アメリカで銃は「自衛のため」に保持している人が多いそうです。ところで「意図」はともかくとして、その「実際」はどうなんでしょう? 実際に「自衛」のために銃器が使用されている数と、そうではない(犯罪や事故)で使用されている数と、どちらが多いのかな?
【ただいま読書中】『0番目の患者 ──逆説の医学史』リュック・ペリノ 著、 広野和美・金丸啓子 訳、 柏書房、2020年、2000円(税別)
医学史は「(成功したり失敗した)医師の業績の歴史」です。しかし著者は「医学の主人公は患者」という観点から医学史を描こうとしました。
感染症の世界では「ゼロ号患者」という言葉が使われます。パンデミックが起きる前に遡っての調査で見つかった最初の患者のことですが、著者は「患者ではない場合もある(=無症候のキャリア)」ことから「患者」の場合には「第一号患者」と呼ぶことを提案しています。さらに著者は感染症ではない場合でも「ゼロ号患者」に相当する存在(公式の歴史からは抹消された人たち)がいることに着目し、医学の様々な分野から「ゼロ号患者」を集めてきました。
全身麻酔、ヒステリー、無症候キャリア、などバラエティーに富んだ例が次々登場します。「吐き気を催す事件」の章で扱われているのは、サリドマイドです。製薬会社の「吐き気を催す対応(の数々)」を読んでいて私が想起したのは、日本の水俣病でした。こちらでは、企業だけではなくて政府までもが「吐き気を催す対応(の数々)」をしていましたから。著者が水俣病のことを詳しく知っていたら、本書にはもう一章増えていたかもしれません。
「正しい診断」は医者の、もとい、優れた医者の技です。しかし「治療」は実は医者の独占事項ではありません。診断ができない人の集団が、経験的に正しい「治療」を行ってきたことは世界中で見られます。「新しい病気を明らかにする」のは、医者とは限りません。患者がそれを明らかにする場合もあるのです。それもあって本書では「患者」が「医学史」の中心に据えられました。「医学」や「医療」は医者や製薬企業のためのものではなくて「患者のためのもの」のはずですから。