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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)MAPKによる器官サイズの制御

2016-01-12 05:35:54 | 読んだ論文備忘録

OsMAPK6, a mitogen-activated protein kinase, influences rice grain size and biomass production
Lin et al. The Plant Journal (2015) 84:672-681.

doi:10.1111/tpj.13025

中国科学院 遺伝与発育生物学研究所Chen らは、ジャポニカイネZhonghua11の突然変異体dwarf and grain1dsg1 )を単離した。dsg1 変異体は、全ての節間が均一に短くなって矮化し、葯や籾を含めて生殖器官が小型して籾千粒重が減少していた。dgs1 変異体の各器官の細胞の大きさは野生型と同等であることから、この変異体は細胞分裂の異常によって各器官の細胞数が少ないために矮化していると考えられる。dsg1 変異体では細胞周期を正に制御するCYCD4;1 の発現量が減少しており、DGS1 は細胞分裂の制御に関与していることが示唆される。マップベースクローニングの結果、dsg1 変異体ではOs06g0154500 遺伝子の第6エクソンに1塩基欠損があり、フレームシフトにより未成熟終始を起こしていた。DSG1 はMAPKをコードしており、シロイヌナズナのAtMAPK6との類似性が高いことから、OsMAPK6 と命名した。OsMAPK6 は調査した全ての器官で恒常的に発現しており、特に小穂や小穂外皮での発現が強くなっていた。酵母two-hybridアッセイの結果、OsMAPK6はOsMKK4と強い相互作用を示し、OsMKK6とも弱い相互作用を示した。よって、OsMAPKK4がOsMAPK6の上位に位置していると考えられる。dsg1 変異体は、葉が直立し、葉色が濃く、矮性で籾が小さいことからブラシノステロイド(BR)関連の変異体と表現型が類似している。そこで、dsg1 変異体のBR応答性を試験したところ、dsg1 変異体はBR感受性が低下していることがわかった。このことから、OsMAPK6 はBRシグナル伝達に関与しているのではないかと考え、dgs1 変異体のBR関連遺伝子の発現量を調査したところ、OsBAK1OsMPD1OsLIC の発現量が減少し、OsILI1 の発現量が増加していた。したがって、dsg1 変異体はこれらの遺伝子の転写産物量が変化したことによってBR感受性が低下したものと考えられる。dsg1 変異体では内生BR量が減少しており、BRによるフィードバック阻害を受ける遺伝子の発現に異常が見られた。以上の結果から、OsMAPK6はブラシノステロイドのシグナル伝達やホメオスタシスに関与することで細胞分裂を制御して器官の大きさを調節していると考えられる。

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