みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

少なくとも「ヒドリ」以外は皆いわゆる標準語

2017-05-24 10:00:00 | 涙ヲ流サナカッタヒデリノトキ
 「下根子桜」のヤマガシュウの今が気になって、この5月21日そこに立ち寄ってみたのだが、
《1 「賢治詩碑」を撮っていたならば》(平成29年5月21日撮影)

《2 そこへタクシーの運転手が来訪者を案内してやって来た》(平成29年5月21日撮影)

 説明が否応なく聞こえてきて、私は驚いてしまった。
    ヒデリは本当はヒドリなのです。「一人(ひとり)」が訛ってヒドリになったのです。
と断定しながらガイドしていたからだ。

 一体、なんで今頃になってさえも相変わらず「ヒドリ=一人」説が生き残っているかと、私は怒りを通り越して嘆くしかなかった。「雨ニモマケズ」を一度落ち着いて読み上げてみれば、「ヒドリ」以外は皆いわゆる標準語であることを直ぐに気付くはずだ。ならば、この「ヒドリ」もそれであることを殆どの人々は否定できなかろう。そこで、もし『「一人(ひとり)」が訛ってヒドリになったのです』<*1>ということであれば、この場合もいわば方言と言えるから、かなり問題がある。
 したがって、安易に『「一人(ひとり)」が訛ってヒドリになったのです』などと断定しながらガイドするということは、折角花巻に賢治を訪ねてやって来た人に対して無責任なことだ。せめて、そういう説もかつてあったようです、ならばまだしも。

 さりながら私はここでふと気付く。この『少なくとも「ヒドリ」以外は皆いわゆる標準語』という論理を軽視したような断定調のガイドの仕方も、いくつかのあやかしとも言える賢治に関する「通説」が現在も罷り通っているということも、実は似たり寄ったりな構図をしているのではなかろうかということに、だ。
 例えば次のような賢治に関する次のような項目は皆そうだ。
   ㈠「独居自炊」とは言い切れない
   ㈡「大正15年12月2日の上京」の牽強付会
   ㈢「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」賢治
   ㈣ 誤認「昭和二年は非常な寒い氣候…ひどい凶作」
   ㈤ 昭和二年の上京と三か月のチェロ猛勉強
   ㈥ 賢治の稲作指導の限界
   ㈦「下根子桜」撤退と「陸軍大演習」
   ㈧ あやかし「高瀬露悪女伝説」
基本に忠実に私が検証してみれば、これらに関しては皆(つまり賢治に関して常識的におかしいというところは、殆ど皆)「通説」に問題があるからである(詳しくは、〝『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』〟をご覧いただきたい)。

 だから、このようなあやかしが殆ど再検証もなされずに、それがあたかも「真実」であるかの如くに賢治研究家の論文や論考の中にも今でも少なからず横溢していることと先の無責任なガイドの仕方とは通底していると、私はそれこそ確信を持って断定できる。ましてこのことを知ったら、石井洋二郎氏はさぞかし、ここにも「太った豚よりも痩せたソクラテス」があったのかと嘆くことしきりだろう
 つまり、なにも先のガイドの仕方だけが問題だというわけではなく、それ以上に「賢治研究」においては大きな問題があると言える。しかも、殆どの研究家がそのことを追究することは元より、言及することすら避けているかのように私からは見える。それ故に、歴史から後々厳しい裁きを受けることが避けられないのではなかろうかという懸念がこの頃はいつもつきまとう。

<*1:投稿者註> 岩手にずっと長年住んできて、「一人(ひとり)」を訛って「ヒドリ」と発音したこともなければ、そのように発音が聞こえる人に出会ったこともともに私にはない。

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 〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守
             電話 0198-24-9813
 なお、本書は拙ブログ『宮澤賢治の里より』あるいは『みちのくの山野草』に所収の、
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