伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

囚われちゃったお姫様

2008-08-02 03:12:59 | 物語・ファンタジー・SF
 お姫様らしいことが嫌いでハンサムなだけの王子様と結婚させられるのを避けるために家出した王女シモリーンが、ドラゴンの囚われの姫となって魔法使いの陰謀と戦うというファンタジー。
 カバー見返しの紹介や訳者あとがきには、型破りなお姫様とか、「ちょっぴり(?)気が強くて明るく賢いお姫様、ニューヒロイン」なんて紹介されているので、「女の子が楽しく読める読書ガイド」紹介候補と期待して読みました。
 シモリーンは確かに気が強くて明るくて賢く型破りではありますが、自らドラゴンに囚われた上でドラゴンの下ですることといったらもっぱら料理と掃除です。剣術も習っていたのに、剣術で倒すのは鳥1匹だけ(160~161頁)。お城ではお転婆に見えても大半のシーンではむしろおしとやかです。賢いはずなのに家出の時持って出るのはきれいなハンカチ5枚と一番いい冠だけ(26頁)って・・・。能力があるって設定なのに自ら志願してしもべとなって料理や掃除で奉仕するのって、「タッチ」で浅倉南が能力がある女も「たっちゃんのお嫁さんになるのが夢」っていうのと同じ路線。暗い感じがしなくて軽く読めるだけに、こういうのいやだなって思ってしまいます。


原題:DEALING WITH DRAGONS
パトリシア・C・リーデ 訳:田中亜希子
東京創元社 2008年6月25日発行 (原書は1990年)
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もう殺さない ブッダとテロリスト

2008-08-02 03:03:01 | 物語・ファンタジー・SF
 アウトカースト(不可蝕民)に生まれ虐げられて殺人鬼となって多くの罪もない人を殺害し続けたアングリマーラがブッダと出会い、暴力のむなしさを悟り暴力を捨てブッダの弟子となりアヒムサーカ(非暴力の人)と名乗り、改心して修行するという仏典のエピソードを元に再構成した訓話。
 もちろん、アングリマーラが改心したといっても殺害された人の遺族は収まらず、国王はアングリマーラに裁判を行うこととなり、遺族と賢者が呼び集められます。私としては仕事柄この裁判の場面に目が行きます。最初遺族が被害者の非業の死や残された者の悲惨さを語りアングリマーラを極刑に処すことを求めます。アングリマーラは罪を認め反省を語り、賢者が暴力の連鎖では解決しないことや寛容を説き、これに対して律法家(検察官でしょうね)が法秩序の立場から処刑を求め、王は確信が持てない状態になります。ここに夫を殺され幼子とともに残された遺族スジャータが、アングリマーラの犯罪を憎み処刑を求める気持ちと本当に悔い改めた人間を処刑することに意味があるのかという気持ちに悩んだ上で単なる復讐を求めることに身を落としたくない、アングリマーラの例が誰でも救われうるのだという希望の灯となってくれればいいと語り、流れが一気に傾き国王が特赦を与えるに至ります。
 スジャータの思い悩む姿と赦しには心を打たれますが、同時にそれを他の遺族に求めることやスジャータの意見をアングリマーラを許せないと思う多くの遺族に優先していいのかという点には違和感も残ります。


原題:The Buddha and The Terrorist
サティシュ・クマール 訳:加島牧史
バジリコ 2008年6月16日発行 (原書は2004年)
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