Side Steps' Today

裏版Side Steps' Today

レコーディング日記(33)

2005年07月28日 | SideSteps
同じような作業が延々と続く。当然のことながら、集中力というのはそう長くは続かない。余暇(→使い方が違う?)にはAVALONのDI内部の抵抗やコンデンサーの配列をみて、「どうしてこのように配列させると音が変化したりするのだろう」と府川さんとともに議論、理系の府川さんも首をかしげる。ついでに内部を記念撮影。また、予め買ってきた飲み物やお菓子をつまむが、これが止まらない。意識しないと飲料は飲むわ、チョコレートは食べるわ、で神経質な作業に対するストレスに加え、昼食のみで作業していることからエネルギー不足なのか、それを糖質で補おうという危険な状態。2日目には一日目の教訓(?)もあり、府川さんはPCを持ち込んでお仕事。当方も本を持参して、耳休めのために隣の使用していないスタジオで読書。無音に近いスタジオ内での読書は非常に進捗し、自宅にスタジオ(防音設備)を作ろうかと真剣に検討。爆音で聴いているが、その中でも全く問題なく眠ることもできるようになり、人間慣れは恐ろしいものだと痛感。スタジオ内には狭いものの、ソファー状の部分があり、そこでガックリ首をうなだれると猛烈な睡魔に襲われる。特に土曜は先週中の仕事の疲れが出るせいか、爆音の中でも船を漕ぎまくる。
※(写真)”船を漕ぐ”どころではなく、本格的に寝にはいるリーダー。

散財日記

2005年07月27日 | CD批評
月下旬の収穫期にて、大量買いの予感。久々に新宿DU。しかし、新宿というのはキタナい街ですな、当方の好まない石原慎太郎が浄化に乗り出すのもちょっとは分かる気も。所用があって開店直後に到着するも、店頭には思い切り生ゴミの匂い。打ち水が一層その匂いを助長させており、休日朝というのにコレでは参る。ところで、前日に東京で震度5というかなり大きな地震があったが、CD屋にいたら上からCDが降ってくるのだろうか、まあそういう死に方も悪くはないが...(と、やけに厭世的)と買い物中にフト思う。
●A Fusion Guitar Tribute「Visions Of An Inner Mounting Apocalypse」
トレード中に背後のオジさんが話しかけて来て、「マクラフリンのトリビュート盤でたの知ってる?凄くフュージョンぽいぞ」と。トリビュート盤と聞いて、一瞬「マクラフリンって死んでたんだっけ?」と思い、聞くと「死んでいない」とのこと。ジャケをみていかにもマクラフリンのトリビュートというより、マハビシュヌの、といった方がイイ気もするが、メンツはルカサー、スターン、ギャンバレ、アバクロンビー等のバリバリ=テクニック系。最近はこういうキツいのを聞くと胸焼け+ゲップという体質(<老化現象?)になったが、まさにそれを裏切らない内容。
●The Anniversary Quartet Live At The Cellar「You 'll See !」
外見が民主党・岡田代表とクリソツ(笑)なエリック=アレクサンダー(ts)が参加しているオルガン+ギター+ドラムというカルテット。ポスト=マイケル・ブレッカーとも言われるアレクサンダー(そうかな~?)だが、演奏は岡田代表のように、華には欠けるものの、なかかなシブい玄人好み。個人的にはベースがなくて、オルガン(のペダル)というのがあまり好きではないのだが、このカルテットはギターが入っているせいか、あまりオルガンがブリブリしていなくて良い。4曲目”You'll See”では、オルガンが同音を弾き続けながらソロを弾く部分があるが、こうも同音を聞かされると、オーディオ機器の故障、もしくは、よくSSの演奏であるキーボードのMIDIエラー(Note-Off情報が落ちて音が鳴り続けてしまう現象)のようで、オロオロしてしまう。ギターはピーター=バーンスタインというらしく、寡聞にして知らないが、なかなか良い演奏。

レコーディング日記(32)

2005年07月26日 | SideSteps
内容としては、上記のようにリズムセクションを固めた後に、ギター、キーボードも同様にエフェクト処理をしてバランスを決めてミックスという流れが基本で、この作業をひたすら繰り返すが、その途中で次第に耳がヤラれてくる。ここで教訓その3「次第に高音域が聴こえなくなってくることを想定せよ」。これは今回に限ったことではないが、ある程度の音量、しかも普通の家庭では住宅事情により、まず出さないだろうという程度の音量で数時間も音楽を聴いていると、次第に高音域から音が聴こえなくなってくる。しかも、それほど自覚症状はないことから、ハイが足りない、ハイが足りないとばかりにハイをEQで上げたり、もしくは音量自体を上げたり、という事態となる。加えて、リバーブ等でもハイが聴こえなくなってくることから、次第にリバーブが深くなり、結果として、リバーブで一番良く回ってしまうローもカットはするもの、絶対的に上がってしまい、音像がボヤける→迫力のない音になる、という悪循環に突入する結果となる。加えて、迫力の無い音に対する対処法として、リミッターをかけるという方法がある。これは迫力があるように聴こえる、だけで実際の音圧があるわけでは決して無い。副作用として表情が無くなってしまうというデメリットもあるが、SSのように、どの楽器も結構な音量で「ガー!」と鳴っているバンドでは、ロックバンドならまだしも、そうではないので、起承転結やサウンドのダイナミクスは重要、最終的な段階では結構スレッショルドのレベルを上げてもらい、サウンドのピークを頭が叩く程度にまで変えてもらう。

気になり本

2005年07月25日 | 文芸批評
『トリダヨリ リラックスマ生活(3)』 コンドウ アキ著 主婦と生活社 
朝日の書評で発見。「この絵、みたことある...」と思うが、丸ビル地下のコンビニのアイスコーナー上に陳列されている”植物栽培缶詰”(推定では種子と栽培土が入っておりデスク上等で栽培できる植物と思われる)の絵柄なのであって、毎回アイスを購入する際にちょっと気になっていた、ソレであった...。早速、本屋に立ち寄った際に物色するが、どこにもない! そんなに(売り切れるほど)人気なのか...とも思うが、内容が内容だけに店員に聞く勇気も湧かず、そのまま無念にも断念して帰ろうと思ったその矢先に女性コーナーにて発見!そういうコーナーだけに周囲は女性だらけの中、勇気を振り絞って手に取り、ちょっと離れた場所でパラパラと内容を見遣る。活字は恐ろしいほど少なく(しかもカタカナ...)、絵が中心ながら、スパイシーな内容に衝撃を受けるも、基本的には比較的やる気のあるトリと、楽天的グータラなクマという内容で、「一般ピーポー(people)は前者ながら、ツラくなったらタマには後者でいいんじゃない?」という、落としどころは前者と後者の”中庸”という安易な内容ながら、なかなか考えさせられる内容+愛嬌のあるイラストは、トレード中の座右の書としては良いかも知れないと、オフィスに置くつもりで購入。840円、活字がナイせいか、ビビるほど安い!

散財日記

2005年07月21日 | CD批評
前回と同じく、お茶の水DU。レジにて精算時に5000円以上でグラスが貰えるというキャンペーン中な模様で、1万以上購入したので2個を頂戴する。しかし、その梱包に手間取る隙に、手持ち無沙汰に見遣った棚にジョンスコの教則DVDがあるのを発見、しかも英語版のようでパッケージを手に取ってみるに、教則というよりは完全に演奏DVD、しかも、ファンクバンド、つまり、デニチェン、ゲイリー=グレンジャー、ジム=ベアードというメンツで、「Trim」とか「Make Me」等を演奏しており、つい、追加購入。しかも外国DVDでNTSCながら、3000円台と非常に良心的。
●ジョン=スコフィールド「JAZZ-FUNK GUITAR」(DVD)
カッコイーーーーーーッ(と卒倒)! バックの演奏もなかなかながら、なんといってもイイのはジョンスコ。殆ど動かない地蔵ギター(←古い!むかし某Sというバンドの安藤まさひろがこう言われていた...)なのだが、演奏中はどうやらトリップしているようで、細かく痙攣しているのがまたカッコいい!真似るとただの病人のようにしか見えないだろうから止めておくが...。ゲイリー=グレンジャーはMMのStingrayを弾いているというイメージが強いが、本作ではなんとKenSmithの5弦。しかし音は例のズビズビというサウンドで、一安心(?)。
●ジョシュア=レッドマン Quartet「MoodSwing」
最近ハマりのレッドマン、90年代のアコースティック-カルテットを物色したが、ピアノがブラッド=メルドー、ベースがクリスチャン=マクブライドと超有名どころ。期待して聴くが、内容はまあまあ。ライブのような荒削りな部分が少なく、やや大人しく感じる。曲も大人しい。ちょっと”積ん聴き”しなくてはいけないか。
●g.org「A New Kind of Blue」
内容的には「So What」から始まり、マイルスの「Kind of Blue」の再演。メンツはランディ=ブレッカー(tp)、チャック=ローブ(g)等。いわゆる「新しいKind of Blue」(そのまま...か...)。

レコーディング日記(31)

2005年07月20日 | SideSteps
一曲を終了すると、ちょっと早めながらランチタイム。前回レコーディング時は2日連続して夕食抜きという状態だったことから、今回は早めに昼食をとって、できれば夕食もとって余裕のあるミックスに!と思い(結果としては全くこんな具合にはいくわけもなかった...)、早めのランチを画策し、前回同様の中華料理店「大陸」を想像するも、同店は閉店したとの報。この2ヶ月の間に...と世の中のスピードの速さにしばし愕然とするが、店主であるオヤジが気力・体力の限界を感じて引退に踏み切ったとのこと(しかし上月さんも恐るべき事情通なり...)。完全に中華モード、しかも典型的日本の中華モードとなっていただけに、この高揚を鎮める手立ても見当たらない(というのも、この手の中華を食べる機会が殆ど無いので...)が、やむを得ず、蕎麦。皆がカツカレーや丼ものをオーダーする中、独り”天=きしめん”。想像とおりの味に納得す。一服する時間も惜しんでコントロールルームへ戻って作業を開始。食事の終了はおよそ14時半。2曲目は「Beyond the Verge」。伊東さんが音源等を差し替えたいと希望する曲が他にもあったため、その優先度の低いものから消去法的に選択さる。この曲のような場面転換の多い曲はミックスにも時間を要するとある程度は予想していたものの、予想以上の長丁場となる。
※写真は今は亡き「大陸」

マイケル=ブレッカー

2005年07月19日 | 時事批評
ナーテの巨人、「マイケル=ブレッカーが死にそう」と会社で聞く(どういう会社か...)。「また、また~(笑」と思うが、骨髄系ガンとの記事に衝撃。そういえば最近(名前や活動を)聞かないな~とも思うが、療養中なのか...。この手のデマは良く聞くが、これもまたそうであって欲しいと願います。

散財日記

2005年07月19日 | CD批評
お茶の水DU。会社帰りに飛び込むが、店内は同様のリーサラで結構満員。一部に隙を見つけてそこを見るが、強烈なスメル(smell)。そう、強烈なワ○ガの匂いなのであった。その方には一遍の罪もないが、やはり脳髄を直撃する匂いに息を止めて物色。そういえばこの匂いの中にはフェロモンの成分もあると聞いたことを思い出し、その成分を嗅げば...と超ポジティブ思考でブレスするに、ウッ、やはりダメ...、瞬時に打ち砕かれる。鼻を諦めて口にて呼吸。
●Janet Seidel 「Moon of Manakoora」
なかなか良いジャケがそのまま音になったようなCD。店内でかかっていたが、ウクレレとリズムレスのジャズ+女性ボーカルということで、いままでに聴いたことのない内容ながら、ウクレレでジャズという新鮮さ+ウクレレでジャズフレーズを弾くと、かなりシビれる!ということで恥ずかしながら、店側の戦略に乗ってしまい、購入。ウクレレということで夏っぽい雰囲気満点だが、ベテランの女性ボーカル+曲が素晴らしく良い。癒し系とまではいかないが、(柄にも無く)照明を落とした冷房の効いた部屋でスピーカーで聴きたい。最近のお気に入り。
●The Uptown Quintet 「Live in New York」
2管バップ系。2004年NYC録音。金管はライアン=カイザーとアルト。曲もなかなか。定番「Blue Minor」がなかなかの好演。

詳細:定禅寺ストリートジャズフェスティバル

2005年07月18日 | SideSteps
関東が梅雨明けということで、発狂的な暑さの毎日、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今年も9月10(土)・11(日)日に開催される、仙台・定禅寺ストリートジャズフェスティバルにSSが参加することとなったことはお伝えしましたが、日時・場所が確定いたしましたので、発表いたします。
日時:2005年9月11日 日曜日 16:00~
場所:錦町公園噴水前
です。晩夏の夕方、噴水をバックにSSというのも、ちょっと違う感じもしますが(笑、お近くの方はお誘い合わせの上、是非お越し下さい。お待ちしております。
加えまして、その前日、9月10日土曜日ですが、仙台市内でライブを企画しております。4~5バンドによるジョイントですが、かなり実現味を帯びて来ている状況にありますので、こちらも確定しましたら、再び掲示させていただきます。

レコーディング日記(30)

2005年07月15日 | SideSteps
しかし、当初のそのエフェクトの掛け方は結構エグく、いかにも「エフェクトが面白かったので多用しました」というようなアマチュアチックな出来上がりになる。実際我々もそうであり、PCにおけるミックスの功罪か、エフェクトもモジュレーションやパン等のサウンドの動きが目で見えるということもあり、PCゲームの感覚で面白く使ってしまう。最終的には、マスタリングまでの冷却期間にクールダウンした頭で冷静に音を聴き返して、この「行き過ぎ」に気がつき、最終日のミックスでかなりバランスを落としたが、面白いエフェクトに出会った時の一時的な熱情に浮かされて、つい多くかけ過ぎてしまうのであった。ここで教訓その2「エフェクトは”足るを知れ”」。さらには、この画面で効果が見える、という点にも多くの問題を孕む。ここで教訓その3。ミックスしたものを聴く場合は「目を瞑るべし」、しかし眠っては意味ない。以前、雑誌のインタビューで渡辺香津美が語っていたが、アンプのチューニング・サウンドメイクをする場合にはツマミをみてはいけない、見るとその目盛等を判断して調整に自己規制をかけてしまうという主旨だったと記憶するが、まさにこれは当てはまる。

レコーディング日記(29)

2005年07月14日 | SideSteps
話をドラムのサウンドメイクに戻すと、基本的には各パーツをEQとダイナミクス系で整えた後に、パーツ間のバランスを調整。バスドラとハイハット以外にリバーブを乗せて、最後にトータルコンプをかけるというものだったが、トータルコンプは曲によってフェアチャイルドのシミュレート(PC上にそっくりの画面が現れる)や76(Urei1176)をかけるが、前者はかけただけで音が立つので有名だが、まさに今回はそうであり、コンプというよりEQ(エキサイター?)的な感じ。曲によってはソロ部分等には比較的派手目なエフェクトをかけることに。「Parallel Reality」では中間部のソロ部分には、昔流行った「NYパワーステーション風」ということで、アンビエンスを採用。アーリーリフレクション(初期反射音)が粗くバラバラ鳴るリバーブのリリースをゲートで切るものをかけている。ベースについては、基本的にノーエフェクトだが、中間部のリフでは、オーバードライブ(ジラウド製Funk Groover)をミックスさせたことに加え、Bメロではこれも昔流行ったアンソニージャクソン風のフランジャーをかけるが、こんなように”昔流行った...”というサウンドメイクをしているので、”SSは80年代の音がする”と以前に某雑誌に書かれたことを思い出し、皆で議論。書かれ方は、その80年代のサウンドが”懐かしい”のか”古くさい”のか、つまり好意的かそうでないかまでには触れられていなかったものの、我々の受け止め方はどちらかといえば後者のようにネガティブであって、「すみませんねぇ、古くて...」とちょっとヒネてしまう感じであるのだが、ある意味で全盛であった当時に対してリスペクト(←これ最近の流行語か)しているのだとあくまでプラス思考で乗り切る。

レコーディング日記(28)

2005年07月13日 | SideSteps
ベースが終了するとキーボード、ギターとなるが、それぞれにかけるエフェクトは基本的にProTools内のプラグイン(一部O2Rのエフェクト→SPXと同等?を使用)。プラグインは相当量インストールされており、プルダウンメニューが画面の上から下まで表示してまだスクロールできるという程であるのだが、それぞれにPCのパワーを食うために、同時に使用できる数はその使用するエフェクト等に依存する(PC画面上には、いかにも”パワー食ってます”的に危険な赤色表示がなされる)。この部分ではこういうエフェクト等等のリクエストを出して行くが、これが完全にPC上に記録され、再現性も確実であるのは、今回のProToolsによるレコーディングが初で”世の中便利になったものじゃ”と時代に取り残された一世代前のおじちゃん気分。これまでのレコーディングでは、勿論内蔵のエフェクトも使用していたが、数が少なかったこともあり、外部のエフェクトを数多く使用し、結果として、ミックス時のON/OFFし忘れとか、部分によって掛け方を変える等が非常に面倒であり、これが失敗すればやり直し、という状況だったのだが、今回はそれが明確に画面上に表示され、そのON/OFFや、バランス、パラメータのカーブが視覚的に確認でき、何回再生しても全く問題なく再現する。勿論これはエフェクトに限らず、フェーダーでもそうであるのだが、音に対する感覚を視覚的にも確認できるという不思議な感覚を今回初めて体験すると同時に、レコーディングに対して想像しうる全ての(と言い切っても良い程の)機能が備わっていることに、テクノロジーの進歩を感じる。これまでのレコーディングでは「こんな事できれば便利だろうな」と想像で語っていたことが、現在ではすでに具現化されており、既に「こんな事できれば便利だろうな」と想像しうる機能は殆ど存在しないと思われる。

レコーディング日記(27)

2005年07月12日 | SideSteps
オケ(全体のサウンド)に混じると印象が変わる可能性があることもあるが、根本的にはエンジニアの耳や技術を信頼できるのが重要。今回のレコーディングでの大きな”教訓その1”は「エンジニアは重要」。これまでのエンジニア(10年以上前の「Steps on Edge」以前の作品で携わった方)は、機材の取り扱いにはある程度熟練しているものの、サウンドに対するビジョンが今イチ不明確で、我々がプレイバックしている音を聴きながら、原因不明ながらも「なにか変」と感じている場合に、なにもソリューションが提供されなかったものだが、今回は違って、明確なソリューションを提示してくる。勿論そのソリューションでOKな場合も、そうでない場合もあるのだが、このソリューション力というのは非常に重要であり、これこそエンジニアの本領であるということを痛感す。よくアーティストがミキサーやエンジニアを指定して作品を作ることがあるが、それはこのソリューション力を求めての事なのだろう。この部分をこうしたい、とか、こんな雰囲気といった、非常に抽象的なニーズを音に変える能力に加え、演奏者自身がサウンドや曲全体の雰囲気について、明確なビジョンを描ききれず、非常に少ない言語・ボキャブラリー(場合によってはジャスチャー)にて必死に説明を試みるとき、それを理解し、技術でサウンドに転化させ、納得させうる能力について、今回は完全に感じ入る。その意味では、エンジニアは完全に技術者なのではなく、アーティスト(技術や知識はそれを表現する手段に過ぎない)なのであった。

レコーディング日記(26)

2005年07月11日 | SideSteps
これまでのレコーディング、といっても10年以上前の「Steps on Edge」が最後のスタジオミックスだったのだが、はエンジニアの手元作業が見えにくく、特にどんなEQをされているか等々は殆ど見えなかったのが実情。しかし、今回のProTools上での作業はディスプレイ越しに完全に理解でき、非常なる透明性があるとともに、厳密性/再現性もあり、素晴らしい!と痛感。エンジニアにすればEQ具合等企業秘密的な部分も多く、後ろから見られるのは嫌な人もいるであろうと想像されるが、それ以上に”そのスクリーンショットを取って!”(なお、MAC OS9におけるスクリーンショットは”りんご+Shift+3”と”りんご+Shift+4”で出来る)とお願いする当方を嫌な顔せず、「企業秘密なのにな~」とか「ここはダメ!(笑)」と言いながらも撮ってくれたのには頭が下がる(ちなみにショットを撮ると”カシャ”という撮影音が毎回するが、これでメンバー一同爆笑)。ドラムの音決めが通り一遍終了すると、次はベース。バスドラの音等を聴きながらEQとダイナミクス系をかけるが、この段階では基本的にはエンジニアを信頼して、あまり音に注文はつけないことに。普段は自分の音に対しては全くNo-EQであるので、他人、しかも、あまり自分の音を聴いたことの無い人がどのようにEQするかは非常に興味があったが、音や周波数帯が重なる部分を避けて音像を定位するEQが基本で、単体で聴くと「えー、そんなところ(周波数)持ち上げるの...?」ともなるが、オケに混じるとその嫌な部分も消え、収まりのいい具合になるのは新たなる発見。
※ある曲のベースのEQ。どの周波数帯を持ち上げているか分かりますでしょうか......。

レコーディング日記(25)

2005年07月08日 | SideSteps
その前に、自宅でレコーディングしてきたギターとキーボードをProTools内に取り込む作業を行うが、送り手のレコーダーサイドの問題で同時に8トラしか送信できないので、それ以上の場合は複数回にわけて実施。当然、曲の長さだけ時間を食うことから、結構な浪費となるも鵜やむを得ず。各パーツの音に対してEQやダイナミクス系をかけながら音を作って行くが、今回はプロのエンジニアのため、基本的には上月さんの感性でサウンドを作り、これでどうでしょう、という後に細かい注文を付けるというスタイル。後ろから画面上の作業をみると、基本的にEQ、それもパライコかフィルターでサウンドを調整した後にダイナミクス系をつけて音の暴れを整える(名誉のために追記すれば、決して演奏におけるダイナミクスが乱れていたというわけではない)。音を確認するために、バスドラのみ、とか、スネアのみ、ベースとドラムのみ、といったパーツ毎の演奏を聴く事(ミキサー上の操作では”SOLOボタンを押す”こと)になるが、これがなかなかヨレていたり(いや、”グルーブしている”と書くべきか...)、して聴くのがツライ。サウンドチェックのためとは言え、演奏している当人には、なぜか針の上のムシロ状態であることから、この状態は「市中引き回しの刑」と呼ばれ、各人、必ず訪れるこの瞬間をグッと耐え忍び、自我が崩壊しないようにする。