【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

優勝者への質問

2018-09-29 06:51:34 | Weblog

 たとえばプロテニスの錦織選手が全英とか全米とかのグランドスラムのどれかの大会に優勝したとして、そのときの優勝インタビューでマスコミの人たちは相手を子供扱いしたような「日本に帰ったら何が食べたいですか?」とか聞いて全世界に配信するのでしょうか?
 するとしたら、その質問の目的は?
 しないとしたら、大坂選手にして錦織選手にしない理由は?

【ただいま読書中】『応天の門(8)』灰原薬 作、新潮社、2017年、580円(税別)

 貴族同士の暗闘だの命のやり取りだの、最近はちょっと重くて暗い話題が続いていましたが、本巻では初心に返ったように「謎解き」となります。都に頻発する盗人の手口についてとか、大学寮での不審火とか。謎解きは明快です。
 ただし、どちらも菅原道真少年の「本性」に迫るエピソードでもあり、道真自身にとっては貴族の権力闘争よりももっと重くて暗い話になっているかもしれません。「自分がいかなる人間か」について「自認」と「他者からの認識」に大きなギャップがあることを道真は続けて突きつけられ、さらに「自分がなぜ学問をするのか」についてもきちんと向き合うことを道真は強いられることになるのです。
 これは重い。
 以前の道真だったら「こんなときには、馬鹿の方が気楽に生きられる」とでも言うでしょう。ただ、少年は成長をしています。「それ」が幸せかどうかわからなくなっています。「馬鹿の幸せ」もまた多くのものを犠牲にした上に成り立っているのですから。