コンクール当日。猛男の家では「わぁおおおぅっ、真希凄いなぁ」父が元気に動き回る真希をあやしていた。猛男がベランダで腹を括っていると、コンクールに向かう前の大和が訪ねてきた。
「どうした?」「一之瀬さん、終わったら言いたいことがあるって。もしかして正社員にならないかとか、そういうお誘いかな?!」(俺も鈍いが、大和も大概だな)「何かウチのこと凄い力持ってる人みたいに言ってくれて」「ミューズだな」砂川からレクチャー済み。「そう! 何で知ってるのぉ?」「いや、勘だ」「ウチ、ミューズじゃないよ」謙遜する大和。「プレッシャーなのか?」「そう、どうしよう?」微笑む猛男。「大和が居てくれると、気合いが入るとか、そういうことなんじゃねぇか?」「なるほど、そっかぁ、何か楽になった。猛男君と話すと、安心しちゃう。じゃあ、行ってくるねっ」大和は駆け出そうとした。その時、(好きだ。誰にも渡したくねぇ)猛男は後ろから大和を抱き抱えた。「猛男君?」猛男はすぐに体を離した。「頑張れっ、優勝だ!」「金賞だよ、猛男君」大和は笑って駆けて行った。
猛男は砂川と海へ向かった。海藻を食べ、鼻を蟹に挟まれる猛男。ボンヤリしている猛男に砂川は大笑いした。「何だ? どうした?」「お前が普通の男みたいでおかしい」「ずっと『普通』だろうが?」
     5に続く