山本七平の怒りと、静かなる細き声
私は山本七平のことを、こよなく尊敬している。学生時代に、その全集山本七平ライブラリーを耽読した。「耽読」と呼べるくらいのめり込んだのは、山本七平くらいかも。
彼の、粘着質というか、ロジカルというか、真摯な文章に、一字一句、付いていった。司法試験に受かったことよりも、「山本七平ライブラリーを完読した」方が、私の自信になっているかも。
それくらい、私の中では、山本七平は、大きい。
稲垣武による、山本七平の本格評伝『怒りを抑えし者』。昔読んで感動した。
蔵書に見当たらないので、また買って、再読している。そのまえがきから。
~~~以下引用~~~
山本七平氏には、戦前・戦後を通じて変わらぬ日本社会の虚妄についての怒りがあったことは言うまでもないだろう。
特に、「空体語」をふりかざして虚妄を増幅させる人間に対して、心の底からの瞋恚(しんい)の炎を燃やしたこともしばしばあったと思われる。
しかし山本氏は、その炎を迎え、不易の平常心を保って冷静に日本人に訴え続けた。
山本氏は「静かなる細き声」(PHP研究所)の「トリさま」の章で書いている。
「生涯これ(怒りを抑えること)を続け、それに耐えて行くと言うことと比べれば、戦場の苦労でさえなお軽いといえる。
決して怒りを爆発させず、また爆発させてケロリと忘れることをせず、これを抑えつづけ、裁きの日までじっとそれを生き抜いた人がいたということ。
信仰の生涯とはおそらくこれと同質のことだと私は思う」
~~~引用終わり~~~
怒りを抑えて、静かなる細き声(列王記上19章12節, King 1 19:12 "Gentle whisper")を発し続ける。決して諦めず。あせらず、くさらず、諦めず。
この「あせらず、くさらず、諦めず」は、私が子どもたちに与えている標語なんですが、曽国藩の「四耐四不訣」みたいですね。
「耐冷、耐苦、耐煩、耐閑、不激、不躁、不競、不随、以成事」
冷に耐え 苦に耐え 煩に耐え 閑に耐え
激せず 躁(さわ)がず 競わず 随(したが)わず
以て大事を成すべし
激せず 躁(さわ)がず 競わず 随(したが)わず
以て大事を成すべし
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山本七平は、「怒りを抑えし者は、城を攻めとる者に勝る」という言葉(玉置酉久翁)を愛していた。この言葉も旧約聖書から来ている。
箴言16:32
怒りをおそくする者は勇士にまさり、自分の心を治める者は城を攻め取る者にまさる。
Proverbs 16:32
Better a patient person than a warrior,
one with self-control than one who takes a city.
Better a patient person than a warrior,
one with self-control than one who takes a city.
Self-control ができる patient person でありたし。