羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

恋仲 1

2015-09-02 22:10:32 | 日記
「7時に来るって、朝の7時と思わなかったよ」朝、あかりマンションに行くと、葵は誤解していた。上手く説明できないまま、そのままあかりは帰ってしまった。その頃、「転院ですか?」心音の転院先の北海道の病院の資料を上司に渡され、翔太は困惑していた。等の心音は同級生の男子と花火大会へゆくことを楽しみにしていた。
「何これ?」朝帰りの件の後で出社した葵が提出した頼んでいた模型に富永は青ざめた、変更前のデザインだった。平面図も直ってなかった。今日のプレゼンにはもう間に合わなかった。クライアントの方のスケジュールをずらして貰うしかなかった。一先ずそれで済み、葵は安堵したが「何安心してんだよ? 個人事務所は信用失ったら終わり何だよ! わかってんのか!! このプロジェクト抜けろっ」磯原に宣告された。「すいません」何も言えず、引き下がる葵。その様子を見ていた丹羽は葵を呼び出し、転職雑誌を差し出した。「このまま続けたって、君、建築家何てなれないわ」葵は茫然としていた。
あかりは翔太から、転院する心音の相談に乗ってくれるよう頼まれ、自分以外にはドライだった翔太の変化に驚きつつ引き受けた。その後、マンション前で葵の帰りを待つことにした。夜、葵は疲れきった顔で帰ってきた。「ちゃんと話したくて、本当にごめん!」近くの川辺に場所を移して話すあかりだったが、かなり言葉足らず! 不穏な空気になり、焦るあかりは葵の鞄から転職雑誌がハミ出ているのに気付いた。「転職するの? 辞めないよね?」「あかりには関係無いだろ?」葵は転職雑誌を取り返し、マンションに入っていってしまった。
マンションに戻った葵はあかりが高校の時に描いた『理想の家』の間取り図を手に取る葵。兎小屋を誉めてくれたあかり。葵は間取り図を丸めて床に捨ててしまった。翌日、仕事が休みになったと
     2に続く

恋仲 2

2015-09-02 22:10:22 | 日記
公平と七海を誘った葵は、公平のリクエストで初めて近所のスカイツリーへ向かった。一方、翔太が外出許可を取り、あかりは心音の浴衣を買いに出掛けていた。「どれにする? どれにする?」テンションの高いあかり、「浴衣何て着なくていいって」戸惑う心音。「どうせ、バカにされるに決まってるもん浴衣姿」「わかる! いるよね、そういうヤツって! 蹴っ飛ばしてやればいいんだよ、そんなのっ」アクション付きで言って笑い合うあかりと心音。スカイツリーでは葵達が「イエーイっ」などと騒いでいたが、葵の余りの騒ぎように七海は公平にこっそり「何か、お兄ちゃんのテンションおかしくない?」と不安を伝えたが、「何かあったんだろう」公平はわかってて付き合ってるようだった。だがあかり関連に関しては少なからず自分に原因があるとは気付かない公平!
「うまーいっ、ふわふわ!」心音とパンケーキを食べるあかり。「ふわふわしてんのアンタだから、今日何かテンション変」心音は見透かしていた。しばらくパンケーキを食べ進め、不意に病室に来る男子に告白を勧めるあかり。動揺する心音に、「明日も、明後日も、好きな人の傍に居られるとは限らないんだよ。今、素直にならないと、この先ずっと後悔することになるかもしれないよ」あかりは心音にそう伝えた。葵の方はもんじゃを食べながら「朝だよ? 朝! 謝られても惨めなだけだ」翔太と自分を比べ、勘違いしたままグダグダいじける葵。「あかりちゃんのことでヤサグレてたんだ」やや困りつつ、呆れる七海。「それだけじゃねぇんだ。自分のキャパっつうか、それにさぁ! 俺が作らなくても、世の中には建築家、たくさん居るしさ」「わかる! よし、朝まで呑もうっ」既に酒が回ってる公平。「おう!」すっかり葵の愚痴酒になったが付き合わされる七海だった。
     3に続く

恋仲 3

2015-09-02 22:10:14 | 日記
病院に戻った心音が、母から北海道への早期の転院を知らされショックを受ける中、酔って公平と騒ぎ、七海に近所迷惑と怒られながら帰宅した葵はマンション前で待ち構えいた富永と遭遇していた。「やっぱり仮病だった」厳しい表情の富永。「三浦君のせいであたしの仕事が増えて大変何だけど?」富永は仕事の資料を葵に渡した。「でも俺、降りろって言われましたし、富永さんみたいに才能無いですから」ため息つく富永。「あっそ、もう頼まない」富永は帰ってしまった。病院ではあかりが心音の様子を見に行っていた。「私、何か悪いことした? お祭り行きたいだけなのに。花火、見たいだけなのに」心音は泣いていた。
次の日、葵は段ボールに荷物を纏め始めていた。仕事関連から何から何まで、床に落ちていた丸められたあかりの『理想の家』の間取り図も段ボールに放り込んだ。そこへ、当のあかりが訪ねてきた。「お願いがあるの、サザエさん家の間取り図描いて」「はぁ?」戸惑う葵だったが、書き出すと集中する葵。その様子をあかりはずっと見ていた。「はい、できたよ」「こうなってたんだ!」出来映えに感心するあかり。「凄いね、葵。やっぱり建築家何だね!」「お願いって、そのこと?」「これ、描いてほしい」あかりはチラシの裏に描いた『設計図』を差し出した。「難しいんだね、全然形にできなかった」「実は俺」「好きだよあたし」言わせないあかり。「葵が作る物、このテーブルも、ラックも、兎小屋も、何かホッとする。これからそう感じる人、きっとたくさんいるよ。それって凄い才能だよ。だから描いてほしい、葵にお願いしたいの。ごめんね、でも考えてほしい」あかりは部屋を出て行った。「あかり!」マンションの前を歩くあかりを、葵はベランダから呼び止めた。「食ってく? 三浦家特性カレー」「うん!」葵は冷凍していた? カレーを出し、
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恋仲 4

2015-09-02 22:10:06 | 日記
あかりは懐かしいと言って喜んで食べ、ようやくまともに事情を説明し、誤解は解けた。
さらに翌日、「すいませんでした!」事務所で磯原に頭を下げる葵。「お前がいると迷惑」「本当にすいませんでした!! もう一度、やらせて下さいお願いします!」引かずに押す葵。「もう余計な仕事増やすなよ」やる気があれば、面倒を見る磯原だった。「ありがとうございます! 富永さん、迷惑掛けて、すいませんでした」葵は遅れに遅れた、平面図を差し出した。「遅い」受け取る富永。さらに葵は丹羽にある『設計図』を見せた。勢いずいた葵は病院の翔太の元にもゆき、あかりのプランを話した。翔太は同意し、上司に掛け合った。葵も出入りの土建の棟梁に怒鳴られながら頼み、荷造り用の段ボールも別の目的の為にバラされた。病院では翔太も段ボール細工に取り組み、沢田に「何か変わったね。蒼井君」と微笑んで言われていた。冴木も近付き過ぎないよう気を付けながら、葵に資料とコーヒーを持ってきてくれた。
そして、転院近いその日、準備が整った。「心音ちゃん、ちょっといい」あかりは心音を病室から連れ出した。点滴スタンドを引いて、戸惑いながらついてくる心音。病院の一角が縁日のようなスペースになっていた! 翔太、葵、手伝っていた公平、七海が微笑んで見守る。「芹沢先生が考えてくれて、知り合いの建築家が造ってくれんだよ」「芹沢先生が考えてくれたって言っても、こんな落書き渡されただけだけど」件の簡単なあかりの設計図を心音に見せる葵。「バカ! 見せなくていいのっ!」葵に尻に蹴りを入れるあかり。心音は察していた。「心音ちゃん」沢田は心音の甚平姿の同級生の男子を連れてきた。「よっ」男子が声を掛けると、心音はスッとその場から去り、あかりが後を追った。
翔太と葵がマズったか? と少し困っていると、間を置いて、
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恋仲 5

2015-09-02 22:09:56 | 日記
浴衣に着替えた心音が、あかりと現れた。「行ってらっしゃい」あかりに促され、甚平男子に点滴スタンドを引いて近付く浴衣の心音。「全然似合ってねぇな」男子の言い様にあかり達は笑ってしまった。「うるさい」心音はあかりを真似て軽く男子を蹴った。「いってぇなぁ。じゃあ、行こっか?」心音は頷き、二人は他の患者達等が既がいる縁日スペースへ入って行った。様々な模擬屋台を楽しむ心音達。葵、あかり、翔太も後から入り、高校時代の様にほんの一時、三人で恋から離れて楽しんでいた。尚、公平は豆腐掬いなる屋台を出し、七海も付き合わされていた。
「今度は何?」仕上げに、あかり達は心音達を照明を消した一室に案内した。スイッチを入れると、部屋の四方のビル等の段ボール細工に明かりが灯り、壁3面のプロジェクターに効果音と共に花火の映像が映し出された。「すっごい綺麗」「すげぇ」心音達は感激した。あかり達が部屋から出てゆくと、心音達は手を握り合った。
葵は会場に来ていた丹羽と屋上で話をした。丹羽は今回の急な会場造りに皆文句を言っていたと言ったが、「でもそれでいいのよ、君に足りなかったのはそれ何だから」とも伝え、花屋敷のチケットを2枚くれた。病室に戻った心音は、翔太とあかりに「ちゃんと気持ち伝えた。そしたら、来年の花火大会で一緒に行こうって。だから、向こうで頑張って病気治す。今日言えてなかったら、後悔してたと思う。ありがとう、先生達のおかげ」あかりと翔太は笑い合って喜んだ。二人が病室を出てゆこうとすると、「芹沢、あんたも後悔するなよ」心音が声を掛け、「え?」「パンケーキ」心音の言う意味を、あかりは了解して頷いた。
あかりは会場で葵を探し始めた。「葵見なかった?」公平達に聞いたがわからない。続けて探したが衝立を片付ける係員とすれ違った。
     6に続く