☆遅ればせながら観てきた。
ああ、確かに、公開時期が前だったこの作品の後に『カムイ外伝』を観たら、比較し、こちらに軍配を挙げざるを得ないわな。
『TAJOMARU』は、『カムイ外伝』の50倍は面白かった。
観て良かった。
私は、危うく、この傑作を見逃すところだったんだなあ、危ない、危ない^^;
◇
原作は芥川龍之介の『藪の中』で、それは既に、黒澤が『羅生門』として名作を作っているが、『TAJOMARU』を作った中野裕之監督は、その奇妙な知的興奮そのままに、内容を現代的にパワーアップし、蘇らせてくれている。
私はこのような話が大好きで、二時間半夢中であった。
全く先の読めないストーリーで、ジェットコースター的にこちらを瞬く間にグイグイと引っ張ってくれた。
非常に感服した。
冒頭から、美少女・美少年たちが出てきて、桜の情景ともども、これは美しい作品だなあと感心した。
そして、幼少時の彼らは、将来、主人公の兄・信綱が担うだろう管領職ゴッコに興じる。
一段落着くと、役割を変えて、また楽しむのだ。
この役名(名前)を変えて、ゴッコを展開するのは、この物語の肝であり、
阿古姫は、そのゴッコの最中も、好意を持っている主人公・直光(小栗旬)の近くに寄り添いたがり、
素性が知れずに召抱えられた少年・桜丸は、管領職役に興味深々なのだ。
ここに、その後の展開の雛形がある。
見事なプロローグである。
◇
詳しくは記さないが、その後、将軍の稚戯により、管領職を巡って、主人公兄弟に諍いが起こる。
そこに、充たされぬ桜丸が謀略を巡らし、阿古姫と添い遂げるだけで充分の直光は二人で都落ちをする。
しかし、山中で、暴虐の盗賊・多襄丸(松方弘樹の演技が実にいい!)に襲われる。
それまでも、直光は絶望的な状況にいるが、あくまでも客観的な状況でである。
ここからは、直光、主観的にも追い詰められていく。
阿古姫の豹変しての裏切りは、女にありがちだが、私などは、直光に同調する端緒となった。
小栗旬の演技はやや単調だが、直光の直面した絶望の数々を考えると、素晴らしい熱演と言える。
阿古姫役の柴本幸も、全篇を見終えると分かるが、実にいい表情を表現している。
好みではないが、彼女の裏切りは、私の胸を締め付けた。
◇
全てを失った直光は、死んだ多襄丸の名を受け継ぎ、知り合った盗賊仲間のリーダーとなって、絶望を抱きながらも、刹那の気晴らしを生きるのだった。
盗賊仲間は、ちょっとヴィジュアル系っぽくて、全然、時代考証とあっていないのだが、その性格付けが見事で、リアリティが厳然と存在している。
実に楽しい気分にさせてくれる。
だが、都での異変の話を聞いてしまった直光は、気になって馬を走らせるのだった。
そこには、信綱の急死の後、直光を名乗った桜丸がいた・・・。
◇
人物の全てが、本当の名前を偽り、本心を隠し、直前の行為を翻した言動を発する。
『TAJOMARU』と言うタイトルは、伊達じゃない。
あえてローマ字表記しているのも意味がある。
「多襄丸」は「多情丸」でもあるのだ。
情が多い、深き故に、多くの絶望を直光は受け続けるのだ。
◇
私は、この作品がクールな損得勘定でなく、愛を貫き通した「多襄丸」の物語として終わったことに拍手を送りたい。
傑作であった^^v
(2009/10/04)
ああ、確かに、公開時期が前だったこの作品の後に『カムイ外伝』を観たら、比較し、こちらに軍配を挙げざるを得ないわな。
『TAJOMARU』は、『カムイ外伝』の50倍は面白かった。
観て良かった。
私は、危うく、この傑作を見逃すところだったんだなあ、危ない、危ない^^;
◇
原作は芥川龍之介の『藪の中』で、それは既に、黒澤が『羅生門』として名作を作っているが、『TAJOMARU』を作った中野裕之監督は、その奇妙な知的興奮そのままに、内容を現代的にパワーアップし、蘇らせてくれている。
私はこのような話が大好きで、二時間半夢中であった。
全く先の読めないストーリーで、ジェットコースター的にこちらを瞬く間にグイグイと引っ張ってくれた。
非常に感服した。
冒頭から、美少女・美少年たちが出てきて、桜の情景ともども、これは美しい作品だなあと感心した。
そして、幼少時の彼らは、将来、主人公の兄・信綱が担うだろう管領職ゴッコに興じる。
一段落着くと、役割を変えて、また楽しむのだ。
この役名(名前)を変えて、ゴッコを展開するのは、この物語の肝であり、
阿古姫は、そのゴッコの最中も、好意を持っている主人公・直光(小栗旬)の近くに寄り添いたがり、
素性が知れずに召抱えられた少年・桜丸は、管領職役に興味深々なのだ。
ここに、その後の展開の雛形がある。
見事なプロローグである。
◇
詳しくは記さないが、その後、将軍の稚戯により、管領職を巡って、主人公兄弟に諍いが起こる。
そこに、充たされぬ桜丸が謀略を巡らし、阿古姫と添い遂げるだけで充分の直光は二人で都落ちをする。
しかし、山中で、暴虐の盗賊・多襄丸(松方弘樹の演技が実にいい!)に襲われる。
それまでも、直光は絶望的な状況にいるが、あくまでも客観的な状況でである。
ここからは、直光、主観的にも追い詰められていく。
阿古姫の豹変しての裏切りは、女にありがちだが、私などは、直光に同調する端緒となった。
小栗旬の演技はやや単調だが、直光の直面した絶望の数々を考えると、素晴らしい熱演と言える。
阿古姫役の柴本幸も、全篇を見終えると分かるが、実にいい表情を表現している。
好みではないが、彼女の裏切りは、私の胸を締め付けた。
◇
全てを失った直光は、死んだ多襄丸の名を受け継ぎ、知り合った盗賊仲間のリーダーとなって、絶望を抱きながらも、刹那の気晴らしを生きるのだった。
盗賊仲間は、ちょっとヴィジュアル系っぽくて、全然、時代考証とあっていないのだが、その性格付けが見事で、リアリティが厳然と存在している。
実に楽しい気分にさせてくれる。
だが、都での異変の話を聞いてしまった直光は、気になって馬を走らせるのだった。
そこには、信綱の急死の後、直光を名乗った桜丸がいた・・・。
◇
人物の全てが、本当の名前を偽り、本心を隠し、直前の行為を翻した言動を発する。
『TAJOMARU』と言うタイトルは、伊達じゃない。
あえてローマ字表記しているのも意味がある。
「多襄丸」は「多情丸」でもあるのだ。
情が多い、深き故に、多くの絶望を直光は受け続けるのだ。
◇
私は、この作品がクールな損得勘定でなく、愛を貫き通した「多襄丸」の物語として終わったことに拍手を送りたい。
傑作であった^^v
(2009/10/04)
松方弘樹とショーケンの演技がまた好きなんですよ、こういうの私。観ていて堪らないものがあります。もはや最初からポップな新解釈「藪の中」を基本に据えているんで、「羅生門」だとか原作と比較することはナンセンスでしょう。いや素晴らしかったです。^^
>>ポップな新解釈「藪の中」
かような語り口でも、ドラマ上のリアリティは存在できるという素晴らしい典型といえますね。
私は未見ですが、『蟹工船』もこのラインを狙って自爆したような気がします。
松方弘樹を大画面で見たのは『江戸城大乱』以来のような気がします^^
もっとガンガン出ればいいのに。
ショーケンは、観ていた時は分からなかったです^^
権力者の横暴を印象付けるいいセリフを残していましたね。
近藤正臣も頑張っていました^^