なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

傍腫瘍性辺縁系脳炎

2017年04月13日 | Weblog

 4月12日のNHKドクターGは徳田安春先生で、症例は傍腫瘍性辺縁系脳炎だった。見ていてヘルペス脳炎かなと思ったが、違った。

 自分で診たことはない。数年前当院の神経内科に、他院神経内科で傍腫瘍性辺縁系脳炎と診断された20歳代の女性が、リハビリで転院してきたことがある。卵巣腫瘍だったと聞いた。当院の神経内科医が、診断した神経内科医のことを珍しく褒めていたのを覚えている。今時は、研修医でも疾患を想定できるようになっているらしい。

 テレビの症例は25歳女性で、失認・幻覚(幻視)・錯乱・痙攣の症状を呈していた。不随意運動(ジスキネジア様)もあった。病識があり、統合失調症ではない(ことになっていた)。CT画像で卵巣腫瘍(奇形種)があった。急性発症のヘルペス脳炎と比較すると、辺縁系脳炎は亜急性の経過になるということだった。経過だけでは否定できないので、当然髄液検査で単純ヘルペスウイルスの検査もするのだろう。

 当院に入院していた辺縁系脳炎後遺症の女性は、傍から見ていただけだが、表情・雰囲気・会話の内容が統合失調症様に見えた(個人の感想です)。年齢を考えると気の毒としかいいようがないが、時間経過とともに改善していくのだろうか。

 傍腫瘍性神経症候群paraneplastic neurological syndrome:PNS)は、悪性腫瘍(良性腫瘍も)の患者さんに、(腫瘍の浸潤・転移ではなくて)自己免疫的機序で神経筋障害が、多くは腫瘍の発見に先んじて発症する。主な症状から臨床病型が分けられ、患者の血清および髄液に病型に特徴的な自己抗体(腫瘍神経共通抗原認識抗体onconeural antibodies)が検出される。神経症状の発症と抗体の検出が腫瘍の発見に先行するため、抗体の検出は診断と腫瘍発見のマーカーになる。

 PNSの病型としては、脳脊髄炎・小脳変性症・傍腫瘍性辺縁系脳炎・傍腫瘍性オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群・感覚性運動失調型ニューロパチー・ランバートイートン筋無力症候群・傍腫瘍性全身硬直症候群などがある(もう難しくてわからないが)。

 傍腫瘍性辺縁系脳炎は、脳脊髄液でリンパ球・蛋白の増加があり、頭部MRIでは一側または両側の側頭葉内側面にT2強調画像やFLAIR画像で高信号を呈する。

 傍腫瘍性辺縁系脳炎の中に抗NMDA受容体抗体関連PNSがあり、卵巣奇形種を有して、腫瘍や免疫療法に反応して予後が良好な若年女性の辺縁系脳炎がある。症状は、精神症状・てんかん・不随意運動など。

 自分で診断できる気はしないが、神経症状・精神症状の患者さんでは、傍腫瘍性神経症候群(辺縁系脳炎など)も考慮しなければならないということだ。神経内科にコンサルトするだけになりそうだが、精神症状で精神科に紹介してしまうとまずいことになる。

  

 

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