観測にまつわる問題

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中国の会社法19条(中国で活動する外資の経営権と中国共産党の指導の問題)

2017-12-09 12:46:23 | 注目情報
11月24日に在中国ドイツ商工会議所が「中国共産党が今後外資系企業の経営に介入しようとするのであれば、中国市場からの撤退も辞さない」と抗議声明を出したニュースがありました(筆者もfacebookかツイッターで反応しました)が、法的にはこれは中国の会社法19条が大元の原因であるようです。Newsweek(シャーロット・ガオ)12月12日号によると、「いかなる企業にも中国共産党の組織が設立され、党の規約に従って、党活動を行えるようにしなければならない。またどの企業も党組織の活動に必要な条件を整えるものとする」となっているようです。JETROの文書によると(改正前の2008年7月の文書ですが、簡単に検索した結果19条は改正されていないようです)、「中国共産党規約の規定に基づき、会社内に中国共産党の組織を設立し、党の活動を行うものとする。会社は党組織の活動のために必要な条件を提供しなければならない。」です。中国語は分かりませんし、どちらの訳が正確か分かりませんが、JETRO訳の方がキツイ感じですね。「党の活動を行うものとする」ですから、党活動が前提になっており、党活動がないという結果が問題になる可能性があります。「行えるようにしなければならない」だったら、党活動が可能であれば、党活動が無くても構わないと解釈できます。

このNewsweekの記事にあるロイター通信の報道とは8月30日のアングルであるようです。

アングル:中国の外国企業、共産党の「内部介入」を懸念(ロイター 2017年8月30日 / 11:30)

>上述の会合に参加した企業に属する上級幹部は、一部の企業では、中国国営企業との合弁事業について、事業運営や投資判断に関する最終的な決定権を党に与えるよう、契約条件の改訂を求める「政治的圧力」を受けている、とロイターに語った。

>同幹部によれば、現地の合弁パートナーから、党の当局者を「事業経営組織に参加」させ、「党組織の諸経費を企業の予算に含める」こと、さらには取締役会長と党書記のポストに同一人物が就くことを義務付ける文言を盛り込むよう合弁契約の修正を求められているという。

>共産党の広報官室を兼ねる国務院新聞弁公室(SCIO)は、合弁事業や外資企業の通常の事業活動に対する党組織からの介入は一切ない、とファックスでロイターに宛てた声明で述べた。

>ただし、「企業内の党組織は一般に、事業経営周辺の活動を担っており、関連する国家指導原理や政策の迅速な理解、あらゆる関係当事者の利害調整、内部紛争の解決、人材の導入や育成、企業文化の指導、そして協調的な労使関係の構築を支援している」と付け加えた。

共産党広報官室は否定しますが、中華人民共和国憲法(ウィキペディア)は、中国共産党の指導を前提としていますから、外資系企業と言えども、党活動を認めてしまうと、中国人従業員に会社としては望まれない指導を行われる可能性が否定できないと思います。中国の外資系企業が嘘をついたと筆者は思いませんが、経営に中国共産党が介入したり、党活動に関する費用を会社持ちにしたりするなど考えにくいところです。

中国共産党の外資経営介入に「撤退もあり得る」 ドイツ商工会議所がけん制(大紀元 2017年11月25日 16時00分)

>ドイツのクラウス駐中国大使は同記者会見で、一部の外資系企業は党支部により大きな経営権を与えるよう求められ、そのための投資契約の改定を迫られていると述べ、「中国市場からの撤退を検討せざるをえない」と中国政府に警鐘をならした。

>ドイツは欧州連合の対中投資総額の半分強を占めている。クラウス大使は、党支部の経営参加は、対中の直接投資に影響をもたらすと示唆し、今年の欧州連合の対中投資はすでに減少したと話した。

中国に対する進出が著しいドイツが中国に対して強く出たことに驚きましたが、経営権を奪う動きがあるとすれば(あると思いますが)納得できます。例えば、賃上げに対する要請など有り得るとしても、決定権は企業が持つべきで、中国企業はどうだか知りませんが、外資企業が中国共産党に経営権を奪われる訳にはいかないと思います。中華人民共和国憲法で中国共産党の中国人民に対する指導が明記され、会社法で(外資系企業に対しても)少なくとも党組織をつくれるようにしていることが問題ですね。党指導部の腹ひとつで法的には経営に介入できるようになっているのではないでしょうか?党の指示と会社の指示がぶつかった時にどちらを優先すべきでしょうか?中国と外資の判断は異なる可能性があると思います。少なくとも、党の指示で経営権を与えるように求めたり、そのために契約の改訂を求めたりすることはできるでしょう。それに応じれば、外資が同意して中国共産党に経営権を渡すということになります。それを拒否できるとしても話し合う時間も馬鹿にならないでしょう。中国で活動するのに中国共産党を無碍にも出来ません。


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