今夜も本をまくらに。

山歩きが好き、落語が好き、おいしい物が好き、中島みゆきが好き、
でもやっぱり活字がなければ生きていけない私。

中央駅

2024年02月04日 | 「本」のひきだし

ブクログより




これはホームレスの話なのか、恋愛小説なのか、それともこういう状況を許している社会への糾弾なのか。

舞台はソウルの中央駅、ある夜、男がキャリーケースを引いて駅舎の片隅にやってくる。周りには似たような先住者がそこかしこに寝ている。仲間入りをした男はやがて一人の女と知り合い、行動を共にするようになる。

彼らの日常やら、生活の様子などが描かれていく中で違和感を覚える。
男に関しての情報が一切無い。男の素性、生い立ち、経緯など、話は一人称で進んで行くので、男の名前すら出てこない。
唯一、周りの人たちの言動から男は若いということだけがわかる。

女にしても名前もなく、目鼻立ちもわからず、半ズボンにサンダルを履いていたとだけ記されている。
後に病気で、夫や子供がある身だということは明かされるが理由は明かされない。
男は、他のものより若い、少しでも未来があるという意味合いで、支援センターの人たちや、機関が手を差し伸べても振り払うばかり。自暴自棄にも見えるが、女と出会ってからは、目的ができたかのようにも見える。それが愛なのか、相哀れみの感情なのかうかがい知れないが。

今回の舞台はソウルだが、これが東京の上野駅でも、何の違和感も持たないだろう(柳美里の小説にもあった)
これでもかこれでもかと暗い部分を暴き出す内容に、最後まで希望が見いだせない展開に目をそむけたくなりつつ読んでしまった。
これは私の知らない世界の話だ、と思っている自分が少し嫌だと思いながら。




中央駅 / キム・ヘジン

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