遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

慈しみの女神たち 上・下

2012年02月01日 16時51分53秒 | 読書

  慈しみの女神たち  上・下      ジョナサン・リテル(著)2011年5月発行


  年明け一冊目、意気揚々と本書を開く。
  が、100頁で読み続ける気力が萎えてしまった。
  上巻が500頁で下巻400頁の小説のたった100頁でである。
  就寝前30分が読書タイムの私としては、
  悪夢にうなされそうで、、、。
  内容は、ドイツ第三帝国当時の戦争現場で、ユダヤ人大量虐殺を業務として
  遂行した一人のナチ親衛隊の情報将校員だった通称「マックス」により、
  冷静かつ正確にしかも延々と語り続けられる事実。
  どうにも気分が悪くなる内容に加え、登場する人物の名前が覚えにくく、
  活字がこれまた細かい。。。
  私にとっては三重苦の小説でした。
  
  ユダヤ人大量虐殺「ホロコースト」の凄惨な現場に立合った「マックス」の戦場での
  数々の過酷な情景、不信と疑惑、国防軍と親衛隊との対立、周囲の将兵の反応、
  第三帝国の内部的矛盾・・・「マックス」の回想はひろく長くつづく。
  それが、歴史家も認めるほど史実に忠実で、いかに著者が資料調査に心血を注いだ
  か、が伝わってくる。
  とにかく壮絶な大作だ。

  物語の核となるのは、ユダヤ人たちの辿る想像を超える受苦と受難の道程。
  虐殺の現場で何が起こっていたのか?!
  作戦遂行側の「マックス」の視点から淡々と綴られる文章は、嫌悪感を覚える
  残酷さである。
  「マックス」は音楽を愛し、フランス文学を耽読する人物でありながら
  ナチの正当性を疑うことなく「最終解決」の実現に邁進するのだが、その姿に
  人間のもつ危険性、矛盾、不可思議、、、が漏れなく表されている。
  ナチスドイツの悪夢「ユダヤ人絶滅」作戦現場の状況が克明に描かれると同時に、
  もう一つのテーマが「マックス」個人のドラマ。
  彼の双子の姉に対する絶対愛、こちらはまるでギリシャ悲劇のような内容で、
  第三帝国の瓦解とリンクしていくのが、この小説の妙かもしれない。

  好みではないが、こういう小説が書かれることはいいことなのだとは思う。
  これも人間というものであり、人間のつくった歴史であり、人間の問題なのだろうから。
  
  「わたしは自分が悪魔であるとは思っていない。わたしがやったことについては、
  理由があったし、よいか悪いか、それはわからないが、いずれにせよ人間的な理由
  があった。殺す者は、殺されるも者と同じように人間なのであり、それこそが恐る
  べきことなのだ」

  「ユダヤ人を殺すことによって、わたしたちはわたしたち自身を殺し、わたしたちの
  なかのユダヤ人を殺し、わたしたちのなかにあるわたしたちの抱くユダヤ人について
  の考えに似たものをすべて殺したかったのよ」

  疲れました。
  しばらく人に言葉を失わせる長編小説です。
 
    わがまま母
    
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