観測にまつわる問題

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憲法改正の厳しい現状の考察

2018-02-10 18:35:41 | 政治システム・理論
先週の日曜日に自民党県連が開催したえひめ政策セミナーに出てきました。講師は田崎司郎氏です。演題は「安倍政権の行方と小泉進次郎」でしたが、小泉進次郎議員の話は少なかったです。講演では気になる憲法改正の話にも触れられていました。今回はその話に基づき(分かり易くするために、田崎氏の話を筆者の理解で脚色していますので、注意してください。田崎氏の話のニュアンスが分かるのは出席者の特権ですね)、憲法改正について論じます。

田崎氏の指摘で重要なのは、安倍首相の憲法明記案の支持が高いため、現実主義者の安倍首相と理想主義的な2項削除案の石破議員との対立は避けられないだろうとの見通しです。憲法に自衛隊明記、9条2項維持が47% 本社世論調査(日経新聞 2018/1/29 20:00)を見ても、>日本経済新聞社とテレビ東京による26~28日の世論調査で、憲法への自衛隊明記について3つの選択肢で聞くと「(戦力不保持を定めた)9条2項を維持し、明記すべきだ」が47%で最多だった。「9条2項を削除し、明記すべきだ」は15%、「そもそも憲法に明記する必要はない」は24%だった。・・・ということで、大差で支持を得ているのが明記案であって、2項削除案は「現時点で明記する必要は無い」にも負けていますので、確かに常識的に考えて、安倍首相が2項削除案に傾くことはないんだろうと思います。また、公明党の反対は明記案に対しても強いようで、希望の党や維新もそれほど積極的ではなく、国民の支持が高い明記案ですら発議ができるかすら怪しいと現状安倍首相が考えているというのが安倍首相を知る田崎氏の見解だったと思います。

筆者も2項削除案が理想だとは思いますが、安倍首相の案を支持して、何とか明記案で発議して国民投票で通るように考えたいと思います。メリットは自衛隊の違法リスクを無くすことで、その意義は小さくないと考えますが、憲法改正議論のネックになっている9条の神学論争を終結させる意味もありますし、安保法制を認めない理由を考え国の外交安全保障の分断を生み出している勢力を終わらせていく意味もあると思います。筆者には、安保法制は手続き上の瑕疵なく民主的に成立したようにしか見えませんし、日本国憲法第八十一条に基づき違憲と最高裁判所が判断していない法律は全て合法であるようにしか思えません。以上で安保法制が合憲の証明は終了です。屁理屈を捏ね捏ね、安保法制が違憲だと言い張る勢力が民主主義を理解しない悪党なんでしょう。ただ、憲法学者の多くが自衛隊が違憲だと言ってしまう状況下では、最高裁判所がこれから(現時点では地球が引っくり返っても誰が何と言おうとも合憲です)自衛隊や安保法制を違憲だと判断を下してしまうリスクは残っています。自衛隊明記案は最高裁が自衛隊を今になって違憲と判断するリスクを無くします。自衛隊に対する国民の支持が高い現状でこれに反対するのは、危険なお花畑安全保障観の持ち主だけだと思いますが、そういう連中が少なくないし、それなりに力を持っているのが日本の現状だと思います。

それではどう通すのか考えてみますが、安倍政権下では認めないと言っている露骨な差別主義者達をまず計算に入れないことにします。この差別主義者達は事実上、自衛隊を違憲と判断するお花畑原理主義の護憲勢力と密接に結びついていますから、説得は不可能でしょう。こうした連中が口で何を言っても憲法改正などしないことは明々白々としています。現実を見て政策を考えられない日本の癌そのものです。日本は厳しくなっている東アジアの安全保障環境をほとんど直視せずにここまで来てしまいました。

公明党の理解を得ていくことは重要ですが、皆さんご存知のように公明党を含む日本の左派勢力はほとんど護憲勢力ですので、これもひとまずさておきます。

最終的に理由をつくって反対することはないだろうと計算できるのは維新ぐらいですが、それだけでは厳しいのではないだろうかと安倍首相は見ているようです。もうワンパンチ必要なんだろうと思います。そう考えると安保法制違憲論に拘らず、解散権制約のような政権が吞めない案を出して故意に9条改正に反対するのではなく、長らく野党第一党を続けている旧民主党勢力で9条改正に賛成していい議員を見つけていくしかないという結論になってきますが、現在の情勢を見ると、それも確かに厳しいように見えますね。

でもまぁ難しいことを出来ないと決め付けていては出来るものも出来ません。ずっと何か糸口はないかなと考えていたのですが、週刊新潮2月15日号の9条改正派の学者4人の座談会を見て引っかかるものがありました。保守派サイドの学者3人の方の見解は結局筆者と大同小異ですから、ここでは取り上げません。気になるのはリベラルを称する三浦瑠麗氏です。日本のほとんどの左派は安全保障に関して議論することを避け感情論で判断しますから、そういう方々はお話になりません。三浦氏は憲法9条改正の座談会に加わるぐらいですから、日本の左派勢力としては希少なリベラルと言っていい人なんでしょう。筆者はこの人の主張に自分が近いとは全く思っていないのですが(例えば慰安婦問題で橋下氏と議論がありました)、安全保障について話ができるというだけでも、大いに評価できると思います。少なくとも安全保障政策を重視する筆者としては、安全保障政策について反対のための反対で話もできない多くの左派人は無条件で0点ぐらいに思っています。そういう訳で三浦氏の提案に着目してみましょう。三浦氏は座談会で2項削除案を主張していますが、氏の具体的な案がネットで見つかったので、それを検討してみます。

中学生が読んで自衛隊違憲となる憲法はおかしい(日経BP 2017年8月3日)

>三浦:まず9条1項は現状のまま。9条2項は削除しましょう。その後に、
1)内閣総理大臣を最高指揮官とする自衛隊を置く
2)開戦には国会の承認を要する(開戦権限)
3)国会に調査委員会を設置し自衛隊の行動をチェックする(調査委の設置)
4)軍事法廷を設置する(ただし結審は現行の最高裁判所)といった内容の条項を設けるべきだと考えます。

>1)は、自衛隊が適法であることを定める規定。自衛隊は違憲であるという解釈が入り込む余地をなくすわけですね。2)~3)はシビリアンコントロールを強化する規定に聞こえます。

oh...やっぱり9条2項削除案ですね・・・。筆者にあちらの人の考えることは良く分かりませんが、こういうのだと2項削除案でも現状の明記案より左派も賛成し易いのでしょうか?そうだとしても、この案を呑むことはできませんね。現状より状況が悪くなったら意味がありませんから。

まず、国民の印象が悪い2項削除案はさておきましょう。何故なら保守派が国民の印象が悪い案でいくと、左派が喜んで反対するのが目に見えているからです。わざと負けにいく奇特な連中は通常いないと思いますし、政治家にはもっといないと思います。日本国憲法の規定上ハードルがただでさえ高いのにわざと負けにいこうだなんてもはや何を言っているか分からない状態です。そんな保守派は左派の妄想の中にしか存在しません。

①は自衛隊明記案と同様でしょう。その部分で三浦氏の問題意識は理解できます。

②がクセものですね。結論からいくと、絶対に120%認められません。国会というのは衆議院だけでは勿論ありません。参議院は厳然として存在します。問題はねじれで、参議院で否決されると敵が攻めてきても開戦できない可能性があって、与党が混乱すると自分達が政権をとれると思ってしまうのが普通の人かもしれませんから、普通の人が判断を間違うような仕組みはつくらないのが正解だと思います。普通の人が無謬だと人間社会は良い社会なんでしょうが、残念ながらそうではありませんね。人間間違う時は間違うものです。自分の生活と国益を天秤にかけて国益を選べる人はその意味で立派だと思いますし政策的には文句なしと思いますが、普通ではないんでしょう。更に指摘すれば、仮に衆議院だけで決議すると仮定してもギリギリ過半数も想定しなければなりません。少し裏切り者が出たら崩れる状況は危険です。そもそも日本のお花畑議論を見る限り、外交安全保障で危機に陥った時、一致団結して敵に向かえるとは到底思えません。そんなことができるなら、とうの昔に9条など改正されています。今後どんな首相が選ばれるか知りませんけれども、現状では国会の議論という如何にも混乱しそうなファクターを戦争という重い判断に絡めない方が大体マシな結論になるだろうと思います。そもそも権限が無ければ、無理やり反対しようとする人も中々出てこないんじゃないでしょうか。仕事だからワザワザアクロバティックなことを言い始めるんでしょう。大体が首相が判断を間違える可能性は確かにありますが、だからと言って議会がより正しい判断をできる可能性は何処にもありません。誰もが判断を間違えない状況で首相が判断することに問題は無いでしょうし、大統領が判断を間違えるような状況で議会で喧々諤々の議論を行い速やかに正しい結論が出せるとは到底思えません。緊急事態においてみんなで議論する余裕は無く、実際問題権限を持つ一人のリーダーが独自に決断するより他ありません。だから(専門家の意見を聞き)首相が一人で戦争の判断をするのが可能な限りの最良の結論だと考えるしかありません。逆に聞きたいのですが、みんなでわいわい話し合って緊急の判断を行い上手くいった事例がありますか?情報が閉ざせる独裁国家が戦争を仕掛ける場合には文殊の知恵でそれでも上手くいく可能性はありますが、日本は独裁国家じゃありませんから国会での議論など日本に戦争を仕掛ける敵そのものが見ているのですからこれ以上ない究極の情報漏えいですし(議論しなくとも民主国家が仕掛ける戦争は筒抜けだとは思いますが)、そもそもが日本から戦争を仕掛けることは想定されていません。敵が攻めてきた時に反撃すると結論を出すのに議会の承認が必要と考えるのが意味不明でしょう。常識的に考えれば国会も反撃は承認するはずですが、わざわざ政治闘争を絡めることはマイナスがあってもプラスになることはありません。何処の世界に殴られた時に殴り返すのに他人の許可が必要な国があるんでしょうか?筆者には全く分からない話です。そういう話は自分から殴ることも有り得る国になってから、議論しても遅くはありません。問題提起するとすれば、本当に自分から攻めることはないのか?でしょう。確かに世の中には自分から船をこれ以上ないぐらいあからさまにブツけてきておいて、ブツけられたなどと有り得ない主張をする国が(お隣に)あります。防衛戦争しかしない日本に必要だとは全く1ミリも思っていませんが、自分から攻めることが有り得る国では、議会が戦争を止める権限はあってもいいのかなとは思いますね。承認に実効性を持たせることは防衛戦争のケースを想定すると難しい印象ですし、その他諸々理由があって、そうする国はないんじゃないかと思います(世界の安全保障制度に詳しい訳ではありません)。筆者の見解は訂正しませんが、現状の自衛隊法で防衛出動に国会の承認がついてますね。性善説なんでしょうが。

③も良く分かりませんね。チェックするならしてもいいのかもしれませんが、素人が戦争判断に介入したら邪魔なだけじゃないかと思います。例えるなら警察が泥棒を捕まえる過程にチェックが必要だと主張しているようにも見えます。文民統制って政治が軍に優越して軍が政治に従えば事足りると思うのですが。調査委って本当に何なんでしょう?お隣の大国の軍隊は党の指導に従うことになっていますが、それが優れているマネしたいってことでしょうか?それだと日本も一党独裁にする必要がありそうですよね。議会のチェックは衆議院の安全保障委員会や参議院の外交防衛委員会でやればいいと思いませんか?足りない権限があるなら、それは議論してもいいと思いますが、新設の調査委というのが必要であれば、その理由をもっと説明しないといけないと思います。誤解して欲しくないのは三浦氏を別に腐している訳ではないってことです。寧ろ逆も逆です。議論を避ける普通の左翼こそが政策の深化を阻んできたというのが筆者の認識です。だからと言って違うと思うものを違うと言えなければそれもまた議論になりません。ですから、筆者は思ったことを極力書いていきます。それが戦争という重要な議論をするにおいて、必要なプロセスだと考えます。

④軍事法廷は必要だと思いますし、筆者が独裁者だったら0.1秒で設置を決断しますが、多分9条2項案以上に難物じゃないですか?現代においては設置しない軍隊というのも有り得ないんでしょうが、まぁなくても軍隊としては機能するような気もします。中世の軍隊でそんなシステムの話は聞かないですしね。上官の命令に逆らう自衛隊ではないでしょうし、実戦でも恐らく同様なんだろうと思います。あった方がいいから普通はあるんでしょうが、違法リスク除去だけで地球が引っくり返るようなことを言う方々が目立ちますから、とても議論できる状況ではない気もしますね。

結果的に全否定するような感じになって申し訳ないですが、まずは安倍首相案のような小さな一歩を進めるのがいいのではないでしょうか?石破議員は次の改憲が何時になるか分からないというようなことを言いますが、現状でも徹底反対の護憲勢力・護憲同様の勢力の力は侮れないですし、そこをクリアできれば、案外次のまともな議論も早い可能性があると思います。大事なのは、保守対護憲で議論が進まない状況を変えることです。どちらも議論するのは賛成という総論賛成で一致できれば、必ずしも与党が3分の2をとっている必要はありません。総論でもそもそも論でも資格論でも何でもいいのですが、常識的に考えて話さないといけない重要な議論(憲法こそが国の最高法規なのですが)を何故か話し合わないと主張してしまう連中こそが諸悪の根源だと認定する以外に結論はないだろうと思います。護憲とは理屈ではないように見えます。護憲の本丸は9条ですから、9条を改正する以外に話し合いのトゲを抜く方法はないと考えます。一度改正して二度目も徹底抗戦するのか、一度改正されたらもういいやになるのか、護憲でない筆者には分かりようもありませんが、いずれにせよ、明記案をやって損はない訳ですし、反応の程度はやってみないと分かりませんし(護憲の人自身も実際自分が分かってないのではないでしょうか?ただ、2度目以降本気出して抵抗が激しくなることは有り得ないように思えます)、より良い現実的提案はないようですし、現状でどうにかするよう筆者は考えます。

希望の党は安保法制を認める公約でしたし、公約の額面どおりに「豹変」して改正議論に賛成してくれれば無風の可能性はゼロではなかったかもしれませんが(筆者は護憲を知らないので、如何なる選択をしても連中は必ず反対する可能性はあると思います)、それは言っても仕方がないのかもしれませんね。いい方向に「豹変」してくれれば、過去に(ある程度)目を瞑って認めるような対応が必要だったかもしれませんし、イメージを重視したのか実力を怖れたのか政策に賛成でも反対でも大物は排除するような狭量な判断が間違いだったかもしれませんし、まぁ希望の党のことは筆者には良く分かりませんが、憲法改正に賛成の心ある議員はどの党の議員でも頑張ってほしい部分はありますね。

維新に関しては、統治機構に関する憲法改正案があるようですが、期待より不安が先立ちますね。既得権益が大抵抗する大きな案は筆者は嫌いではないですが、それを呑まないと議論しないというようなやり方はしないで欲しいというか、できれば小さな案にしてくれませんかね・・・。大きな案は党の責任で選挙で出してほしいし、3分の2の発議が崩れるような案や議論は困ってしまいます。

左側にも保守が納得する改正案があればいいと思いますが、もともと左な憲法ですから、いい案がありますかどうか・・・。左でない筆者がそんな心配をするのも変な話ですが、あいつら反対は頑張るけど、建設的なことは頑張らないからな・・・。

引き続き憲法改正に関しては考察していきますが、本日はこの辺にしておきます。

ただ、田崎氏の講演を聞いた限りでは、理屈よりも感情やイメージ・好き嫌いを考えないといけないのかもしれませんね。それを持って反対しているのですから、それを考えたら改正が遠のくような気もしますが、その辺も極力踏まえていこうとは思っています。


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