Side Steps' Today

裏版Side Steps' Today

”怪我”牀六尺(10)

2018年07月28日 | 畸観綺譚
(10)
救急車にて来たためにそもそもどこにいるのかがわかりません。グーグルマップにて位置を確認するに、最寄りの新幹線の駅まで車で10分程度、最寄りの在来線の駅まで徒歩10分弱という、これまたなかなか至便な病院に入院することができました。救急車で運ばれて来た時に何回どのような方向に曲がったかは記憶していたことから、大凡の位置関係は分かっていたつもりでしたが、イメージ通りの場所に運ばれておりました。さて、腕はギブスで固定され、ベットに横たわるも死活問題なのはその腕の位置。上下、左右、角度を探りながらもっとも苦痛が少ないポジションを試行錯誤しながら探ります。角度を調整するにも腕の下にタオルを詰め物にして入れてもらうのですが、片手骨折であれば自分でできようものが、両腕骨折とくればこれまた助力を借りないとできないのが何とも情けない感じです。試行錯誤して安楽なポジションを確保したのちは、これまで分泌されていたアドレナリンが止まったのか、痛みは少ないものの、なんだか全てが面倒くさくなるというエネルギー切れ症状となり、軽くパンを食したのちはダウン。両腕を動かさなければほとんど痛みはない、という状態であり、それには寝るの一番。ちなみに、骨には神経がないため、骨折そのものでは痛みは感じない筈なのですが、なぜ骨折により痛みを感ずるかといえば周辺組織を痛めているため、とのこと。

”怪我”牀六尺(9)

2018年07月21日 | 畸観綺譚
(9)
その後、完全に忘れられていたかのように顎下の裂傷の治療となります。一応軽く局部麻酔(局麻というらしい)をしてチクチクと4針ほど。顎なのでヒゲを巻き込まないように縫うので難しいとは執刀医の言。さあ、入院となりましたので色々と面倒な事態になりましたが、まずは病室へと移動です。足に問題なく患部は腕のみといった性質のせいか、4階建の最上階が病室でした。個室でなかなか快適な環境に見えましたが、窓から遠くに見えるのは山並み。そう、あの山麓で事故ったのです。風流にもそれを一週間見遣りながら暮らすことになるのですが、近親者への連絡を、とまずは実家へ電話。父親が電話口に出たのでこちらの状況を説明しましたが、反応は「両手が折れるわけがない!」の一点張り。いや、こちとらレントゲン写真で素人目にも明らかにポッキリいっている映像を見ているし、なにより医師がそう診察しているのだから、とも思いますが、「どうやったら両腕が折れるのか」をひたすら問われます。非合理なやりとりが続きますが、先方も気が動転しているのだと勝手に割り切って電話を置きます。妻は入院や手術の事務手続にて大忙し、さらには帰京して入院準備をして戻ってこなければなりません。ビジネスチャンスとして、入院セット一式のようなものを供給する会社があればそこそこ需要があるのではないか、とも思いながら、この段になって思うのは「ココ、どこにある病院なんだろう」。

玉肌日記

2018年07月14日 | 玉肌日記
【奥湯河原温泉(神奈川県足柄下郡湯河原町)】
陰翳礼讃たる奥湯河原温泉を再訪。今回は混雑を事前に想定し、往きは山側のルートでのアクセス、つまり箱根新道そして湯河原パークウェイ経由でのアクセスを試みたが、その恐ろしいほどの好アクセスさに刮目する一方、帰りは海岸線を通る135号という定番ルートなるも、こちらは異常なる混雑具合に発狂し、結果として(非常に失礼な言い方だが)「伊豆は今でも流刑地」との思いを強くする。景観のよさもあり、海岸線に沿う135号を利用する観光客は非常に多いが、ここ30年ほど伊豆に通い詰める当方からみればこのルートのインフラはほとんど改善されず、おそらく信号機のタイミンクさえも実際の交通需給を反映しておらず、逆に渋滞を生む原因となる等全く冴えない。それでもこれほどの人が押し寄せ、渋滞するのだからこのボトルネックが解消されればどれほどに伊豆、正確には東伊豆が活況・盛況になるかは容易に想像できるというもの。早川〜熱海間の慢性的なる渋滞を想像すると、渋滞中のイライラだけでなく時間ロスも考慮すれば伊豆方面の観光に出張るのはできるだけ避けたい、との思いが個人的に強く刷り込まれている。さて本題の温泉だが、ここ奥湯河原が別荘地として開発され、その際に分譲された複数戸をまとめて購入し、旅館業を開始したと今回聞いたが、そのためか敷地内に源泉をもつだけに素晴らしい新鮮な湯。旅館廊下の掲載によれば檀一雄だけでなく、前回は見落としたのか、 獅子文六『娘と私』にも当旅館の記述があり、2年前程度に獅子文六の酒脱な文体にハマってほとんどの作品を読破した記憶が蘇る。檀一雄も獅子文六も、また当然この温泉も全くまったく当方の好みなのだが更に印象深いのは、ここに宿泊した折に畳の間で愚息がそれまでの匍匐から脱し、初めて二足歩行したという思い出深き場所ということも。

”怪我”牀六尺(8)

2018年07月07日 | 畸観綺譚
(8)
レポの続きです。なんだか、脇の下に生温かいものを突っ込まれたと思うと同時に、大先生は御年70超というのに両腕でまずは左腕を思い切り引っ張ります。脇の下に突っ込まれたものは足であり、大先生は足を脇下に突っ込み、全力で左腕を引っ張ること数秒。そして今後は逆の右腕で数秒。私が幼少期には「電気あんま」なる戯れ技があり、寝技にて相手の両足首を持つ一方、自分の足を相手の股間に突っ込んでグリグリと振動させる技でありましたが、その股間バージョンを脇の下バージョンに替えたのがコレであります。ヤラレテいるこちらはどうしても身構えてしまうので息を止めてグッと堪えますが、看護師さんは「深呼吸して!」。いや、なかなか深呼吸できる環境ではないでしょ、と思いながら実直に深呼吸をするや、その力が抜けた瞬間に引っ張られるという状況でございました。後に聞けば、本来は大人でも絶叫する痛みで診察室の外にも患者の絶叫が漏れるほどとのことですが、こちとら何とか大丈夫で、威厳を保てました。このレポの痛みは、その後を含めて最大の痛みを10とすると3という感じで、実際にはあまり痛みを感じませんでした。アドレナリンが脳内で放出されていたのでしょうか。結果、医学用語でいうレポとはRepositioning、整復とのこと。