羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

花咲舞が黙ってない 1

2015-09-17 22:42:15 | 日記
数日臨店の仕事の無い暇な花咲と相馬は、芹澤頭取の妻が開いた絵画展で給仕をするハメになった。「臨店の仕事じゃないだろこれは?」ボヤく相馬。「バンカーの妻の世界何て初めてだから新鮮です」珍しがる花咲。「及び頂き光栄ですわ」「感動しましたっ!」「購入させて頂こうかしら?」「私もっ」「私もっ!」芹澤の妻に媚びへつらう役員の妻らしき人々。「あっちの世界も大変そうだな」「はい」相馬はうんざりし、花咲は圧倒されていた。程無く芹澤頭取本人が来場する中、「すいません、ワインを頂けますか?」一人のやや控え目な役員の妻らしき女性が花咲に頼んできた。慌てて、グラスをひっくり返して相馬が「何やってるんだ花咲!」とフォローしていると「花咲さんって、もしかして臨店班の?」と女性が興味を示してきた。
「はい」「あなたが」微笑む女性。女性は真藤の妻だった。「一度だけ、威勢のいい女子行員に一喝されたって話をしたことがあって、それが花咲さんだったんです」「そんな、一喝だなんて」照れる花咲。「誉められてねぇ、つーのっ」小声で突っ込む相馬。と、「まぁ、真藤さん!」芹澤の妻が真藤の妻に親しげに話し掛けてきた。真藤は芹澤に目を掛けられており、妻同士も親しくしている様子だった。
後日、東京第一銀行の大口取引先、蔵中建設の倒産に伴い数十億円の裏金があるらしいことが判明し、更にその内の1億円が賄賂として東京第一銀行に流れたと密告があった! 堂島の指示と辛島の監督の下、臨店班は密かに密告者と会う手筈となった。
花咲が東京第一銀行のキャンペーンキャラ『第一君』の団扇を目印に持ち、露骨過ぎることを相馬に突っ込まれながら喫茶店で待っていると「東京第一銀行の方ですか?」蔵中建設の元総務部長、西崎が現れた。蔵中建設は5年前、
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花咲舞が黙ってない 2

2015-09-17 22:42:07 | 日記
不動産投資に失敗し経営が行き詰まり東京第一銀行に無理な追加融資を頼み、通すことと引き換えに賄賂は支払われていた。西崎は裏帳簿のコピーを相馬に渡した。覗く花咲。帳簿には、真藤毅の名がある! 驚く相馬と花咲。「確かに5年前、本部の融資部長を務めていた」「でも相馬さん、これじゃあまだ証拠にはならないですよね?」振込み先が白水銀行である為、内部調査はできない。「そうだ! 振込依頼書の控えは残っていませんか?」相馬は思い付き、一同は西崎の案内で蔵中建設元社長の隠し倉庫に調査に向かうことになった。
隠し倉庫には、振込依頼書の控えはあった。振込み先は真藤毅! ため息をつく花咲。「誰か来ますッ! 急いで下さい!」西崎に急かされ、控えを回収した花咲達は慌てて隠し倉庫から退散した。社長の手の者達が倉庫の品々を処分しに来ていた。「地位も名誉も手に入れて、ゆくゆくは頭取になるかもって人がそんなお金で動くなんて、何かおかしくないですか?」帰り道、花咲はどうにも腑に落ちなかった。「だが、1億貰ったのは事実だ」相馬は冷静で、明日、堂島に報告することは動かなかった。
翌朝、花咲が珍しく自分より出社が遅いことに相馬は軽く驚いたが、よく見ると花咲の鞄はあった。「あの、バカっ」相馬は察して臨店オフィスを駆け出して行った。花咲は単身で、真藤の執務室に乗り込んでいた!「ここは、一行員の君が来るような場所ではないが?」「一行員として、確認させて頂きたいことがあって参りました」花咲は振込依頼書の控えを真藤に示した!「これ、真藤常務の口座ですよね? お金、受け取られたんですよね?」振込依頼書の控えを見詰める真藤。「そんな物を見せられて、何を否定しろというんだ」「どうしてこんなことを? 不祥事を揉み消す時、よくおっしゃってましたよね? それが銀行の為だ、
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花咲舞が黙ってない 3

2015-09-17 22:41:56 | 日記
って。そのやり方は理解できないものばかりでした。ですが、銀行の為だという信念を曲げずにいらっしゃるということだけは、理解していたつもりです。賄賂を受け取るという行為は、銀行の為じゃない! そんなの真藤常務らしくありませんっ!」「花咲君! もういい、黙りたまへ!!」「黙りませんっ! どうしても信じられないんです! どうしてこんなことなさったんですか?!」真藤が花咲を鋭く見ていると、「失礼します」ノックをして相馬が現れ、「大変失礼しました」頭を下げで、強引に花咲を連れて退室して行った。
その後、堂島と辛島に報告すると「それなりの責任を取って貰う」堂島は厳しい表情だった。間を置かず、蔵中建設に東京地検の捜査が入り、事態が明るみになるのも時間の問題となり、芹澤は真藤に迫っていた。「こうなってしまったら仕方無い。分かってますね?」「承知しております」芹澤は、頭を下げる真藤の元から去って行った。
臨店オフィスで相馬達が悶々としていると、オフィスの出入り口の辺りで落ち着き無くしている者がいた。児玉だった。「何してるんだお前?」「ちょっと見せたいモノが」ドアを開けた相馬に児玉は切羽詰まった様子で言った。児玉が持ってきたのは白水銀行の入手金明細書だった。「真藤常務の口座だ」「え?」驚く相馬。児玉は蔵中建設倒産でやはり被害を受けた白水銀行に情報交換を独自に持ち掛け、手に入れていた。常務付き秘書なので実は優秀な児玉!
明細によると入金と同日、全額引き出していた。「おかしいだろう? すぐに誰かに渡したんじゃないかと思うんだ」蔵中建設への追加融資を真藤はぎりぎりまで反対しており、上から圧力を掛けられたと児玉は見ていた。「真藤常務は利用された」あくまで真藤を信じる児玉。「児玉さん、真藤常務どこにいらっしゃるんですか?」花咲は不意に児玉に聞いた。
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花咲舞が黙ってない 4

2015-09-17 22:41:46 | 日記
「待って下さい真藤常務っ」花咲は相馬と共に車に乗り込もうとする真藤の元へ駆け付けた。「だなたを庇ってらっしゃるんですか? 1億円を受け取ったのは、真藤常務じゃないですよね?」問う花咲。相馬も入出金明細書を示した。「すぐに全額、引き出してらっしゃいます。どなたかに、お渡しになったんじゃありませんか?」真藤は相馬と花咲を見詰め、「花咲君。君は以前、銀行を変えると言っていたな。だが君も、わかってきたはずだ。そんなことは無理だと。銀行には中の者にしかわからない常識や暗黙の了解がある。それが」「それが銀行だ。ですか? そんなのおかしいです。そんなの間違ってます!」「この銀行を潰す訳にはいかないんだ!」声を荒げる真藤。「真実が明らかになると銀行が潰れるということですか?」問い質す相馬。「それで潰れるなら、こんな銀行潰れてしまえばいいんです!」「ふざけたことを言うんじゃないっ!」花咲を一喝する真藤。「失礼する」真藤は車に乗り込み、去って行った。
真藤に去られてから、花咲はイライラと理解オフィスをうろつき、「お前は動物園の虎か?」と相馬に突っ込まれていたが、真藤の妻から突然電話が入った。ホテルのロビーラウンジ? に一人で向かう花咲。「すいませんお仕事中に」「どうなさったんですか?」待ち合わせた真藤の妻は、先程帰宅した真藤に銀行を辞めることになると告げられていた。「私はバンカーてして間違ったことはしていない。それだけはわかってほしい」真藤はそうも語ったという。「あの人は銀行を守ろうとしているんだと思うんです。私にはわからないんです。自分の人生犠牲にしてまで、何の意味があるのか? 花咲さん、真藤を助けて貰えませんか?」真藤の妻は花咲に真藤のここ数年使った手帳を花咲に託した。「何で私なんかに?」「花咲君は青臭くて、綺麗ごとばかり言って、
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花咲舞が黙ってない 5

2015-09-17 22:41:36 | 日記
何もわかっていない。でも、銀行を変えることができるのは、意外とああいう無鉄砲な行員なのかもしれないなぁ」かつて、真藤はそう妻に言っていた。
賄賂振込み当日、手帳には100M→R.Sとあった。本部に戻り、「どういう意味何でしょうか?」花咲が相馬と児玉に聞くと、二人はすぐに理解した。100Mは1億。R.Sは芹澤頭取のイニシャルだった。真藤は目を掛けられた芹澤に恩義があり、加えて頭取の不正が明らかになれば下手をすれば銀行が潰れる可能性もあった。「身を呈して守ろうとしてらっしゃるんだろう」児玉は言ったが、「表面上、裏金を受け取ったのは真藤常務だ」改めて裏帳簿を取り出す相馬。3人で考え込んでいると、秘書室長の荒木が臨店オフィスに入ってきた。「明後日の臨時役員会で報告しなさい」荒木は振込依頼書の控えを使っての真藤の糾弾を強く求めてきた。
その夜、他の秘書が引き上げると、児玉は相馬と花咲を秘書室に招き入れた。専用の端末で賄賂振込み日の芹澤の日程を確認する3人。しかし、芹澤は1日本部にいた。相馬が秘書が動いた可能性を指摘し、児玉が社用車の運行表を見ることを思い付いた。運転手の詰所? で運行表を手に入れた3人は早速、当日の頭取の車両動きを見た。乗っていたのは室長の荒木! 当時は頭取の担当秘書だった。荒木は振込みのあった白水銀行の辺り、続いて金取扱店、最後にスマホの地図に住所を入力してもよくわからない地点に立ち寄っていた。「行ってみるしかないな」相馬は腹を括った様子だった。
相馬は金取扱店にゆき、店が金の工芸加工を行っていることを確認した。ここで花咲から電話が入り、件の名無し住所は塗装工場であることがわかった。「花咲、わかったかもしれないぞ、1億円の行方」相馬は店の金工芸品を見ていた。
臨時役員会当日、
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