尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

それで岸田内閣は結局どうなるのかーやはり9月に辞職か?

2024年03月13日 22時33分58秒 | 政治
 1月末の安倍派裏金問題の「法的決着」以後は、政局について書いてない。昨年来何度も書いてきたことの続きだから、一回完結の記事として「岸田内閣の行方」に絞って考えてみたい。まず確認だが、4月28日に(今のところ)衆議院3選挙区の補欠選挙が行われる。これは与党に厳しい結果が予測されているが、どうせならここで一緒に解散してしまうという想定も可能だった。長崎4区などは解散すれば無くなってしまうので、勝敗カウントから外れる。自民党が減らすとしても、野党の選挙協力がない時点で「奇襲」すれば、「自公で過半数」は可能じゃないか。

 しかし、この予測は今のところほぼ考えられないと思う。年末時点から変わった点が二つある。一つは昨年末に安倍派二階派に強制捜査が行われ、自民党内ではこの2派閥の問題と思われた。ところが岸田派事務総長も略式起訴されたことである。もう一つは、元日に能登半島地震が起きた。大規模断層地震で、能登半島西部では大きな隆起が見られた。その結果、能登半島の被害は想定以上に大きく、特に水道の復旧が大幅に遅れている。住民の多くは二次避難を続けていて、この段階で解散総選挙を行うことは「被災者無視」だという非難を避けられない。

 では、その地震災害要因はいつまで続くのか。秋以降、来年になれば、一応総選挙は可能だろう。今の段階での予測では、「6月解散、7月選挙」も出来なくはないのではないか。避難者は残っているだろうが、それを言えば原発事故被災による避難者もまだ多いわけである。通常国会会期末に野党は当然内閣不信任案を出すだろう。それをきっかけに、岸田首相が「解散・総選挙に打って出る」と言えば、法政上誰も止められない。内閣支持率が落ちているので、野党側は岸田首相での選挙を望んでいる。自民党が減るのは間違いないんだから、自民党内は「いかにして首相の暴挙を止めるか」に躍起となる。

 さて、10日のBSテレ東の番組で公明党の石井幹事長が興味深い発言を行った。「公明党の石井幹事長は、次の衆院選の時期について、今年9月に行われる予定の自民党総裁選後の「可能性が高い」との見方を示しました。石井幹事長は民放のBS番組で「自民党の総裁選で選ばれた総裁は非常に支持率が高くなる」と指摘。秋に予定されている総裁選の後に次の衆院選が行われる可能性が高いとの認識を示しました。」これは注意深く、岸田再選なしとは言ってないが、事実上は岸田後の新総裁で選挙をやりたいということだ。連立与党とはいえ、他党の幹部が「You're Fired! = おまえはクビだ!」(トランプの決めぜりふ)を言っても良いのか。
(石井発言)
 しかし、これは自民党内からは言えないから、公明党が代弁していると考えた方が良いだろう。小選挙区で何とか勝てる人は良いけれど、このままでは比例区で復活するのが難しいのは目に見えている。何とか違う首相のもとで選挙に臨みたい。それが自公議員のホンネだろう。だが誰が後継首相になれば良いのか。世論調査では石破茂元幹事長への期待度が突出して高いが、「石破だけにはしたくない」で大方の自民議員はまとまるはずだ。旧「安倍派」から出すわけにはいかず、茂木幹事長にも政治資金疑惑がある。およそ派閥の長である人が皆総裁選に出にくいという、かつてのリクルート事件(1989年)の時みたいな状況になっている。

 では肝心の岸田首相はどう思っているのか。なかなか動かない自民党の中で、自ら首相として初めて政治倫理委審査会に出席した。しかし、かつての小泉首相のように「自民党をぶっ壊す」などとは言わない。小泉郵政改革は、多くの離党者を出した。一時は小泉改革に熱狂した国民も、次の選挙では民主党への政権交代を選択した。民主党政権には郵政反対派の「国民新党」など反小泉の保守派も参加していた。今回の問題を深追いすると、安倍派を支持してきたウルトラ保守が自民党を離れるかも知れない。それをきっかけに自民党が「三度目の下野」に追い込まれる可能性もある。
(政倫審に出席した岸田首相)
 その事を考えると、何となく煮え切らない対応、官僚的な答弁を続けている岸田首相は「まだ再選を諦めていない」と見ることが可能だ。しかし、安倍派、二階派に加えて、相談なしに「派閥解散」を打ち出したため、麻生派や茂木派も今では首相を支える気が無いように見える。党内に岸田再選へ向けて熱気の高まりがないが、同時に自分が取って代わるという熱気もない。低支持率のまま、本人には辞める気が無く夏を迎える。そこで解散に踏み切れるか。どうやって、解散を止めるのか。自民党内から不信任案に賛成するということは考えられない。(総選挙で公認されなければ、旧安倍派は復活当選出来ない。)

 自民党の大多数は、「安倍派処分」など恨まれることは岸田首相にやって貰いたいだろう。そして「責任を取る」として首相が辞めてくれれば一番良い。岸田内閣は9月まで続けば3年やったことになり、安倍、小泉には及ばないけれど、21世紀で3番目の長命政権になる。菅内閣は東京五輪、岸田内閣は広島サミット。大仕事は一つやった。またこれから3年間岸田内閣が続くのは、誰が見ても長すぎるんじゃないか。やっぱり方向性としてはそうなりそうな気がする。問題は誰が首に鈴を付けるのか。それは麻生副総裁しかいないと考えられる。次も「岸田派」から出すから、ここで身を引いてくれないかと言うわけだ。

 具体的には「林(芳正官房長官)か、上川(陽子外相)か」である。どっちも岸田派だから、首相が辞めない限り自分で出るとは言えない。林を担ぐと、山口県で確執がある安倍派が高市早苗を立てるだろう。閣内から出るんだったら河野太郎も出るかもしれない。そうなると上川陽子を各派閥まとまって擁立するというのが、あり得る選択肢だろう。もう一つ、小池都知事が都知事選に出馬せず、自民党に復党申請するとどうなるか。今の段階で読めないけれど、そういう可能性も全くなしとは言えない。

 僕は麻生副総裁の「上川外相おばさん発言」は、次の総裁候補として認知したという宣言だと思っている。上川外相が問題視しないと言ったのも、「私はわきまえた女」として後継擁立を受けるという党内ボスへの返答だと考える。だから「麻生発言」を何度も批判してきたけれど、今回は書かなかった。生臭い思惑がある発言をタテマエで非難しても、誰にも届かないからだ。だけど、麻生副総裁が説得しても岸田首相が辞職しないとなった場合、どうなるのかまでは僕にも全然読めない。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする