小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『虚像のアラベスク』深水黎一郎

2018年06月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
創立15周年記念公演が迫る中、バレエ団に公演中止を迫る脅迫状が届く。
海外の要人も鑑賞を予定しており、警備を命じられた海埜警部補は芸術に詳しい甥の神泉寺瞬一郎に協力を求めた。
演目の「ドンキホーテ」には危険となりうるシーンも多く、有力な被疑者も浮上。そして舞台の幕は開いた。……「ドンキホーテ・アラベスク」

他に中編「グラン・パ・ド・ドゥ」と掌編を併録。


~感想~
うん。たぶん作者は馬鹿なんだと思います。(※褒め言葉)

これとこれを思いついてこう組み合わせてしまうという、稚気というか悪意というかに脱帽。
ネタバレを避けるためあまり詳しいことは言えないのだが、まさか2つ目の方を先に思いついたんじゃないだろうな!?

言われる前から確かにいろいろあった不自然さや不可解な点が、まとめて砕け散り、後ろから現れた情景には唖然とするとともに膝から崩れ落ちること請け合いのやり口は、完全に早坂吝の案件。
想像を絶することを保証するので、前評判を聞いて少しでも興味があるならぜひ読んでいただきたい。

絶対確実に間違いなく1位になることは無いが、年末のランキングではたしてどんな評価をされるのか今から楽しみでならない。


18.6.28
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『教場 0』長岡弘樹

2018年06月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
新人刑事の中で有望株は、名刑事として鳴らす風間公親のもとに招かれ3ヶ月の指導を受ける――。
まことしやかに囁かれる通称「道場」に入門した新人たち。風間警部は彼らを厳しく指導しつつも、さりげなく事件捜査のヒントを出し、見守って行く。

2017年文春6位


~感想~
警察学校を舞台に描かれた「教場」シリーズの前日譚。
警察小説に新たな地平を切り拓いたと評価されたシリーズの魅力の全てが失われた気がするし、犯人視点の倒叙形式で描かれる事件も目新しいところはほとんどなく、新人刑事にヒントを出すだけという風間の立場もさして珍しいものではないが、質の高い短編ばかり揃えて及第点には達している。

……いや他に何一つ付け加えることは無い、ごく普通の倒叙形式ミステリ短編集なのだが、あえて他の有象無象と比較するならば、トリックを見破りそれを突きつけて終わり、という話は少なく、様々な手練手管で落とすのは面白いところだろう。
加点材料は少ないが、減点材料も一切無いので感想はなんとも書きづらいが、安心して読めて確実に楽しめる好短編集である。


18.6.27
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『綺想宮殺人事件』芦辺拓

2018年06月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
琵琶湖畔にそびえる怪建築群「綺想宮」を訪れた森江春策を待ち受けていたのは、西澤保彦作品みたいな難読姓名の8人と、「匣の中の失楽」みたいな衒学の洪水。
天地創造の七日間を表わす曲が奏でられる中、次から次へと起こる殺人事件。
本格ミステリを愛し、その神髄を知り抜いた著者が「探偵小説の最期」に捧ぐ訣別の書!

2010年このミス10位、文春8位、本ミス4位、本格ミステリ大賞候補


~感想~
作者はあとがきで「この世で一番嫌いなアンチミステリをひょっとして書いてしまったのだろうか」と言っているがこれがアンチミステリじゃなかったら何をアンチミステリと呼べばいいのだろうか。
名前と概要はミステリマニアなら誰もが知っているが、概要だけで怖気をふるい読む人のごく少ない、かの小栗虫太郎「黒死館殺人事件」に芦辺拓は真っ向から対峙し、しかし重機で館ごと根こそぎ引っくり返し、ついでにダイナマイトで完膚なきまでに爆散させてしまった。

ペダンチックに超ウゼえ衒学の螺鈿細工が延々と描かれ、面白くなるのは最後の最後だけで、それも見えない相手に超上から目線で罵詈雑言の限りを尽くし、それに収まらず全方面に喧嘩を売っていくファイトスタイルにはドン引き。
作者がメフィスト賞作家とかだったら「うるせー!」とぶん殴って本を真っ二つにすればいいのだが、ミステリ界に多大な貢献をしてきた芦辺拓となると(́◉◞౪◟◉)こんな顔や( ΄◞ิ .̫.̫ ◟ิ‵)こんな顔をせざるを得ない。

概要を聞くだけでもうかがえる通りの労作である。歴代でも3本の指に入るのではと思うほどの参考文献の山には驚きを通り越してもはやドン引きであり、それだけの苦労をしておきながら作中では全てをブッ壊し、シリーズ最大級の巨悪をこれ以上ないほどの方法で粉砕する。
ミステリ界広しといえども芦辺拓にしか書き得ない驚異の作品であることは間違いない。

だが読者の感想はおそらくジャイアンシチューを食べたのび太・静香・スネ夫ら三人のうちのいずれかになるだろう。自分の感想はスネ夫と同じである。



色々とくさしたが以前、麻耶雄嵩「メルカトルかく語りき」の感想で「もし本格ミステリが終焉を迎えるとして、最期の日に読まれるべき作品はこれだろう」と書いたが、本作はより最期の日にふさわしい一冊だと思う。


18.6.20
評価:★★★ 6
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マイナーSCPを紹介するマンガ

2018年06月26日 | 雑文
PS4版マンガ・カ・ケールにてマイナーSCPを紹介するマンガを連載中です。

マイナーSCPをド素人が紹介するマンガ

今後は週1回くらいの更新になります。下手なりに徐々に上手くなっている模様。
SCPをある程度知っているほうが理解できると思いますが、いらない小ネタがちょいちょい挟まるので好みは分かれるところです。
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今週のキン肉マン #250 頭上の暗黒星!?

2018年06月25日 | 今週のキン肉マン
・そのドロップキックもギヤに当たってるんだが
・昔のゲームくらい当たり判定適当だな
・ビッグボディの前面とかいう表現やめろww
・友情パワーに目覚めそうなのはいいがタックルもローリングソバットもギヤに当たってるって
・ヒップアタックとかローリングソバットとかビッグボディはファイプロだとせっかくのパワー10を活かせない持ち技ばっかり
・突然の不思議ギミック
・そして富澤だけ異様にクオリティの低いサンドウィッチマン
・真っ昼間に脈絡もなく謎の星が宇宙からカットインして現れるという超展開が許されるキン肉マン
・汚いケツww
・前の試合でもっと汚い所に放り込まれてるけどな
・ストップ・ザ・ギヤってギヤを止めてるだけだよね?
・最弱王子決定か!?という酷い煽り
・今週の闘将!!拉麺男感は異常
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SCP-1481~1490

2018年06月23日 | SCP紹介
SCP-1481 - Crack Genie (ヤク中魔神)
コーヒーカップ。擦るとヤク中のような魔神が現れ、あまり話は通じないが、願い事を少しだけ一致した内容で叶えてくれることがある。逆に薬物や金銭を要求してくるが、自分で麻薬を出せないのかと訊いたところ号泣した

SCP-1482 - Mutilated Animal House (バラバラ・アニマル・ハウス)
スコットランドのシェトランド諸島のある住宅。家具や食器、動物の身体の一部等が糸やロープ、接着剤で貼り合わされて造られている。3ヶ所にホッチキスで留められた人間の声帯があり、来客に滞在を呼びかける

SCP-1483 - The Third Antarctic Empire (第三南極帝国)
クレバスから入ることの出来るもう一つの南極大陸。氷に覆われておらず、人間に似ているがいくつかの相違点のある知的生物が暮らす第三南極帝国が支配し、我々の世界のおよそ20世紀の技術を持ち、多数のSCPを保有している

SCP-1484 - Murder Diary
未翻訳

SCP-1485 - The Ordinary Dimension (通常次元)
平行世界とつながったワームホール。平行世界は我々の世界と99.98%まで一致し世界人口の3/4は同一人物に当たる。
だが平行世界にはSCPが存在せず、財団から平行世界へと脱走する人々が後を絶たない。失敗し捕獲された元財団のエージェントはその理由を「あの世界では道理が通じる」からと語った

SCP-1486 - "Benny" ("ベニー")
酷く破損し汚染された子供の人形。知性を持ち、50m以内で人間の男女が性交すると、瞬間移動して縮小し胎児となって産まれる

SCP-1487 - Beautiful Bones (美しき骨)
フィリピン系の少女。生物の骨格だけが見え、肉体を通り越し骨を直接触ることが出来る。徐々に能力が拡大し、ついに全ての生物が骨格しか見えなくなったが、ある職員だけは元の姿のままだったため困惑し、その職員は突如として失踪した

SCP-1488 - Partially Roboticized Tortoises (一部ロボット化された亀)
一部ロボット化されたメキシコゴファーガメ(亀)。当初は人為的に造られたものと思われていたが、成長した個体ほどより多くの部品を含む傾向にあること、全く部品の無い子供も生まれること、過去には現在より多くの部品を含む種がいたこと等から、メキシコゴファーガメの大部分もしくは全てがロボット化されている可能性も浮上した

SCP-1489 - A "Ghost Train" (「幽霊列車」)
幽霊のように実体の無い列車。直接なら視認出来るが録画等には一切写らず、決して触れられない。1860~1870年の間のある日付より以前に作成された、線路等の鉄道を構成する部品のみ接触することが出来る。その線路により進路を制御出来るが、制御されないと地球の測地線をなぞるように進み続ける。

SCP-1490 - Animal Sculptor (動物彫刻家)
7~8歳の少年に見える男性。4m以内に入った人物を素手で加工し動物の彫刻のような姿に変化させる。変化させられた人物は、このSCPに従順になるが、SCPは嫌気が差したような態度で無視する。
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SCP-1471~1480

2018年06月22日 | SCP紹介
SCP-1471 - MalO ver1.0.0 (MalO ver1.0.0)
携帯アプリ。インストールすると3~6時間おきに犬のような頭蓋骨と体毛を持った人型生物の写る画像を受信する。生物は徐々に所有者に近づき、90時間を過ぎると肉眼でも視認できるようになる。危害を加える様子は無く、アプリの宣伝文句には「一人ぼっちの寂しさから解放する」と書かれていた

SCP-1472 - Multiverse Strip Club (多元宇宙ストリップクラブ)
イリノイ州にある建物。毎週土曜の午前2時になると店員が現れ、●ドル払うとストリップショー(?)が観られる。その異常な内容から観客は死傷したり心的外傷を負う

SCP-1473 - Live the Words (生ける言の葉)
レーザージェットプリンタ。印刷した文書に読者に似た特徴の人物を紛れ込ませる。読者がそれが自分であると気付くと、作中人物と同じ人格が現れ、一人の時には会話をするようになり、その作品の内容に応じた影響を受ける。また100m以内の印刷機に同じ能力を持たせ、印刷物には同じ影響を与える。財団により厳重に収容されると「生ける言の葉が欲しかっただけ」と弁解する文書を印刷した

SCP-1474 - In Solidarity with Xiu Lidao, Great Sage, Equal of Heaven (天にも斉しき大聖者、シュー・リダオと共に)
致死的なエアロゾルを放出する装置とスピーカー。約3日に一度起動し、スピーカーから奇怪な収容手順が指示され、それに従わないとエアロゾルを大量に放出する。内部に「天にも斉しき大聖者、シュー・リダオと共に」と書かれた文書を発見した博士は、これは芸術作品であると気付き、作品意図から隔離せずに放置するよう指示したところ、起動しなくなった

SCP-1475 - 100% Brainpower (脳力100%)
人間の頭脳を100%活用させる化合物を開発した男性。自身に投与したところ全神経機能を完全に制御出来るようになったが、引き換えに自律神経が全く機能しなくなり、心臓や肺、血管等の臓器の制御に忙殺されている

SCP-1476 - Shattering Geese (バラバラガン)
シジュウカラガンに酷似した鳥。周囲温度が氷点下を下回ると凍りつき、少しの刺激でバラバラになる。130cm3以上の体積を持つ欠片はそれぞれが元の姿へと再生する

SCP-1477 - The Philosopher's Stove
未翻訳

SCP-1478 - Inconveniently Stereotypical Cacti (迷惑なほどにステレオタイプなサボテン)
ソノラ砂漠にある54本のサボテン。会話能力を持つが適当なエセ南部訛りで、相手にソンブレロやポンチョの着用を求め、拒否するとサボテンに変身させる。変身後も記憶を保つが徐々に他のサボテンの性格に近付いて行く

SCP-1479 - Inside-Outside (屋内-屋外)
閉鎖された火力発電所の関連施設の地下部分。広大な荒野になっており足跡は確認出来るが生物の姿は無い

SCP-1480 - Bus #64 (64番バス)
土星の衛星タイタンの地表に停まったスクールバス。稀に窓が点滅しモールス信号でメッセージを発信する。行方不明になったドレスデン小学校のバスと思われ、他にも関連するSCPがいくつか存在する
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SCP-1461~1470

2018年06月20日 | SCP紹介
SCP-1461 - House of the Worm
未翻訳

SCP-1462 - Renewable Energy Source
未翻訳

SCP-1463 - Senor Purple (セニョール・むらさき)
白人男性を模した自動人形。触れた者を紫色に染め上げる。人間には25%の確率で金属中毒を引き起こす。「ファンタスティック!教授」なる人物が関わっているらしい

SCP-1464 - Pond of Atrocities (残虐な池)
ある池。夜明けまたは薄明時に見た人間に、周辺で残虐な儀式的犯罪に関与したという記憶を刷り込む。儀式の内容はしばしば現実離れしているが、儀式を行わなければ世界終焉の危機があったと訴え、その危機の内容の3割は実在するSCPがもたらす最悪の結果と一致する

SCP-1465 - Photographos Thaumantos (写真のタウマントス)
写真や映像から球状の光を抽出する女性。光を抽出された写真等は何も映さなくなる。彼女は抽出した光の球から独自のパターンを見出そうと観察するため、眼に損傷を負っている

SCP-1466 - A Canary
未翻訳

SCP-1467 - The Man that Wasn't (存在しなかった男)
存在が希薄化し続けている男性。彼の主張する住所や所有物、家族等の記録も今や確認出来ない。いずれは彼自身も消滅すると考えられる

SCP-1468 - Literature Birds (文学鳥)
アメリカコガラ(鳥)。主にアルファベットを用い、著名な文学作品を嘴で木の表面等に刻印する。自身の損傷を全く顧みず、刻印する理由を「その物語が好きだから」と語る

SCP-1469 - Cookie Cutters
未翻訳

SCP-1470 - Telepathic Spider (テレパシーグモ)
テレパシーで会話できるクモ。言葉は非常になまっており、彼は話している相手もクモだと思っていた。3ヶ月で寿命を迎え、子孫に同じ能力を持つクモは現在のところ現れていない
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今週のキン肉マン #249 劣等王子の雪辱!!

2018年06月18日 | 今週のキン肉マン
・「強・重・強!!」という謎すぎる煽りwwwww
・謎のリフトアップとグイーングイーンという擬音ww
・1ページ目から面白すぎだろ
・そのサンセットフリップもギヤに当たってますよね?
・ビッグボディのケツには当たり判定が無いの?
・技らしい技を出さないのは強力らしくて良い
・マッスルリベンジャーはまずいぞギヤマスター(シルバーマンに撃たれる的な意味で)
・フェニックスと再戦する時のために秘策を用意していたんだな
・でもその結構マッスル・スパーク地のアトミックボムは危険だぞ(シルバーマンに撃たれる的な意味で)
・ビッグボディの雪辱を喜ぶなんてフェニックスも丸くなったな
・思いっきりよそ見してるあたり知性が感じられないけど
・ベンキマンに逆転勝利したギヤの変形
・でもベンキマンの身体自体が変形したことの説明は付いてないぞ
・きっと付かないままギヤマスター退場するんだろうな
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ミステリ感想-『粘膜探偵』飴村行

2018年06月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
戦時下の帝都。14歳の鉄児は特別少年警邏隊ことトッケー隊に入った矢先に謹慎処分を受ける。
汚名返上のため保険金殺人の犯人を挙げようと躍起になるが……。
軍部の暗躍。奇声を発し眠り続ける老婆。南方から持ち込まれた奇怪な植物。全ての謎がつながった時、恐るべき陰謀が明かされる。


~感想~
2009年に日本推理作家協会賞を射止めた「粘膜蜥蜴」以来となるが、「探偵」の二文字に惹かれて粘膜シリーズを読んだ。
が、一般的な意味での名探偵は登場しない。
それどころか「粘膜蜥蜴」同様の悪趣味かつハイテンションの物語が続き、いっこうに探偵が必要な状況が訪れない。
中盤に保険金殺人が浮上したのもつかの間、急転直下でエンディングに向かい、話が明後日の方向に飛んで行く。
しかしその過程でうやむやにされていたあれこれが絵解きされ、極彩色の世界に隠され…というか紛れ込んでいた伏線が次々と明かされるのは確かにミステリのそれである。

というか、謎解きの合間に悪夢的な情景と、悪夢それ自体が描かれつつバトルロワイヤルが展開するあたりは飛鳥部勝則ワールドそのもので、最後に戻ってくる現実が悪夢よりもっと無茶苦茶な事態になっているのは粘膜シリーズと、龍虎並び立つとでも言いたくなる荒唐無稽さになっており、打ち切り漫画みたいなラストシーンは通勤バス内で噴き出しかけたし、激しく読者を選ぶことは間違いない。
作者はもちろんのこと飛鳥部勝則ファンなら高確率で楽しめるはずなのでぜひ一読をおすすめする。

それにしても、あとがきに「中学で粘膜シリーズが大流行中」とか書かれてたが、PTAこんなの読んだら泡吹いて卒倒するぞww


18.6.13
評価:★★★ 6
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