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論文)腋生分裂組織誘導におけるオーキシンとサイトカイニンの作用

2014-08-02 16:45:52 | 読んだ論文備忘録

The Stem Cell Niche in Leaf Axils Is Established by Auxin and Cytokinin in Arabidopsis
Wang et al.  Plant Cell (2014) 26:2055-2067.

doi:10.1105/tpc.114.123083

オーキシンとサイトカイニンは腋芽の成長に対して拮抗的な制御を行なっており、オーキシンは抑制的に、サイトカイニンは促進的に作用している。しかしながら、腋芽の誘導に対してこれらのホルモンがどのような制御を行なっているかは明らかとなっていない。中国科学院 遺伝学発生生物学研究所Jiao らは、シロイヌナズナにおいて腋生分裂組織(AM)が誘導される領域の細胞はオーキシン含量が低いことを見出した。アグロバクテリウムのオーキシン合成酵素iaaMを葉腋特異的に発現させるとロゼット葉第6葉までのAM形成が抑制された。しかし、茎生葉でのAM形成には変化は見られなかった。したがって、初期に形成されたロゼット葉でAMが正常に誘導されるためには葉腋のオーキシン濃度が低い状態にあることが必要であると考えられる。茎頂分裂組織の形成と維持に関与するSHOOT MERISTEMLESSSTM )遺伝子は、AMが誘導される際に葉腋の中央部の細胞において発現が見られるが、iaaMを葉腋特異的に発現させるとSTM の発現量が低下した。一方、AM形成に関与している LATERAL SUPPRESSORLAS )の発現は、異所的にiaaMを発現させても変化は起こらなかった。したがって、LAS の発現は葉腋のオーキシン最小濃度とは関連していないと考えられる。葉腋でのオーキシン最小濃度は、オーキシン排出キャリアPINFORMED 1(PIN1)によるオーキシン輸送によって形成されていると考えられる。pin1 変異体では葉腋でのオーキシン濃度の低下が見られず、AMの誘導がしばしば損なわれた。したがって、PIN1を介したオーキシン排出は葉腋でのオーキシン最小濃度形成に関与し、AM形成に影響を及ぼしていることが示唆される。次に、AMの誘導過程でのサイトカイニンシグナルを合成レポーターのpTCS:GFP-ER を用いて可視化したところ、葉の発達過程の間に一過的に葉腋でサイトカイニンシグナルが強まることがわかった。この葉腋のでのサイトカイニンパルスはオーキシン最小濃度形成の後に起こり、iaaMを葉腋特異的に発現させるとサイトカイニンシグナルは見られなくなった。よって、葉腋でのサイトカイニンパルスはオーキシン最小濃度に依存していると考えられる。AMの誘導前から誘導時にかけて葉腋においてサイトカイニン受容体をコードするARABIDOPSIS HISTIDINE KINASE 4AHK4 )の強い発現が見られることから、サイトカイニンの受容とシグナルの両者が腋芽出現前の葉腋において活性化されていると考えられる。サイトカイニン受容体の変異体やサイトカイニンシグナル伝達に関与しているB-タイプARABIDOPSIS RESPONSE REGULATOR(ARR-B)の変異体ではAMの誘導が野生型よりも低下していた。また、arr 変異体の葉腋ではSTM の発現量が低下していた。一方、arr 変異体においてPIN1によるオーキシン排出に変化は見られなかった。シロイヌナズナのAM誘導を制御しているREGULATOR OF AXILLARY MERISTEMSRAX )遺伝子の変異体はAMの数が減少しているが、葉腋にサイトカイニンを添加したり葉腋特異的にサイトカイニン合成酵素遺伝子を発現させることによってAMの誘導が回復した。したがって、RAX転写因子はサイトカイニン生合成もしくはサイトカイニンシグナル伝達を介してAMの誘導に関与していると考えられる。以上の結果から、腋生分裂組織の誘導には、葉の発達過程初期に葉腋においてPIN1によって形成されるオーキシン最小濃度とその後のサイトカイニンシグナルパルスが必要であると考えられる。

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