非国民通信

ノーモア・コイズミ

仕事とは関係がないところで

2010-11-02 23:00:01 | ニュース

顔不採用も…就活地獄の都市伝説「美人は有利」ってホント?(産経新聞)

 就活は顔が命? 大手IT企業の女子内定者の顔写真が先日、ネットに流れ、その美人ぶりが話題になったが、就活にまつわる「都市伝説」でも「顔採用は存在する」は1位に輝いている。それどころか、「顔で不採用」の方が実態を反映しているという指摘もあるのだ。“就活女子”は、容姿も能力と割り切らなければならないのか。

 10~60代の男女を対象に「思わず信じてしまう就職活動の都市伝説」を調査したのは、ポータルサイト「goo」を運営するNTTレゾナント。

 調査結果は別表のとおりで、1位は「顔採用-」。信じたくはないが、キャビンアテンダントや受付嬢の整った容姿をみると、全否定はできそうにない。それどころか、就職先として人気が高い旅行会社の採用経験者もこう明かす。

 「顔採用とはいいませんが、男女問わず『顔不採用』はあるかもしれません。法人営業や店頭の接客で客観的に見て明らかに容姿が劣る人は、第一印象で大きなビハインドを背負います。もちろん、それを上回る個性や能力があれば問題はないのですが、結果として、内定が少なくなるのは事実です」

 太っている学生も「自己管理ができない」との理由で、評価が大きく下がるという。

 まぁ容姿に秀でている人だって外見を磨くべく相応の努力を積み重ねてきたはずですし、持って生まれた才能の差が埋められないというのなら学力や運動能力だって似たようなものです。そういった面では容姿の美醜によって選別することを一概に否定はしません。ただそれなら、「弊社は見た目が綺麗な人を求めています」「外見で勝負する仕事です」「可愛い子を待ってます!」とあらかじめ明記しておくのがフェアだと思います。

 顔での選別に傾きがちな要因の一つとして、日本は過剰に「接客」が意識されているところがありそうです。もう随分と昔のことになりますが、私がある進学塾の講師に応募したとき「ウチは接客業ですから」と身だしなみについて口うるさく言われたのを覚えています。勉強を教えることもさることながら、まず第一に「顧客」である生徒や親へ好印象を与えられるよう塾側もあれこれ気を使わねばならないのですね。その辺はIT系や営業でも同様、ビジネスの話ができるかどうかよりも、行きずりの「お客様」に好印象を与えられるかどうかに重きを置いてはいるフシがありそうです。「ちょっと取っつきにくいけれど仕事はできる」人より「感じがよい」人の方が日本では採用されやすいのではないでしょうか。

低信頼社会に広がる「タダ乗り」という疑心暗鬼
米国人と比べて他人を信用しない日本人?(DIAMOND online)

 よく外国人が不思議に思う日本のビジネス慣習に、「名刺交換会」というのがある。「一度お目にかかって、名刺交換だけでも」「今後とも、情報交換などさせていただければ」というように、外国人から見ると「それはどうでもいいだろ。早くビジネスの要件を言えよ」とツッコミたくなるようなことを、日本人はお互いに行なっている。

 外国人からすれば「早くビジネスの要件を言えよ」ということで「仕事ができる相手かどうか」が問われるのに対し、まず名刺の交換からなどと余計なステップを踏みたがる日本では「第一印象の善し悪し」が問われる、ゆえに選考が外見重視になりがちなところもあるものと推測されます。それに加えてもう一つ、頭の悪い研修屋に吹き込まれたことを真に受けている人が多いのではないでしょうか? 「人は見た目が9割w」みたいなコンサルタントの根拠なき妄言を現実と混同して、なおさら見た目重視の選考に走っている人事担当者も少なくないような気がします。何ら実証的な裏付けのないデマに振り回されることは会社にも損害を与える行為なのですが、研修屋や経済誌の言うことには疑問を持たないのが日本の企業文化というものですから。

 ここでは「都市伝説」と留保を付けられていますが、果たしてどこまでが「都市伝説」で済まされるものなのでしょうか。むしろ「ほぼ事実」といった方が近いような気がしてなりません。とりわけ昨今では勉強を捨てて就職活動に専念する人や1人で100社以上に応募する人も多い、中には留年してまで就職活動を続けるベテランも少なくない、いわば就活のプロ、就職活動経験の豊富な人が急速に増えているわけです。そうした人々の感覚は、少なからず実態を正確に捉えているところがあるように思います。

 そしてこの豊富な就職活動経験から導かれた「都市伝説」に共通するのは、仕事で必要な能力とは直接の関係がないポイントで選別されていることです。例えば5番目の「証明写真がスピード写真だと選考に落ちる」とか、この辺は私も就職支援セミナーの講師から聞かされたくらいですから、結構な企業で選考基準の一つに含まれているのでしょう。しかし、採用担当者が履歴書の写真を凝視してプロが撮った写真かスピード写真かを判別するシーンを想像してください。他に見るべきところがあるだろうとは思いませんか?

 もっとも、仕事とは関係のない能力や資質を重視するのも日本の企業風土と言えます。自衛隊に体験入隊させたり素手素足でトイレ掃除させたりと、研修と称して仕事とは無関係なことを強要するのが日本の慣習です。ビジネスの能力よりも従順な社畜としての資質を問うてこそ日本企業、そういう面では選考の基準は不合理なほど好ましいのかも知れません。どれほど不合理な要求であっても会社の求めとあらばそれに従う、そういう姿勢を示せるかどうかが就活では問われているようですから。

 その結果として当然ながら、日本「以外」では通用しない人しか育たなくなるわけです。ビジネスの能力ではなく、会社が求める日本特有の資質を満たした人だけが機会を与えられる、それに加えて昨今の就職難で状況はエスカレート、ますますもって「就職するためのスキル」にばかり秀でた人が増えているのではないでしょうか。受験英語では国際社会に通用しないみたいなことも言われます。所詮は入試に受かるための英語であって、実際に外の世界で使われている英語からはかけ離れていると言われてきたわけです。では昨今の求職者に求められているのは何なのか。それこそまさしく受験英語ならぬ「就職スキル」です。仕事に使えるスキルではなく、あくまで採用されるためのスキル、それにばかり秀でた人を増やしているのではないでしょうか。生産性がどうこうとか、あるいは国際的に通用する人材がどうこうというのなら、まず「仕事とは関係のない」基準に沿った評価をやめる必要があるはずです。



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8 コメント

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Unknown (元大阪府民からの伝言)
2010-11-02 23:46:03
日本社会にそこまで容姿を重んじる風潮があるのなら、国としてもそれに対応すべく何かをしなくては。
いっそのこと、
「整形手術を健康保険の適用範囲とする」
という法律を制定すればよろしいかと。
国民にどんどん整形してもらって、接客向きの顔になってもらえばいいということです。
もちろん、保険に充てる費用は、採用に容姿を重視する企業の全額負担ということで。
ついでに (最下層公務員)
2010-11-03 01:54:03
資生堂とカネボウからリクルートコスメをメークアップのプロと一緒に現物支給させましょう!
面接の際、整形の事を口走った面接官はパワハラで一億ぐらいの損害賠償とか。
辞める必要より (介護員)
2010-11-03 02:52:45
辞めさせる法律を!フランス革命みたいな事が起きて、国民議会が作られないと、無理かもですがね。
介護も容姿端麗なんか関係してないが。このまま雑用では、生きていけないから、お願いします。なんと、あなたはコミュニケーション能力が…モラハラをパワハラで、抵抗した自分が悪いんですがね!会議や上司看護死長の前やらでは、言葉上手い具合に発言しかし患者の前では、おむつ替えしながら、主語オンパレード、モラハラを平気でする物が、スキルアップの機会や、研修に、容姿と関係ないが介護も、若者以外は、雑用力仕事です。から。適性はね、若者と女性と上手くやって行く必要があるらしい。
関係ないコメントなら、ごめんなさい。
外見による印象は、残念ながらかなり深刻な差別をひきおこしえる気がします。 (貝枝五郎)
2010-11-03 10:12:13
「ユニークフェイス」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B9

という団体もあります様に、容姿の問題は相当に深刻な気もします。
いや、ここに来ている人には言わずもがなかもしれませんが…
Unknown (yazakikumi)
2010-11-03 13:28:38
「ムダの削減」が大好きな国民性のはずなんですけどねぇ。
本当に無駄なことに対し「これってムダですよね」と指摘しようものなら、彼は居場所を失うわけですから。
これでは生産性の低さも納得というものです。
Unknown (非国民通信管理人)
2010-11-03 14:19:22
>元大阪府民からの伝言さん

 就職のために整形手術を受ける、なんて話は昔は冗談にしか聞こえなかったものですが、今となっては珍しくもないことのように思えてきますね。機械で接客向けの笑顔を測定している会社だってあるご時世ですから、顔を作る、整形することも当然視されてゆくでしょうし。

>最下層公務員さん

 下手をすると大まじめに、大学で就職のためのメイク講座や整形案内が行われても不思議ではないですからね。化粧品業界や服飾業界が就職ビジネスの一環を担う日も遠くなさそうです。

>介護員さん

 フランスみたいに働く立場からのデモが起きるような社会であれば、少しは違った結果になっていたかも知れませんね。「働かせる」側の言い分だけが通用する有様が変わりませんと……

>貝枝五郎さん

 ただ本文でも書きましたように、容姿「以外」の選別もまた差別的であり、多くの人にとって解決不可能な壁になっていると思います。外見による選別がダメで他の基準による選別は可というのではなく、それが業務上で不可避な基準なのかどうか、という軸で見るべきではないでしょうか。

>yazakikumiさん

 一見「ムダ削減」が大好きに見えて、その実は何が本当にムダなのかを理解できていないことが多いですからね。無駄を省こうとするよりも、単に気に入らないものを絞り上げてやろうとしてきた、その結果が今に至るのでしょう。
Unknown (シトラス)
2010-11-07 22:57:54
自然界においても角や羽などのセックスアピールが肥大化して絶滅した生物がいるように、選ばれやすいものたちが最終的に生き残ると言うことでしょうね。
また、「恋愛において顔は予選である。なぜならそこで勝てなければ次の段階に進めないからだ」という格言があります。
そう考えると就職活動を恋愛にたとえるアナロジーも、経験者の実感から生み出されたといえそうです。
Unknown (非国民通信管理人)
2010-11-07 23:36:25
>シトラスさん

 生存能力ではなくセックスアピールに優れた個体が子孫を残すように、仕事の能力ではなく就職能力に秀でた人ばかりが採用される、その結果として就職能力ばかりが肥大化して国際的に通用する人が育たなくなるわけですね。

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