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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)オーキシン応答因子による葉の平面性制御

2017-12-09 16:43:26 | 読んだ論文備忘録

Spatial Auxin Signaling Controls Leaf Flattening in Arabidopsis
Guan et al. Current Biology (2017) 27:2940-2950.

doi:10.1016/j.cub.2017.08.042

葉の平面性は光合成の最適化にとって重要である。中国科学院 遺伝・発育生物学研究所Jiao らは、以前に葉のパターン形成にオーキシンの背軸側に偏った分布が関与していることを明らかにしており、今回はシロイヌナズナの葉の発達に関与しているオーキシン応答因子(ARF)の1つであるARF5のMONOPTEROS(MP)に着目して解析を行なった。MP は若い葉原基で発現しており、2番目に若い葉原基P2では明らかに向軸側に偏って発現していた。P3、P4では、MP は中央部、周縁部、向軸部で発現していた。また、葉原基の発達にともなってMP は先端部から基部へと発現部位が拡大していった。シロイヌナズナではMPの他にARF6、ARF7、ARF8、ARF19が転写活性化ARFとして知られているが、これらは若い葉原基では向軸側で発現していた。オーキシンシグナルセンサーDⅡ-Venusを用いた解析から、P2からP4の葉原基では向軸側のオーキシン量が低下していることがわかった、また、pDR5::GFP-ER オーキシンシグナルレポーターを用いた解析において、GFPシグナルは周縁部において検出され、最初は先端部で、その後は基部へと広がっていった。MP の発現部位は、部分的にDR5およびDⅡ-Venusの発現部位と重複していた。葉身の拡大に関与しているWUSCHEL-RELATED HOMEOBOX1WOX1 )およびPRESSED FLOWERPRS )/WOX3 は周縁部で発現しており、DR5の発現部位と重複していた。強いMP 変異を示すarf5-1 変異体は、5日目の芽生えの子葉やロゼット葉が細葉になり、17日後には一部の個体(7.5%)のロゼット葉は針状になった。よって、MP は葉の発達、特に葉の平板化に関与していることが示唆される。針状となった器官ではPRS の発現が検出されず、EARモチーフを付加した融合MPタンパク質を発現させた個体ではWOX1PRS の発現が抑制された。これらのことから、MPはWOX1PRS の発現を促進して葉の平板化をもたらしていると考えられる。恒常的に活性を示すMP⊿を発現させた形質転換体の葉は向軸-背軸の極性が失われることが知られている。この形質転換体の葉は、葉身が拡張しないが厚みがあり、向軸側の表面に小さな葉身状の器官が形成された。また、野生型と比較して、WOX1 は3倍、PRS は10倍ロゼット葉での発現量が増加し、葉原基の向軸側領域でも発現が見られた。よって、MPはWOX1PRS の発現を活性化していると考えられる。WOX1 遺伝子、PRS 遺伝子のプロモーター領域にはオーキシン応答エレメント(AuxRE)が存在しており、MPはこの領域に結合して遺伝子発現を活性化することが判った。また、背軸側で発現しているARF2、ARF3、ARF4は、MPがターゲットとしているWOX1 遺伝子、PRS 遺伝子のプロモーター領域に結合して遺伝子発現を冗長的に抑制していることが判った。以上の結果から、WOX1PRS の発現は葉の周縁部ではMPの直接の作用によって活性化され、背軸側ではARF2、ARF3、ARF4によって直接抑制されており、オーキシン、ARF活性化因子、ARF抑制因子の向軸-背軸での適切な分布が葉身の拡大に貢献していると考えられる。

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