本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

東京流れ者

2019-12-14 11:24:33 | Weblog
■本
117 僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう/山中 伸弥、羽生 善治、是枝 裕和、山極 壽一、永田 和宏
118 減速して自由に生きる─ダウンシフターズ/高坂勝
119 人生はZOO(ずー)っと楽しい!水野 敬也、長沼 直樹

117 京都産業大学の学生さん向けに企画された講演の書籍化です。「あんな偉い人でも、なんだ自分と同じじゃないかということを感じとって欲しい」という企画趣旨の通り、角界の第一人者の方々も、そこに至るまでいろいろと試行錯誤をし、挫折を乗り越えて今の境地にたどり着かれたことがよくわかります。みなさんに共通しているのは、結局、自分の好きなことに取り組んでらっしゃたからこそ、苦労を乗り越えて続けることができた(もしくは、苦労を苦労として感じなかった)いうことで、改めてその大切さが実感できます。逆に言うと、大学在学中もしくはその卒業後数年以内に、「好きなこと」に出会えるかが、その後の人生の充実度に大きく関わってくると思いますので、大学にはそのための出会いの場をいかに多く設けられるかが、今後問われる気もしました。

118 大手小売業に勤められていた筆者が、30歳でその仕事内容や時間の使い方に疑問を感じて退職し、必要最低限の収入を得るためだけに働く小さなバーを経営し、さらにその自由になった時間で社会起業家としても活躍するようになった経緯をまとめられた本です。タイトル通り、成長一辺倒のグローバル競争と真逆のダウンシフトした生活(ダウンシフターズ)を提唱する本ですが、ご自身の経験から、その具体的な方法まで書かれている点が参考になります。単なるノウハウだけでなく、ダウンシフターズとしてうまくいかない人の共通点として、「表面的な上昇志向が強いこと」、「大量消費生活を変えていないこと」、「好きなことを仕事にしていないこと」を挙げられるなど、意識変革とセットで語られているところが興味深いです。結局は、自分の好きなことを仕事にして、周囲の人々と繋がりながら生きていくことが、人生の満足度向上に役立つ、といういつもの結論になるのですが、その自分の好きな仕事や人と、どのように出会い、ストレスなく続けて行くかが多くの人の課題だと思います。結局は、開かれた姿勢で、その機会を求め続けるしかないのだと最近よく感じています。

119 かわいい動物の写真と偉人のエピソードや名言を組み合わせた、「夢をかなえるゾウ」の水野敬也さんによる自己啓発本第三弾です。気軽に読めて、それなりにテンションも上がるので、ネット書籍で値下げされているとつい買ってしまいます。お手軽な分だけ、そのテンションの持続時間は短いですが、落ち込んだ時に応急処置的に好きなページを眺めてみるのもよいかもしれません。今回は、強引に嫁入りさせられた北条政子がその夜、20kmの山道を走り抜け、頼朝と落ち合ったというエピソードが印象に残りました。権力目当てではなくて、意外と純愛だったんですね。

 
■映画 
116 東京流れ者/監督 鈴木 清順
117 羊の木/監督 吉田 大八
118 劇場版 コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-/監督 西浦 正記
119 アイリッシュマン/監督 マーティン・スコセッシ

116 ミュージカル的に登場人物が突然歌い出すところや、現実離れした色彩や構成の背景など、日本映画の既成概念を打ち破る、ひたすら自由な演出に圧倒されました。観終わって、しばらく呆然としました。作家性の強い素晴らしい作品だと思います。それでいて、ストーリーは契りと裏切りが渦巻く、典型的なやくざもの。その演出とストーリーとのギャップに、くらくらしました。前衛性が難解さに陥っておらず、観ていてひたすら楽しく、ワクワクするところも大好きです。鈴木清順監督作品は、取っつきにくいと勝手に思っていて初めて観ましたが、他の作品も追っかけていきたいと思います。

117 原作漫画を先輩が絶賛していましたので、まず、映画化作品を観ました。人口減に悩む地方都市が、市民に知らせず元受刑者を受け入れて社会復帰に協力するが、その秘密が次第に漏れ、役所や市民に不信感が生まれる一方で、元受刑者自身もそれぞれの背景から暴走し始める、という設定がよくできていると思います。人間の醜く身勝手なところだけでなく、それでも他人を信じることのできる気高さも、バランスよく描かれている点に共感しました。松田龍平さんや優香さんといった元受刑者を演じた役者さんが、みなさんほどよい怪演をされていて、主人公を演じた錦戸亮さんの純朴な人のよさとの対比もはまっていました。

118 テレビドラマシリーズは観たことがなかったのですが、高視聴率でかつ映画版も大ヒットしたということで観ました。これまでのヒットドラマの良いところを全て凝縮したような王道の作品です。キャストもとにかく豪華で、背景を知らなくても、キャラクターが立っているので、その識別がすぐにできました。主人公を演じた、山下智久さんの無表情な演技には最後までなじめませんでしたが(ちなみに、山下智久さん自身は好きな役者さんです)、これだけ豪華キャストを集めながら、安易な恋愛ドラマにしていない点とお亡くなりになった児玉清さんへの敬意に溢れている点がよかったです。

119 これから本格化するアメリカ映画賞レースでの前評判が高いので観ました。ネットフリックスの作品ということですが、3時間半も家で観る自信がなかったので限定公開されている映画館に行きました。途中トイレに行く人が続出したり、長い作品の後の長いエンドロールで、苛立った隣の席の人たちが外に出るときに小競り合いを始めたりと、劇場で観ることの弊害の方が出てしましましたが、マーティン・スコセッシ監督のやり切った感は十分に伝わってきました。当然のことですが、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、3人の演技合戦は見応えがあります。ただ、演技に焦点を当てるあまり、バストショット中心の映像は若干単調だった気がします。それでも、最後までさほど飽きさせずに惹きつけ続けるところは監督や役者の力技ですが、鈴木清順監督とまでは言わないまでも、もう少し演出上の工夫があってもよかったのではと思いました。でも、これが円熟味ということで、固まった構造の中での技量の高さを賞賛すべき作品なのかもしれません。
コメント
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