なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「ねころんで読めるてんかん診療」~治療薬

2017年05月14日 | Weblog

 週末は、「ねころんで読めるてんかん診療」中里信和著メディカ出版を読み返していた。

 全内科で診る初発のてんかん発作は、全般てんかんでなくて、器質性病変(脳卒中・脳腫瘍・頭部外傷など)に基づく局在関連てんかん(部分てんかん)の二次性全般化。脳梗塞後遺症の高齢者が目の前でけいれん発作を起こすことがあるが、確かに一側の症状から始まって全身に及んで意識消失している。全身強直間代けいれんで発症するのが全般てんかんと、誤解していた時期がある(局在関連てんかんの二次性全般化)。

 てんかん治療の第一選択は、全般てんかんならバルプロ酸で、局在関連てんかん(部分てんかん)ならカルバマゼピン。全般てんかんと局在関連てんかんの比率は約1:3。内科だとバルプロ酸は全般てんかんとして小児期から投与されている患者さんに継続処方するくらいだろう。ほとんどの処方はカルバマゼピンになる。 

 (カルバマゼピン) 局在関連てんかんの第一選択はカルバマゼピン。局在関連てんかんにおけるカルバマゼピンの有効性は他剤(新規抗てんかん薬を含む)を凌駕する。成人では、200mg/日分2(朝夕)で処方開始。最初の数日は100mg1日1回で開始して、めまい・ふらつきがなければ200mg/日にする。副作用・血中濃度を参考に、2~4週ごとに100mgずつ増量薬疹多く、全体の5~10%に出現。少量開始を守れば薬疹の出現率は低く抑えることができる(本当かな)。投与直後だけでなく、1~2か月経過してからでも出現する。スティーブンス・ジョンソン症候群・中毒性表皮壊死症(TEN)、薬剤性過敏症症候群(DIHS)などの重症薬疹の可能性。血中濃度4~12μg/mlの範囲に収まるように増量。肝臓での酵素誘導による分解促進のため数か月後に血中濃度が低下する。長期投与の副作用は、低ナトリウム血症。

 第一選択薬(局在関連てんかんではカルバマゼピン、全般てんかんではバルプロ酸)で発作が消失しない時には、レベチラセタム(LEV)かラモトリギン(LTG)を追加。

 (レベチラセタム) 500mg錠を1日2錠分2で開始。2週間の間隔をあけて2錠ずつ増量。最高容量は6錠。初期量1000mg/日で発作がゼロになる割合が最も高い。てんかん重積に点滴静注が使用できる。日本の保険適応は局在関連てんかんだが、全般てんかんにも効果。副作用は、精神症状の新規出現や悪化。500mg/日で開始して1000mg/日で維持。薬価は高い。

 (ラモトリギン) 1)バルプロ酸と併用時(肝でのグルクロン酸抱合で競合、ラモトリギンの半減期が2倍に延長)。25mg隔日から開始。2~4週後に毎日連続25mgに増量。2~4週後に1日50mgに増量。維持容量は100~200mg。2)カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールと併用時(肝でのグルクロン酸抱合で誘発、ラモトリギンの代謝が促進)。1日50mgから開始。漸増して維持容量は200~400mg。血中濃度2.5~10μg/mL。副作用は重症薬疹。

 (ゾニサミド、トピラマート) スペクトラムが広く効果も抜群だが、副作用に要注意。副作用は、元気がでない(鎮静作用、抑うつ、精神活動の緩徐化、易疲労感、諸局低下、体重減少)、汗が出ない(乏汗症、無汗症)、尿路結石。ゾニサミドは100mg/日から開始。維持量は200~400mg/日。トピラマートは25mg/日から開始。25mgずつ数週かけて漸増。維持量は200~400mg/日。

 (クロナゼパム、クロバザム) 抗てんかん薬として第一選択にはならない。使用するのは、1)てんかん発作が急に頻発し始めた時、メインの薬が効いてくるまで、2)薬疹が出現した時、次の薬を開始する前の待期期間の2~3か月に。クロナゼパムは初期量0.5~1mg、維持量は2~6mg。クロバザムは初期量5~10mg、30mg/日まで増量可。眠気が少なく、離脱が起きにくいクロバザムを優先。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする