なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

要するに動きが悪くなった

2017年05月21日 | Weblog

 昨日日直で病院に行くと、前日の当直だった外科医から相談された。水曜日に尿路感染症として入院した70歳代後半の女性が、発熱が続いて困っているという。数日前から?発熱が続くと、内科医院から当院泌尿器科外来に紹介されていた。医院の処方にグレースビットが記載してあり、抗菌薬を投与したが改善しないということらしい。

 泌尿器科医は非常勤医で、入院した時の主治医にはならない。腹部CT(尿路閉塞の有無を見た)で上行結腸に腫瘤が疑われるとして、外科外来に紹介されていた。単純CTだが、便にしか見えない。紹介だったので外科で造影CTを追加したが、やはりそこは単なる便だった。尿路感染症として、そのまま外科で入院にしていた。抗菌薬点滴静注ですぐに治ると見越したのだろう。(グレースビットで改善しなければ、キノロン耐性大腸菌くらい?)

 内科医院の尿検査でも当院外来での尿検査でも、確かに尿混濁はあり、細菌(1+)になっている。白血球数12000、CRP8だった。内科医院で抗菌薬が投与されていたので、尿培養は陰性だった。血液培養も出していて結果はまだ出ないが、たぶん陰性だろう。

 途中から抗真菌薬も追加されていた。その日からクラビット点滴静注に変更していて、なんだか治療が迷走している。医院での検査と当院の検査で、白血球数は10000~12000、CRP8~10で推移していて、要するに炎症反応は横ばい・不変だった(改善も悪化もしていない)。

 肺炎・胆道感染症・軟部組織感染症・関節炎はなく、心内膜炎としても抗菌薬に反応するだろうから、(少なくとも通常の一般細菌の)感染症ではないようだ。土曜日の午前中は市内のクリニックが診療しているので、外来受診は少ない。時間があったので、すぐに外科病棟に行ってみた。

 患者さんは意識清明で認知症もないが、難聴があるので耳元で大きな声を出さないと会話できない(何度も、はあ~と訊かれた)。ふだんは夫と二人暮らしで、家事全般をしている。買い物カートを引っ張って、買い物に出かけているそうだ。自転車にも乗っていた。先月の半ばから熱っぽい気がしていたが、体温は測定していない。そのころから、身体の動きが悪くなっていた。買い物カートにつかまって歩くようになったそうだ。自宅ではベットに寝ているが、起き上がるのがつらくなっていた。自転車にも乗れなくなった。

 両側上肢はそれなりに挙上できる。肩・上腕に圧痛・把握痛はなかった。ベットから起き上がるのがつらいのは同じだった。ベットサイドにポータブルトイレが置かれていたが、尿カテーテルも留置されていた。手を貸さないと、起き上がれないが、両手でベット柵につかまれば何とか座位は保てる。両側大腿に把握痛があるような気がする(確かとは言えない)。印象はリウマチ性多発筋痛症(PMR)だった。

 不明熱の鑑別になるが、検査を全部行うのも現実的ではない。悪寒・戦慄はない。心雑音はなく、敗血症性血栓の所見はない。リンパ節腫脹もなく、LDHは正常だった。抗菌薬を中止して血液培養をとり直してからか好ましいのだろうが、プレドニン投与を開始して経過をみることにした。

コメント
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