高台寺 和久傳
京都市東山区高台寺北門前鷲屋町512
TEL 075-533-3100
定休日 不定休
京都の超高級料亭の和久傳さんは明治3年、丹後峰山町で桑村傳右衛門が旅館として創業した。
江戸時代から丹後縮緬(タンゴチリメン)で栄えており、訪れる商人に宿泊や会合の場として利用され、
峰山が誇る老舗旅館として100年以上も続いた。
やがて丹後産業の陰りに伴い、町中の旅館からリニューアルする形で山の麓へと移転した。
その後、昭和57年に京都市内の高台寺近くに「高台寺 和久傳」として移転、
現在の料亭として新たにスタートした。
和久傳さんは現在、料亭業態の他、茶菓席やレストラン、おもたせ(物販店)などの店舗を展開している。
その主だった店は高級料亭のここ高台寺和久傳、
少し価格を下げた「室町和久傳」、京都駅に立地する「京都和久傳」。
それ以外に五一いつつ、丹、はしたて。
又、茶菓、物販店として都内では丸の内店、新宿伊勢丹店、松屋銀座店、玉川高島屋などがある。
和久傳さんの特徴は細工を凝らした懐石料理を提供する老舗料亭が並ぶ中、
日本海に面した港に揚がった魚や山で採れた旬の食材も陸道で数時間で京都に着くという点に着目し、
創業の地である丹後峰山の名物、囲炉裏の蟹焼をはじめとした
季節の素材の味を活かした「野趣と文化」という味を生み出した。
そして「お客様にご満足いただけるサービスでおもてなしをすることを大切に
日々技術と感性を磨き上げている」という。
まさに京都の紅葉シーズンが始まったばかりで、
当店玄関の所にも季節感を伝える紅葉の活け花のしつらえがお客をやさしく迎えている。
たった6室しかない数寄屋建築の座敷間には、高台寺参道の喧噪を忘れるかのような
ゆったりした時間が流れている。
献立、器、しつらえのすべてに自然の情緒を映し出すよう心を尽くしている。
この部屋は掘りごたつ式の席で、これから始まる蟹づくしの至福の時を
ゆったりと過ごせるように迎えてくれた。
床の間には何か意味ありげな掛け軸が。
そして真っ赤に燃えたモミジの生け花が私達を見守っていた。
又、シンプルな照明器具からはこれから運ばれる料理をピンスポで照らす演出の光が差し込んできていた。
ゆったりした和室の一角、奥まった所にある蟹焼きの台。
この1150年の歴史と文化の重みから伝わってくる
京都の洗練と丹後の野趣がこの部屋で融合するのを今かと待っていた。
この焼き台は和久傳の舞台だ。
それではいよいよ解禁開けの蟹焼きコース(11月~3月)の始まり始まり・・・。
ここからは本当の味を伝えられないコメントは野暮なので、なるべく写真を中心にお伝えします。
その素晴らしさ、品のある奥深さを申し訳ございませんが目で味わって下さい。
スワイガニ(松葉ガニ)の雌(メス)ガニの話。
これは地域によって様々な呼び名がある。
兵庫県北部(香住、浜坂・津居山、柴山)地方ではセコ(背子)ガニ、鳥取県もセコガニ、
これが京都府に入るとコッペガニ、更に越前(石川県)ではセイコ(勢子)ガニとか香箱ガニと呼ばれている。
コッペガニの卵は2種類ある。
未成熟の卵で色はオレンジ色で見た目はとろっとしているのが内子。
意外と歯ごたえがあってよく熟成されたチーズに例えられる。
カニ味噌と混ぜて日本酒といっしょにいただくと最高。
もう1つは産卵直前の熟成した卵で外子。
プチプチとした食感でそのまま食べる場合は醤油を少しだけつけて食べると美味しい。
カニと言ったらやはり日本酒。
和久傳には当店が調整した青竹に入った日本酒がある。
おちょこも青竹で、入れやすくする為に青竹徳利の先端に切り口を入れてある。
風情があります。
これが本日供される姿の間人蟹(たいざがに)タグ付きのブランドガニで
タグのカラーによって採れた水揚げ地がわかる。
京都府の間人港は緑。
因みに兵庫県浜坂・津居山港は青、柴山漁港は赤、香住港は緑、島根県は青、
鳥取県は白地に赤、石川県は水色、福井・越前漁港は黄色だ。
京都府の間人港で水揚げされる間人蟹は丹後半島の幻ともいわれている。
これは5隻(和久傳曰く今年は4隻)の小型底曳網漁船しか操業していないことも幻の理由だ。
毎年11月6日に解禁されるが間人蟹は経ヶ岬の沖合い約20~30kmを漁業とし日帰り操業により
鮮度が抜群で甘みが強く素材の良さが光っている。
ふぐの昆布締め。
ご覧になって下さい、ふくの肉厚の厚いこと!
歯触りがすごく、絶品中の絶品です。
焼き始める前にお客の所に間人蟹の足と爪を確認のため見せにくる。
ワインの試飲のようなものか。
間人蟹のすごい所は身の詰まりの大きさ、重さ、キズ、色つや、形の良し悪し、成長の度合いなど
約50種の厳しい基準により選別される。
この事を知るとCPが高いのもある程度納得してしまいそうだ。
カニの殻入れと金の手洗い器。
この2つの器も重厚で大したものだ。
セリとほうれん草の煮浸し。
この写真に京都の文化、京都の雅、京都の風流を感じる。
とても絵になっています。
最初の焼蟹は半生、ミディアムレアだ。
焼き方を2段階にして出してくるとは知りませんでした。
すごいです。
ふくのひれ酒は幾度も飲んだが、蟹酒は記憶の中では初めて。
ふくよりもずっと上品で香り、味が繊細。
そして深い旨さがある。
この間人の甲羅酒焼は、この日出された蟹づくしの中でもチャンピオンだ。
こういうのをカニ料理の王様というのだろう。
ウーン、これはすごいネーとしか言いようがない。
焼き蟹コースもいよいよ後半戦。
今度はステーキでいうとウェルダム。
焼いた蟹の香ばしさが部屋中に漂う。
なんと贅沢な空間にいるのだろう。
次は蒸しカニ。
カニ味噌を絡めてさらに夢の世界へ。
一口のしのぎ蕎麦とその器。
写真をよく見るとひょっとしてこの中にもカニが入っているのかも。
海老芋、下仁田ねぎ(九条ネギではないのが何かうれしい)、かぶに一年わかしたからすみ。
なぜかハタハタ。しかし美しい。
香の物 からすみをサンドした餅 味噌汁
カニ雑炊
デザートにトロトロの柿
栗(?)の練り菓子 栗きんとん
会食の途中、メディアでも有名な当和久傳の大女将、
そして若女将も挨拶にわざわざ来ていただき、さらに席が一層華やいだ。
スミダマンのブログにも過去掲載した
蟹料理 城崎温泉 老舗旅館 西村屋本館(番外編7、2012-2-9付)の松葉ガニや、
越前三国温泉 荒磯亭(番外編86、2015-12-22付)の越前がにの旨さに感動したのを思い出したが、
今回の京都・和久傳の焼き蟹はさらに京都の文化、京都の粋、京都の洗練さが加味され、
一次元違った料理、味となって私達に出していただいた。
ちょっと品に欠けるが今迄に食べた中で、すきやばし次郎(番外編95、2016-2-13付)を抜いて
一番高価な食事となった。