逝きし世の面影

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ポロニウム被爆 タバコ1日1・5箱で年80ミリシーベルト

2012年08月12日 | 放射能と情報操作

『厚労省、初めて喫煙による放射性物質の危険性を認める』

日本禁煙学会は、福島第一原発事故から7ヶ月後の2011年10月に、厚生労働省と財務省に対して、『東北地方、関東地方の葉タバコの放射性物質の測定と製品化されたタバコのポロニウム測定』を要望していた。
このほど厚生労働省は共産党の紙智子参議院議員の資料請求を受けて、タバコの喫煙における放射性物質ポロニウム-210の被曝よる健康被害を初めて認める資料を提出しました。
30年前の1982年、『タバコの煙に含まれている放射性元素ポロニウムの人体に対する危険性について米国おいて研究発表がなされているが、政府はこの発表をどう受け止めているのか』との質問主意書に対しては、当時の厚生労働省は『ご指摘の研究について、今後その内容を精細に研究して参りたい』と、木で鼻をくくった曖昧回答をしていたのである。
今回君子豹変した厚労省ですが、政府中で何が起きたのだろうか。
提出された厚生労働省の研究報告の資料によると、タバコを1日1・5箱を吸う喫煙者の放射性物質の被曝量は、年80ミリシーベルトにも及びます。
放射性物質のポロニウムは、タバコに含まれ、吸い込まれたポロニウムは気管支分岐部に集中的に沈着し、α線による内部被爆を引き起こします。
ニコチンやタールなどの有害物質を除去するタバコのフィルターでも、放射性物質のポロニウムは除去出来ず、ほとんど全部(97%)がフィルターを通過するとされています。

『DNAを傷つける放射性物質の特殊な毒性』

ヒロシマ・ナガサキのような原子爆弾の直撃ではなくて、原子力発電所の事故で放出された放射線被曝では直ちに死ぬことは無く、チェルノブイリ原発事故で消火作業に従事した兵士や消防士では致死量を浴びても数週間の時間差がかならず出ている。
電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線など電磁波の中でも波長が短い『放射線』には電離作用があり、物質の基礎単位である『原子』の原子核を回っている電子を軌道から吹き飛ばして(電離)イオン化したり、励起(Excitation)してエネルギー的に興奮状態になり不安定化させる。
『放射線』の中でも、(セシウム137などから出る) 電磁波であるγ線よりも、(ストロンチウム90などから出る)電荷を持った電子の流れであるβ線や、(ポロニウム210などから出る)ヘリウムの原子核であるα線の方がより電離作用は大きい。
通常の放射線測定器はセシウムやヨウ素から出るγ線限定であり、ポロニウムのα線は測定端子まで届かず測ることが出来ない。
電離作用が一番大きいα線は、飛距離が極端に短く紙一枚でも防げるのでDNAの被害は内部被曝にほぼ限定される。
細胞の自己修復能力は短期の場合には十分に機能するのですが、原発事故の低線量の放射線の様な長期被曝の場合には自死しないで細胞のDNAを修復するために返って悪いのです。
原子爆弾の爆発のような短期間の大線量被曝では細胞のDNAの損傷による将来の発癌リスクの問題云々以前に、細胞自体が死滅してしまう。
この原理を医学に応用したのが癌の放射線治療である。
ところが死なない程度の長期間の低線量被曝では、放射線には電離作用があるのでDNAが傷つき癌化するのである。
『放射能』の毒性は、他に比べて特殊で恐ろしい。
リトビネンコ暗殺事件で突然有名になった放射性物質のポロニウムは、ウランがラジウム、ラドンへと順番に『崩壊』する過程で発生します。
毎日新聞の2011年12月25日付け記事、『Dr.中川のがんの時代を暮らす』DNA傷つけるラドンで、『たばこの煙には、ベンゾピレンなどの発がん物質のほかに、ラドン由来の放射性物質が含まれます。ラドンが崩壊してできる「ポロニウム」など大気中の放射性物質が葉タバコに付着するため、たばこを吸うと被曝するのです。』
『肺がんは、年間死亡数約7万人と、日本人のがん死亡のトップです。』
『世界保健機関(WHO)によると、肺がんの原因の3~14%が、空気中のラドンの吸入による(放射線)被曝と言われます。』
末期癌など終末医療のヘルスケアの専門家である中川恵一東京大付属病院准教授は、毎日紙面の自分のコラムで『死亡原因トップの肺癌の原因の1割が放射能被曝であり非喫煙者(間接の受動喫煙)では原因のトップ』と主張しているのです。

『何故、この時期にポロニウムが?』

α線崩壊する放射性物質ポロニウムですが、イギリスが2007年末に『ポロニウム210でのリトビネンコ暗殺』との不思議なプロパガンダを世界規模で繰り広げて超有名になった。
ところが、それ以前のマスコミでは1回も登場しないのである。
リトビネンコ暗殺以後には福島第一原発事故から9ヶ月後の『Dr.中川のがんの時代を暮らす』DNA傷つけるラドン(毎日新聞 2011年12月25日)と、今年7月に中東の衛星テレビ、アルジャジーラがパレスチナ自治政府のアラファト議長がポロニウムで毒殺された可能性があると報じた程度で、マスコミ報道には出てこない極めて珍しい放射性物質である。
ポロニウム210の報道例は少なく極めて珍しいが、ウラン238が放射線を出しながら崩壊して最後には鉛になるので、崩壊途中の中間物質であるポロニウムは珍しくもなんともない極一般的な放射性物質である。
α線を出すポロニウム210がこれまで問題とされなかった最大原因とは透過力が弱く被害がほぼ内部被曝に限定されるからでしょう。
γ線による外部被曝と違い、α線による内部被曝の正確な測定は極め困難である。

『内部被曝に限定されるポロニウム』

福島第一原発事故から1年5ヶ月後に厚生労働省が今回『ポロニウム被爆 タバコ1日1・5箱で年80ミリシーベルト』との、放射線被曝による健康被害を初めて認める驚きの資料を提出した動機とは何か。
今まで日本政府(官庁)が『喫煙による被爆』を表に出さなかったのは、国民の健康被害よりも旧専売公社とか現JT社の『利益や税収を最優先していたから』でほぼ間違いないだろう。
今回は背に腹は代えられず、『原発事故よりもタバコの葉のポロニウムの影響の方が大きい』として、東京電力や日本政府の莫大な損害賠償責任をいくらかでも軽減しようとする厚労省のよこしまな隠された思惑が考えられる。
もしも、タバコを1日1・5箱を吸う喫煙者の放射性物質の被曝量が年80ミリシーベルトにも及ぶなら、福島原発からの放射性物質の影響で発癌しても『原発由来の放射能よりもタバコの影響の方が大きい』と主張して、嗜好品であるタバコの『喫煙による健康被害は自己責任である』と言い逃れ出来ると思っているのだろうか。
それとも震災瓦礫の広域処理で心配されるセシウムなどの放射性汚染物質の拡散問題などは、タバコの煙によるポロニウム被爆の危険に比べれば量的に小さく『安全である』と言いたいのだろうか。
原発が爆発した直後に枝野幸男(現通産大臣)が何回も強調していたように放射能は『すぐには健康に影響しない』が時限爆弾のように、ある程度の時間が経過した後では間違いなく健康に影響する。
いよいよ全国的に福島第一原発の一番最初の時限爆弾が大爆発する時間がさし迫っているのだろうか。

『福島第一原発の放射線被曝で遺伝子に傷』

『チョウの羽や目に異常』
東京電力福島第1原発事故の影響により、福島県などで最も一般的なチョウの一種『ヤマトシジミ』の羽や目に異常が生じているとの報告を、大瀧丈二琉球大准教授らの研究チームが10日までにまとめ、英科学誌に発表した。
放射性物質の影響で遺伝子に傷ができたことが原因で、次世代にも引き継がれているとみられるという。
大瀧准教授は『影響の受けやすさは種により異なるため、他の動物も調べる必要がある。人間はチョウとは全く別で、ずっと強いはずだ』と話した。
研究チームは事故直後の昨年5月、福島県などの7市町でヤマトシジミの成虫121匹を採集。
12%は、羽が小さかったり目が陥没していたりした。
これらのチョウ同士を交配した2世代目の異常率は18%に上昇し、成虫になる前に死ぬ例も目立った。
さらに異常があったチョウのみを選んで健康なチョウと交配し3世代目を誕生させたところ、34%に同様の異常がみられた。 
[時事通信社] 2012年8月10日(金)

東京電力福島第1原発事故による放射性物質の影響で、チョウの一種『ヤマトシジミ』に遺伝的な異常が出たとする調査結果を琉球大の大瀧丈二准教授(分子生理学)らの研究チームがまとめ、10日までに英科学誌電子版に発表した。
ヤマトシジミは人が生活する場所に多く生息する。チームは昨年5月と9月、福島県内のほか茨城、東京など計10カ所で採集した。
5月に集めた成虫144匹から生まれた卵をふ化させて育て、孫の世代まで調べたところ、いわき市や広野町など福島県内のチョウは、子の世代で死ぬ確率がほかの地域に比べ高かった。線量が高い地域ほどオスの羽のサイズが小さくなっていた。
【共同通信】2012/08/10

『信用度の高い世界的な権威がある科学誌ネイチャーの記事』

『低レベルの被爆は健康に影響しない』と主張する『安全神話』を信奉する人々は同時に『放射能は遺伝しない。放射線被害が子孫に影響するとの俗説は非科学的な放射能差別である』と強硬に主張していた。
この人たちは『低線量被爆は安全』なので『広域瓦礫処理に反対するのは非科学的な差別である』とか福島県の惨状を無視して『原発を再稼働させないと日本経済が沈没する』とも同時に自信たっぷりに主張しているのです。
確かに放射能は遺伝しないが、『遺伝子』(DNA情報)は必ず子孫に遺伝する。
遺伝を司る根本物質が『遺伝子』なのであり、遺伝子の変異が親の世代から子供に伝わるのは生物学のイロハの『イ』程度であろう。
これは科学の基礎知識以前の話であり、正常な大人の最低限の一般常識である。
遺伝するから『遺伝子』との名前が付いているのですよ。『遺伝しない遺伝子』などの阿呆臭い話は『絶対安全な原子力発電』とか『体に良い低線量の放射能』以上の馬鹿馬鹿し過ぎるアホ神話である。
『福島第一原子力発電所から放出された放射性物質がヤマトシジミに生理的かつ遺伝的な損傷をもたらした』との結論は当然であり、問題は『人の場合』の放射性物質の影響力の大きさや範囲が『どれだけ危険か』との量的な科学的検証作業だけなのである。

『なるほど。・・・ガックリ脱力しつつ納得する』

今回の厚生労働省の『ポロニウム被爆 タバコ1日1・5箱で年80ミリシーベルト』との驚愕的な資料提出の動機に関する考察ですが、内容的に『なるほど』と納得する、トホホな結論に達した模様です。
科学やブッダの見つけた真理では『原因』と『結果』とは切り離すことが出来ず、どれほど不思議な『納得がいかない』、『ありえない』話でも、科学的で必ず誰もが納得する合理的な客観的原因が存在する。
珍しい奇跡的な話はいくらでも存在するが(原因が無く、結果だけが存在する)『奇跡』は絶対に起きないのである。
世界中の人々が注目するオリンピックの聖火の点火式から日本選手団だけが強制排除された前代未聞の珍事中の珍事は、野田佳彦や細野豪志が五輪ロゴ入りの瓦礫の広域処理の宣伝バッジを選手全員に持たせた便乗商法の『掟破り』を組織委員会に咎められて、レッドカードで一発退場となった国辱的な話であった。
この場合、『原因』を考えれば、その『結果』は当然で、なん不思議もない。
今回琉球大学分子生物学の研究チームの行った、日本人としては驚愕的な恐ろしすぎる記事内容が、世界的権威の科学誌ネイチャーで発表されることが事前に分かっていれば、『ポロニウム被爆 タバコ1日1・5箱で年80ミリシーベルト』などの研究資料を厚労省が公開するのは、何の不思議もない。
日本政府として、当然の発表だったのである。

『巨大な放射能実験場としての福島県と日本国民』

琉球大の研究チームがまとめた科学誌ネイチャーの記事では、昆虫は低線量の放射線に強いと言われていたが原発事故から2ヶ月後の5月の時点で蝶の異常率は12%だったが、健康な個体と交配した2世代目の異常率は18%、3世代目では34%に上昇、親の世代よりも1・5倍高い発生頻度だった。
事故から6ヶ月後の9月時点では子の世代の約5割で異常が見つかり、5月調査時よりも一層厳しい異常が発生していた。
事故による放射性物質の影響がほとんどない沖縄の蝶の幼虫を福島県の草で育てると、福島と同じ異常がでる。
福島第一原子力発電所から放出された放射性物質による、低線量の内部被曝で生理的かつ遺伝的な損傷をもたらしている事実が科学的に確認された。
現在、法律で厳重に立ち入りが制限されている放射線管理区域以上に汚染した危険地帯に妊婦や幼児など日本の一般市民が数百万人も普通に生活しているのです。
政府や地元自治体は除染作業による住民の帰還を目論んでいるが、これ以上に無茶苦茶な常識外れな恐ろしい話があるだろうか。

ノーベル医学生理学賞を受賞した分子生物学者ジャック・モノーの『偶然と必然』の有名な言葉で、今回のなんとも不可思議で腹立たしい記事を締めくくりたい。
『人間にとってどんなに不安で絶望的なことであろうとも、それが科学的で客観的な知識であるならば無条件で受け容れるべき』であり、他方で『にもかかわらず、現在の自己を超克・超越して理想に投企すべきである』。



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2 コメント

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地方行政 (農婦)
2012-08-11 12:46:48
先づ、遅ればせながら、有難うございます。今日からチェーンスモウカーの私でしたが、喫煙を止めてみます。今までなげやりな荒れた生活をしてました。
私もかねてから、瓦礫処理を、わざわざ金をかけてまで九州や、関東方面にまで運ばなければならないのか、大変疑問を持ってました。地元処理する施設を作るとか、埋め立てに利用するとか、役場職員は頭が働かないのか、にほん政府のいいなりです。又気象庁の10mの津波発表の遅れの為に、わが町の幹部役場職員は38人も死亡してしまい、役場そのものが混乱してます。その事を職員に言ったら、気象庁のミスの事をすでに知ってたのです。何故それでは他の市町村と一丸となって、気象庁に抗議しないのかと言ったのですが、わが町の職員はいったいなにをかんがえているものやら、町民の事など心配もせず、相変わらず自分達さえ良ければいいのでしょう。私たちが、地元に戻らず、田町村に移住したら、職員の給料が減り、残された住民の負担は増大するのです。そんな事は、子供でも解ります。地方自治体の職員も自分たちの事ばかり考え、私達の事は考えない無能な人間ばかりです。
返信する
すぐに健康に影響しないが (宗純)
2012-08-12 16:31:02
農婦さん、コメント有り難うございます。

タバコですが『すぐには健康に影響しない』が時間が経てば間違いなく影響する。
タバコは健康と財布に対して優しくないのですよ。もしも今回の記事で禁煙に成功すれば、これ以上に良い話はありません。
今度からマイルドセブンの名称が変更になるそうですが、ソフトとかマイルドと名前が付いていても体や財布にとって少しも優しくありません。本人だけでなく家族にとっても優しくない。
1箱1000円 たばこ議連が設立総会
2008年06月14日 | 社会
http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/f93c16c8e8cf2a144be394473e94efba

震災瓦礫の広域処理ですが、全くの意味不明の税金の無駄遣い。
地元で全量処理すれば雇用も生まれるし処理費用も安くなるのですから、災害復興にとっては一石二鳥。
それに本当に全く安全であるなら、今のようにゴミとして焼却するなどはもったいなすぎる贅沢ですよ。
材木などは加工して燃料チップや肥料として東北の震災復興の企画として全国販売すれば、すべての日本人が喜んで協力します。
震災瓦礫の処理ですが、費用どころか、うまくいけば大きな利益が生まれるのです。
ところがそんな動きは全くない。
たぶん放射能が『危ない』のですよ。危険性を承知しているから誰も『震災がれきの有効利用』が出来ないのです。
今東京電力のテレビ会議の録画が公開されているが、150時間を90時間に編集し、しかも肝心な部分は音声を抜いている。
人災中の人災である原発事故の主犯が、自分から証拠を自主的に提出するなど夢のまた夢。考えるだけでも馬鹿馬鹿しい。
強制捜査以外には真相が明らかになることは天地がひっくり返っても起きることはないのだとの常識が欠落しているのです。
2万人近い大震災の被害者ですが、地震ではなくて殆どは半時間以上あとの津波での死亡です。
逃げていれば確実に助かった人が大多数なのです。
それなら地震直後に岩手県で最大3メートルとの気象庁の大失態が、招いた人災です。
10メートルの堤防があれば、気象庁発表の3メートルの津波では高台に逃げることは、まったくの無駄なのです。
徹底した事勿れ主義の役所や公務員に期待すほうが無理筋かも知れません。
この場合には被害者家族とか地元住民が集団提訴する方が正しい選択でしょう。
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