伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

日本のコミュニケーションを診る 遠慮・建前・気疲れ社会

2024-05-06 22:23:47 | 人文・社会科学系
 イタリア人精神科医の著者が日本社会のコミュニケーションの特徴やその背景について論じた本。
 外国人の立場で日本社会・文化の西洋諸国との違いを論じるよくある類いの本です。その手の本は、基本的に著者が外国人であることを基礎として著者が育ってきた西欧社会ではというものの見方を売りにするはずですが、この本では核心をなす日本社会の特徴に関する記述の多くが、誰々の研究によれば…という自分以外の権威をベースに、しかも折々にステレオタイプの2分論に与するものではないがという趣旨のエクスキューズを置きながら、自分もこう思うというような書き方をしています。類書とは違うということを示したいとか、読者への忖度で自分は単純に決めつけるわけではないという姿勢を示したいとかの思惑があるのでしょうけど、私にはただペダンティックな文章が頭に入りにくく、また中途半端な印象が残りました。
 一番最後によりよいコミュニケーションのための五つのモットーとして、①他者に嫌われてもいい、②人に落ち込んでいる姿を見せてもいい、③自分の意見を言ってみよう、④目上の相手でも断っていい、⑤自分のユニークさに自信を持って、自分を苦しませない行動をとってみようを列挙しています(188~191ページ)。他人の研究等に依拠した(あるいは権威を借りた)文化論よりは、精神科医としての著者の経験をベースに日本の患者・若者の生きづらさを考察してそういった提言に結びつけた方がより実りのある説得的な本になったのではないかと、私は感じました。


パントー・フランチェスコ 光文社新書 2023年9月30日発行
コメント
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