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「北海道のお米が美味しくなった理由は温暖化ではない」

2021-10-30 04:08:31 | 「ちいさな田んぼのイネづくり」


 麻生自民党副総理は北海道のお米が美味しくなったのは、温暖化の恩恵だと選挙応援演説で、発言した。この発言が温暖化を良い側面もあることだと、まるで主張しているかのように受け止められかねないと言うことで、問題になっている。

 温暖化して良いことだって確かに無いとは言えない。床屋談義では聞かないわけでは無いし、冗談でついそういうことを私だって言わないとはかぎらない。しかし、自民党の副総裁としての麻生氏が、公の場でそんな科学的根拠のない話をしては成らない。

 トランプアメリカ大統領は温暖化が問題だなど言う科学者は、陰謀論者だと言っていた。つまり政治家はあえてこういう物言いをして、人気取りをする。これで嫌な気持ちにさせられる人が居ることが分からないのだ。不思議なのは温暖化のことを応援演説で持ち出せば、北海道の人なら喜んでくれるという感覚である。

 寒い北海道の人にしてみれば、確かに温度が1度上がれば助かることは色々あるだろう。お米が作りやすくなったと言うことも確かにあるだろう。だからこういうことを言えば、喜ばれると思う感覚がずれている。有り難いかもしれないが喜んでは居られないのが、世界情勢である。

 世界的危機が刻々と迫っている中で、北海道にとっては有り難いなど利己的な感覚を、副総理に公言されてしまえば、北海道に暮らす人としてはどのように受け止めろというのだろうか。普通は何か自分たちの利己心を暴かれたようで気分が悪いのではないだろうか。

 北海道でお米が作れるようになった一番の原因は、品種改良である。温暖化よりも大きな展開があったのだ。「ゆめぴりか」と「ななつぼし」は特Aを取り続けている。こうした北海道の稲作研究者の品種改良の努力があってこそのことである。

 北海道が作りやすくなったかもしれないが、日本全国夜の温度が高くなり、良いお米が作れなくなっている。こちらの方も稲作の品種改良が、米所では今必死に行われている。そうしたどりょくをしている人達に対して、感謝の気持ちは無いのだろうか。

 麻生氏は過去にもひどい発言をしている。〇ナチスは選挙で選ばれたのだから、日本も分からないようにやれ。〇日本は単一民族説。〇日本人は民度が高いからコロナ対策は要請だけになる。どれも、そういうことを自慢げに言うその辺のごろつき親父のイメージである。

 科学的にもう一度考えてみると言う冷静な部分が欠落している。すべて強い思い込みが元になっている。今だって温暖化の御陰で北海道米が躍進したと思い込んでいるに違いない。事実を事実として発言して何が問題なのかと。北海道のお米の品種改良の努力を軽んじているのだ。

 一方で沖縄ではあいかわらず、「ひとめぼれ」が作られている。その理由は沖縄では稲作を諦めてしまったからである。当然、品種改良の努力が無いから、沖縄向きのうるち米が日本には存在しないのだ。沖縄県や特に石垣市でのお米を作り続ける意志が不足しているのだ。沖縄には稲の品種改良の努力がない。

 亜熱帯気候で美味しいお米を、多収で生産できているのが台湾である。台湾は本当にすごい国だ。このことも最近知ったことを書いておく。石垣でのイネ作りがとても難しくて、何故台湾では良く取れているのかが疑問だったのだ。台湾ではまだ水牛でイネ作りをしているところが沢山ある。

 台湾に行ったときどこで食べたお米も美味しかった。日本のお米と少しも変わりが無かった。中国はお米がまずかった。食べられなくなるからと、冗談では無く、本当に日本から電気釜とお米を持参して行ったくらいだ。本当にまずかったのだ。

 ところが台湾は美味しいお米だ。日本が植民地化していた頃、台湾を日本の米の生産地にしようと日本の研究者が台湾で蓬莱米という品種を作出して作られていた。その品種は石垣にも戦前から導入され作られていたという。今は探しても無い。今の味覚では耐えられないものだから無くなってしまった。

 その蓬莱米から、台湾では美味しいお米を作出したのだ。しかも反収500キロは普通に越える品種になっている。理由は蓬莱米にインディカ種を交配して亜熱帯気候に適合する品種を作り出したというのだ。何という素晴らしい研究であるだろうか。

 台湾では民間の力が働いているらしい。詳しいことは分からないが、美味しくて多収出来るお米を作りたいという農家の方達の思いが品種改良に繋がり、素晴らしい品種が生まれたと言うことが書かれていた。台湾は本当に素晴らしい国だ。石垣島と気候も同じなのだから、こういう努力を石垣島でもしてゆかなければならないのでは無いだろうか。

 こうしたお米こそ、温暖化で苦しくなってきた九州四国のお米の品種なども、こうしたインディカ種を利用するという発想で品種改良を始めなければならない。ところが、日本ではこうしたイネの種苗研究が急速に狭められているのだ。つまりお金にならない研究は止めろという政府の方針だ。

 北海道には農業で何とかしなければならないという、強い米作りへの意志があったから、美味しい北海道の気候に適合した新品種のお米が作出されたわけだ。当然それだけの開発事業に投資がされている。日本では、「こしひかり」以降の品種を目指し、品種がどこの地域でも革新されてきている。

 小田原で今年始めて「はるみ」を作った。神奈川のJAが作出した品種である。やはり特Aをとったものである。「はるみ」は神奈川県では奨励品種になっている。たぶん栽培が難しいかと思っていたのだが、これが案外に作りやすい品種で、有機農業で畝取りの出来る品種であった。

 神奈川県の品種開発の努力の成果である。コシヒカリよりも倒れにくくて、株ががっちりと育つ。小田原ではこれからは作業分散のために、「サトジマン」と「はるみ」を作るのが良いかと思っている。どちらも有機農業向きのお米と言える。

 沖縄と気候の似ている台湾では美味しいジャポニカ種のうるち米が、多収されている。理由は品種改良の努力である。それがどうもジャポニカ種にインディカ種を交配して、新しい品種を作出しているらしい。この交配はなかなか先端的だ。その結果亜熱帯気候に適合したイネ作りが出来上がっている。
 
 しかも、どうも民間の組織が様々な交配を試みているらしい。こういう所に日本という下り坂の国と、台湾という上ってゆくところの国の違いが現われているのではないだろうか。日本ではひとめぼれが作りにくい品種であるとしても、奨励品種で農協が購入してくれるとなると、大多数の人がそれ以上のことは考えなくなる。

 来年石垣島で作ってみる品種は「とよめき」と言うものにしようかと考えている。これは石垣島の熱研でも成績が良かったらしい。筑波の農研機構で作出された品種と言うことである。まだ、最終決定では無いが種籾の購入はしてみた。
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