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堆肥の作り方

2021-11-18 04:17:11 | 「ちいさな田んぼのイネづくり」


 子供の頃12月になると落ち葉堆肥を積んだ。堆肥は日本の伝統農業を支えた基本となるものである。江戸時代糞尿が商品になったのは、落ち葉や草と混ぜて、堆肥を作り畑に入れたからである。糞尿も高温で発酵させることで、病原菌や虫は死滅したのだ。

 冬が近づくと、向昌院のすぐ上の金比羅山の落ち葉を斜面全体を掃き下ろしてくる。半日くらいかけて、子供をふくめて一家総動員で横並びになり、掃き降ろしたのだが。その落ち葉の山は木小屋野屋根と同じくらいの高さがあった。一辺が10メートルもある巨大な山になった。

 そのお寺のすぐ上の山はお寺の薪を準備するための山で、クヌギ林を順番に20年ぐらいのサイクルで必要な面積だけ、切ることになっている。クヌギは切れば脇から芽が出てきて、またもとのように育つ。かなり上の方まで林はあった。明るいくぬぎ山だった。子供の頃の話だから、面積はよく分からないが、毎年1反を薪にしたとすれば、20年だと2町歩ぐらいの面積ぐらいになる。

 その2町歩の落ち葉を斜面に沿って下に履き下ろしてくる。最後の当たりはもう子供ではとうてい無理なすさまじい量の落ち葉の量を掃き下ろしていた。そして山のとっつきの畑全体が落ち葉のやまになる。その落ち葉には積み込みながら、下肥をかける。

 下肥は外便所に2つのマスがあり、熟成した2番目の下肥の方をくみ取り、肥桶で担いで、堆肥の山まで運んだ。肩に担ぐときに下手にゆらすものだから、その熟成した下肥がぴちゃんと顔にまでかかり、おつりが来たと大騒ぎだった。何度も行ったり来たりした。熟成のマスは1メートル四方ぐらいあった。それをぜんぶくみ出す。

 落ち葉に混ぜなら山を積み直す。するとすぐに翌日には熱が出る。子供は汚いとも思わずその山に登って怒られたものだ。それだけ作った大きな山の堆肥も何度も一段下に場所を変えながら積み直して春になる。春には石垣の下にまで移動していて、あれっというほど小さくなっている。

 これがその先に続いている野菜畑に入れられることになる。向昌院の当たりの土は石が多くて、作りにくい畑だったのだが、最近見たときには驚くほどよくなっていた。長年のおじいさんやおじさんの努力が、土になっているんだと思った。今はいとこが住職なのだが、田んぼや畑には熱心で、子供の頃のままである。

 ユンボやトラックターがお寺の車庫にはあって、なんと田んぼの会をやっているというので驚いてしまった。思い出せばそのいとこは子供の頃から生き物や植物がやたら好きだった。そして今は蜂蜜ではそれなりの仕事をしているらしい。

 血は争えないと言うよりも、何しろ向昌院の環境が自給自足的生活のお寺なのだ。私もそこで育ったから、今も農業をしていると気が休まるのだろう。いとこも同じなのではないかと思う。おじいさん、おじさん、そしていとこ。まだ未来に続くのだろうか。

 堆肥のことであった。シーラ原田んぼで90㎝立方の堆肥マスを2つ作った。そして、落ち葉と稲わらと米ぬかを混ぜながら、積み上げ、踏み込んだ。そして、翌日に上部の温度を測ってみたら40度あった。たちまちに温度が上がった。

 1週間もすれば全体のかさが減ることだろう。そのうち、左右のどちらかに積み直す。一つに入ってしまうはずだ。何しろ堆肥にして発酵を続けると、落ち葉は燃やすよりさらに量が減ると言われている。発酵の力には驚くべき物がある。堆肥として使えるのは、ほど程の発酵段階の落ち葉だ。

 だから山の木々は何万年という年月、森の循環が続いている。この落ち葉堆肥を田んぼに入れて、田んぼの土をよくしてゆきたい。消耗の激しい亜熱帯の土壌であっても、消耗に負けないだけ堆肥を入れて行けば良くなるに違いない。落ち葉は亜熱帯の森の方が通年生産されているはずだ。山の中で落ち葉の溜まるところを見付けることだ。

 山北で養鶏をやっている頃はそうした山で出来た腐葉土を、大量に鶏小屋に入れていやっていた。鶏がその腐葉土に鶏糞を混ぜてくれて、攪拌してくれる。これを田んぼに入れていた。それで田んぼの土がたちまちに良くなったのだ。

 シーラ原田んぼの堆肥置き場には、各家庭から出る生ゴミを入れたいと思っている。生ゴミの水を切って田んぼまで持ってきて貰う。これを堆肥に加えて行く。攪拌さえすれば、より効果の高い堆肥に代わってゆく。家庭から出る生ゴミは堆肥材料としては最高のものになる。それは人間が食べるものと同じ成分だからだ。

 小田原では20年前ぐらいからダンボールコンポストに取り組んだ。このダンボールコンポストで出来た生ゴミが安全に畑で使えるかの実証実験をした。小松菜を植えて、色々の肥料と競べてみた。生ゴミから出来た堆肥はとてもバランス良く健全に育った。発芽実験でもとても成績が良かった。

 課程から出る生ゴミ堆肥は鶏糞と同じくらいの窒素分があり、肥料としての効果の高い良いものだった。堆肥は発酵が進みすぎると肥料効果は減少してゆく。使う頃合いがある。ダンボールコンポストを良く発酵させるコツは、熱を40度以上に維持することだ。下がってきたら、米ぬかを加えてかき回す。それでもダメなときは天ぷら油の廃油を加える。

 田んぼや畑の堆肥も同じで、温度が下がったら、米ぬかを加えて攪拌してやる。水と空気と米ぬかという養分を攪拌することでまんべんなく混合する。これを繰り返して、植物のセルロース分を分解させ、畑に使う丁度良い腐食にすることが出来る。

 温度は60度位まで上がり、また下がってきたら攪拌という課程を繰り返してゆく。納豆菌が増殖すると温度が60度超えで相当高くなる。落ち葉や草に混ぜてやるものは、鶏糞でも、牛糞でも、下肥でも、米ぬかでも、家庭の生ゴミでも可能である。熱が出ると水分が蒸散してしまうので、適度に水も加えてやる必要がある。

 何度も切り返してやれば堆肥の熟成は早まり、早く使える堆肥になる。来年の春田んぼに入れられるように、頑張って堆肥を作ろうと思う。腐葉土や牛すんの野積みの風化したような肥料も見付けて、田んぼに入れたいと思う。

 今年の目標はイネ作りよりも、田んぼの腐植を増やし、土壌を有機農業が出来るものにすることだ。まだまだ時間がかかるかもしれないが、5年間の長丁場を見据えて頑張るつもりだ。石垣島の田んぼの活動は最後の仕事のつもりだ。


 
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