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ミステリ感想-『贖罪の奏鳴曲』中山七里

2015年04月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
法外な報酬と引き換えに、どんな不利な裁判でも執行猶予や減刑を勝ち取る悪徳弁護士・御子柴礼司。
少年時代に幼女バラバラ殺害事件を起こした彼に、またも殺人容疑が掛けられるが、その時間帯には法廷に立っていたという鉄壁のアリバイがあった。
それでも犯人は御子柴なのか? また彼が手掛ける絶対的不利な裁判に勝算はあるのか?


~感想~
弁護士かつ元少年殺人犯(しかも死体配達人という異名つき)かつダークヒーローを主人公に据えた、言ってしまえばキャラ小説だが、魅力的なキャラ造形と謎、何重ものどんでん返しでミステリとしても秀逸。
「思いつくこと全部ぶち込んだ」と作者が言うとおり、物語の構成も御子柴が手掛ける事件と法廷劇、それを追う刑事たちの捜査、御子柴の過去編と盛りだくさんで、しかも他シリーズキャラで脇を固める過剰なまでに万全の構え。
話を詰め込みすぎて終盤あたりは急ぎ足になったきらいはあるが、だからといって煩雑にはならず、トリックも真相もきわめて把握しやすいのも良い所。
謎とトリックと解決を詰め込む小島正樹と比較すれば、ジャンルとキャラとストーリーを詰め込んだ、新たなやりすぎミステリとして数え上げるべき良作だろう。


15.4.15
評価:★★★☆ 7
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