伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

四月になれば彼女は

2024-03-24 16:18:09 | 小説
 3歳年上の獣医坂本弥生と都心のタワーマンションの28階に住み、同棲して3年でセックスレス2年の状態で1年後の4月に結婚式を挙げることを決めた精神科医藤代俊の元に、大学3年生だった9年前に別れた元カノ伊予田春のウユニ湖畔からの手紙が届き、学生時代を回想する藤代の1年を描く小説。
 恵まれた境遇にあるがマリッジブルーの青年藤代の視点からのノスタルジーを描いたもので、藤代の生き様・人生観に共感できるかどうかが作品の評価に影響すると思います。私は、春にしても、また藤代の先輩の大島にしても(あるいはその妻にしても)もう少し描き込んで欲しかったなと思いました。私には、藤代よりもはるかに魅力的な人物に思えるので。
 タイトルは、ストレートにサイモン&ガーファンクルの有名な曲から。学生時代の合宿で大島がギターを手に歌っている場面(88ページ)から引いているのですが、他人の有名な作品を自分の作品のタイトルにしてしまえるセンス、私には理解できません(章タイトルとかで使うのはよく見られますし:私もやってますし…違和感ないのですが、作品自体のタイトルにするのは)。冒頭にウユニ湖畔からの手紙、その後もプラハから、アイスランドからの手紙を置き、もういかにも映像化を最初から意識しているような作品を書ける人・境遇だからなんでしょうね。


川村元気 文春文庫 2019年7月10日発行(単行本は2016年11月)
「週刊文春」連載

コメント
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