子供らは網の上ですべったり、相撲をとったり、ぶらんこをやったり、それはそれはにぎやかです。おまけにある日とんぼが来て今度蜘蛛を虫けら会の相談役にするというみんなの決議をつたえました。
ある日夫婦のくもは、葉のかげにかくれてお茶をのんでいますと、下の方でへらへらした声で歌うものがあります。
「あぁかい手ながのくぅも、
できたむすこは二百疋、
めくそ、はんかけ、蚊のなみだ、
大きいところで稗のつぶ。」
見るとそれは大きな銀色のなめくじでした。
蜘蛛のおかみさんはくやしがって、まるで火がついたように泣きました。
――宮澤賢治「蜘蛛となめくじと狸」