みちのくの山野草

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賢治関連七不思議(訪問応諾ドタキャン、#5)

2017-07-27 10:00:00 | 賢治に関する不思議
《驥北の野》(平成29年7月17日撮影)
 さて、どうして私は、もしかすると7月22日付『岩手日報』のこの記事を賢治が見たことが同月26日の賢治宅訪問のドタキャンの直接的な切っ掛けだったのではなかろうかと直観したのかというと、それはもちろん先に引用した大正15年7月22日付『岩手日報』の次の記事、

 岩手の地と農民の藝術
  二十五日佛教会館で講演する佐伯氏談
來る二十五日夜石川啄木會主催の文藝講演會でフランスの農民藝術について講演すべき東京女子高等学院の教授佐伯郁郎氏は二十日夜行にて來盛したが同氏は次の如く語つた
私は白鳥犬田の兩氏と農民藝術協會の會員で主としてフランス農民藝術についてお話をしやうと考へて居ります我々同志の手で近く春陽堂から農民文藝十二講と云ふ本を出版する事になつてゐるので私はその原稿執筆のため友人の好意に誘はれて外山牧場でこの一夏を送る事になつてゐるのです白鳥氏は農民的な詩人としての聲價は今改めて御話する迄もなく詩壇の第一位を占むるものであると信じます、犬田氏はほうんとうに農民自身として三十年の生ガイを土に即して謙ソンにしかも勇敢に生きて來た人で土の藝術家として故長塚節先生に師事し農民大衆の合理的な解放のために戰つて來た人です、氏の多分自己の体驗から大地の藝術について素ボクにして迫力ある話をさるゝ事と思ひます啄木を生んだ岩手と云ふ土地が如何にこの土の藝術家たちを吸引したことか……
によってであった。

 そこで次に、この記事内容を箇条書きすればおおよそ次のようになる。
⑴ 佐伯郁郎はフランスの農民藝術について講演する。
⑵ 同志(農民藝術協會)の手で近く春陽堂から農民文藝十二講と云ふ本を出版する事になつてゐる。
⑶ 白鳥氏は農民的な詩人としての聲價は今改めて御話する迄もなく詩壇の第一位を占むる。
⑷ 犬田氏はほうんとうに農民自身として三十年の生ガイを土に即して謙ソンにしかも勇敢に生きて來た人で土の藝術家。農民大衆の合理的な解放のために戰つて來た人です。

 したがって、これらのことから導かれることは、この新聞記事を見るまで賢治が知らなかったことは⑴でも⑶でもはたまた⑷でもなかろうということである。なぜならば、賢治と佐伯は共に「東京啄木会」の会員だし、賢治は佐伯に『春と修羅』を贈っているという間柄だし、犬田は当時『早稲田文學』『家の光』で頻繁に農民芸術に関する論考等を発表しているからである。すると当然あぶり出されるのは⑵であり、このことがドタキャンの直接的な切っ掛けであった蓋然性が極めて高いということである。

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