小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『叙述トリック短編集』似鳥鶏

2019年02月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
全編が叙述トリック物とあらかじめ宣言した(しかもヒント付きの)異色短編集。

2018年このミス15位


~感想~
手垢が付きすぎてもはや短編ですら発表できない物を、あらかじめ叙述トリックと宣言し、同系を揃えることで無理やり商品として成立させたような作品が並んだ。…と思ったら巻末の初出によると、一番手垢の付いた一番安易な物が堂々と雑誌で発表されてて笑った。

読む前から案じていた通り、全体的に小粒だし、大見得切って叙述トリックを宣言しておきながら、目を見張る斬新なトリックが皆無だったのは残念。
というか何より一番の問題点は、作者の某作で用いられた、それこそ斬新で前代未聞と言ってよいある叙述トリックを超えられなかったことである。そうなるともはや本作で大上段に構えて叙述トリックを謳う理由それ自体が無くなってしまい、企画倒れもいいところである。

そしてもう一点やはりあれにも触れなくてはなるまい。
他の作者の作品と比べるのは無粋ながら、名乗ってこそいないものの実質的に「叙述トリック短編集」である、綾辻行人の某作の存在だ。
「叙述トリック短編集」の元祖にして頂点であるあの傑作群を、本作は一編たりとも上回れなかったことは論をまたないだろう。
作者があれを知らないはずがなく、それでもあえて「叙述トリック短編集」に挑んだからには、たった一点でもいいから、なんらかの形で超える物を用意して欲しかったと思わざるを得ない。


19.2.26
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『ベルリンは晴れているか』深緑野分

2019年02月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
終戦後のベルリンでウェイトレスとして働くドイツ人少女アウグステ。
突如ソ連軍に呼び出され、恩人が不審死したことの容疑を掛けられた彼女は、プロパガンダ映画でユダヤ人を演じた俳優とともに調査を命じられる。

2018年このミス2位、文春3位、直木賞候補、大藪春彦賞候補、本屋大賞候補


~感想~
前作ではないが第二次世界大戦を描き2015年にこのミス2位、文春3位と全く同じ評価を受けた「戦場のコックたち」と比べると一段も二段も下がり、それどころか良かった点がほぼ壊滅しており、なぜこんな高評価なのか理解に苦しむ。

まずいくら終戦後の混乱期とはいえ、一介の庶民二人がソ連軍の依頼で事件を調査するという設定が無茶。ヒロインのアウグステが熱心に取り組む動機も不明で、最後には明かされるものの、伏せてここまで引っ張るならこれしかないという動機で、がっかりする。
道中でいろいろ起こるもののメインの話は遅々として進まず、そうした小事件やサブキャラたちが本筋に絡むことも無く、ただ起こっているだけで伏線として一切機能しないのもがっかり。
ラストは急転直下で危機に陥るものの、その脱出法はなぜかナレーションで語られるため盛り上がりに欠け、真相はよく意味がわからないし絶対成功するとも思えない、というかどう転んでも放っておけば破綻するような陰謀で、もはや物語の構成そのものが失敗しているとしか思えない。

終戦後のドイツという舞台に知識がなく、敗戦国の過酷な日常は興味深く読めたものの、エンタメ・冒険小説として描くなら、せめてもう少し伏線と回収というものを付けておくべきで、ミステリ、何より小説としては減点ポイントが多過ぎて、自分は全然楽しめなかった。


19.2.24
評価:★☆ 3
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今週のキン肉マン #276 墓場への抜け穴!!

2019年02月25日 | 今週のキン肉マン
・オメガハンドがあれば大抵の落下技は防げそう
・天守閣に地中への穴があるという不自然さは各自で答えを考えるように
・シングマンが城を粉々にしたのにどうして天守閣の裏にあった抜け穴が見つからないんだろう
・オモシロ起源説キターー
・信長の野望wwwww
・そら(信長なら超人墓場への入口見つけたら侵攻し)そうよ
・信長ならやりそうという我々の熱い信頼感
・信長ありえないくらいモブ顔だけどザ・マンの顔を隠してたパターンでまさか本編に登場しないだろうな
・マジかよミラージュマン VS 弥助やアビスマン VS 柴田勝家が見られた可能性あったのかよ
・シャベルはともかくクワはそれ耕してない?
・ついに明かされた本能寺の黒幕はザ・マンだった
・安土城リングからここまで面白い話を組み立てられるゆでのすごさよ
・とんでもない与太話から一気に流れを引き戻すフェニックス
・フェニックスとアリステラももうある意味でわかり合っている
・スグル王のために汚れ仕事を引き受けるフェニックス
・トップの地位にいるとすげえ小物だけどナンバー2だとフェニックスはこの上なく輝く
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SCP-1731~1740

2019年02月21日 | SCP紹介
SCP-1731 - An Exercise in Futility (無駄な儀式)
不気味な装飾のされた冷蔵庫と、その異常性質を活性化させる儀式。儀式の手順は複雑かつ一部失われていたが実験を繰り返し全てを判明させた。しかしせっかく活性化させても異常現象により手順が破られ、数分で停止してしまうためそれ以上の実験は不要とされた

SCP-1732 - Septimius Leo (セプティミウス・レオ)
ローマ皇帝セプティミウス・セウェルス。正体は言語を操り高い知能を持つライオンだったが、その事実は隠蔽され、人間として記録されている

SCP-1733 - Season Opener (開幕戦)
バスケの試合を録画した映像。再生するたびに内容が異なり、また映像の中の人物たちは次第にループしていることに気づいていく

SCP-1734 - The Hole in the Deck (甲板の穴)
18世紀に英国で建造され座礁したフリゲート艦。異次元に存在し船体に触れることが出来ない。甲板に空いた穴からは異常に巨大なダイオウイカと思われる触手が伸びており、攻撃すると暴れ、傷を負わせても再生する

SCP-1735 - Kind of Impenetrable Barrier (突破不能の障壁)
カナダのニューファンドランド島の砂浜に位置する球形の異常空間。透明で内部にはレジ袋が浮かび、決して破壊出来ない

SCP-1736 - Voice of the Light (光の声)
ある宗教の指導者と信者。指導者が神託を告げる間、強烈な放射線を放つ。信者には悪影響が無く、また神託を聞いた周囲の人物の25%程が新たな信者となる。ある博士がSCP-719 - Light-Bringer (ライトブリンガー)から作り出したと考えられる

SCP-1737 - The Referee (審判員)
審判員の姿をした人型実体。アマチュアスポーツの試合に本来の審判の代役で現れる。試合中に2名以上の重傷者を出し、うち2名を救急車で搬送する。病院に到着すると2名の重傷者が融合した人物が救急車から担架で運び出され、合併症等で2週間以内に死亡する。審判は試合に戻り、試合が終わると消失する。その前に拘束されると自殺し、身体は溶解する。検査の結果、その身体は直近に融合させられた人物のDNAと一致した

SCP-1738 - Phobia Sampler (恐怖症見本集)
制御パネルを取り付けられた床屋の椅子。座った人間を昏睡させ、特殊な恐怖症を植え付けることが出来る

SCP-1739 - Obsolete Laptop (もう使わないラップトップ)
ある日突然、財団施設に現れたラップトップPC。プログラムを起動すると3つのウィンドウが開き、第一のウィンドウは2004年1月1日1時18分から現在時刻の中で、入力した日時に使用者を転移させる。第二のウィンドウはチャット画面で、転移した使用者が現れ会話出来る。転移と同時に第三のウィンドウには女性が投げたボールを犬が拾いに行くCGアニメが現れる。転移から3日~7ヶ月後にチャットから使用者が消え、破裂したボールをくわえた犬が戻ってくる。ある使用者の報告により、このプログラムは宇宙を破壊する存在(犬はその象徴)をなだめるため平行世界を作り出し、破壊させる装置であり、PCが現れたということはこの世界もいずれ破壊される平行世界の一つの可能性が高く、PCの前に誰かが転移してくれば、終焉は3日~7ヶ月の間に訪れると判明した

SCP-1740 - Playgrounded (刑務公園)
ある公園の動物型の遊具。13歳未満の人物が1m以内に近付くと活性化し、園内に連行する。また付近のベンチに子供のいる人物が座るとジェル状の物質で拘束し、実子に触れられるまで植物状態にする。備え付けの銘板では子供をたくましく自立させるための施設であると説明している
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今週のキン肉マン #275 弟を殺した男と殺された弟!!

2019年02月18日 | 今週のキン肉マン
・急に理系キャラになるフェニックス
・技の沸点を外したわけですねわかりますね
・でも技を受ける必要はないしダメージはあるよね
・知性の神を憑依していなかったフェニックス
・マリポーサやビッグボディも憑依していなかったんだろうな
・必死こいてフェニックスを探した知性の神涙目
・ゼブラも技巧の神さえ憑依していれば真インフェルノ一発でマリキータマンを仕留められたんだよね
・これでゼブラは憑依してたらもはや言い訳のしようがなくなるけど
・しかしフェニックスの知性は「知性の神を憑依していれば勝てていた」という特大の死亡フラグを立てたことに気づいていない
・不死鳥まんぐり返し
・この技どう考えてもフェニックスのほうが先に落ちるしダメージでかくない?
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ミステリ感想-『悲願花』下村敦史

2019年02月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
小学5年生の時、一家心中から一人生き残った山上幸子は、十数年経った今でも両親を恨み、トラウマを抱えていた。
幸子は偶然出会った女が、自分とは逆に一家心中から生き残った母親だと知り、強い興味を抱く。


~感想~
こいつ地獄に落ちればいいのに。
いきなり暴言を吐いてしまったが、当初はクソヤロー揃いのクソヤローバトルロワイヤルかと思ったが、終わってみればクソヤローは一人だけだった。そしてそのクソヤローがほとんど一人勝ちで幕を閉じるのだから、正直な感想が漏れてしまうではないか。

山上幸子はおそらく作者初の女性の語り手だが、不幸な過去を差し引いても非常にいけ好かないクソヤローである。
ところが陰キャで口下手で容姿も十人並みの彼女が、婚活パーティーで金持ちイケメンに一目惚れされるのだから初っ端から納得が行かない。
しかも幸子は過去にしか目が向いておらず、まるでイイ女のように彼氏を振り回し、トラウマと対峙するどころか、自ら傷口を広げる。それだけならまだしも他者の傷口を嬉々としてえぐり、塩をすり込んでいくのだ。

その過程で現れる登場人物たちが、揃いも揃ってクソヤローばかりで、前述した通りクソヤローどもによるバトルロワイヤルが繰り広げられるのかと思いきや、終わってみればクソヤローは一人だけだった。それが誰かはネタバレになるので明かさないが、きっと描かれていないだけで、物語の続きでは、ものすっごいキャラの薄かったあの人に酷い目に遭わされるのだろうと願ってやまない。
だってそうでもなければ帳尻が合わないではないか。あの後きっと藤子FのSF短編か舞城ワールドに入るんだよね。そうだよね。

バレッバレの伏線がいくつかあり、だいたいの想定通りに転がるのでミステリとしてはあんまり出来は良くないものの、登場人物たちの振る舞いに、心を別の意味で揺さぶられる謎の感情移入をしてしまい、なかなか面白い読書体験だった。

それにしてもこの作者はデビュー作からずっと、他の作家なら避けて通るような厄介な題材ばかり採り上げて、それで一定以上の質は保っているのだからすごい。地味ながらもっと評価されるべき作家である。


19.2.15
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『さよなら純菜 そして、不死の怪物』浦賀和宏

2019年02月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
不測の事態からある破局を迎えた八木剛士は、必死に失態を取り戻そうと努力するが空回りするばかり。
全てを失った彼は、自身の能力を利用し「この恨みはらさでおくべきかリスト」に載った連中への復讐を決意する。


~感想~
先が気になり、続く2冊もざっと目を通して来たが、そうか…浦賀は10年早くなろう小説を書いてしまったのか…。
できるだけネタバレを避けて感想を書くと、ほとんど何も言えなくなってしまうが、とりあえず本作はミステリでも何でもなく、一言で言うなら「八木おおあばれ」である。
エピローグの厨二病にも程があるゼーレ会議を見るに、この先不安しか見当たらないが、どうなろうと楽しみではある。


19.2.6
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『誘拐作戦』都筑道夫

2019年02月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
無断借用したフォルクスワーゲンを乗り回すチンピラ四人組と、古色蒼然たるフォードの主が路上に倒れた女を発見。
知人だと思い連れ帰ったものの、人違いだったが金持ちの娘だと気づき、一転して誘拐計画を企てることに。

1963年日本推理作家協会賞候補、東西ベスト(1985)89位


~感想~
道路で拾った死にかけの女が金持ちの娘だと気づいた犯人グループが、そっくりの女を替え玉に仕立て、変型の狂言誘拐を企てる…というただでさえ入り組んだプロットなのに、さらに登場人物のうち2人が章ごとに入れ替わって作者を務める趣向まで凝らし、最後はそれどころではない明後日の方向に突き抜けるトリッキーすぎるミステリ。

伏線やフェアプレイぶりは正直なところいまいちだし、会話も何もかも古臭い。作者が入れ替わっても文体はそのままで、作者当ての設問はほとんど意味をなさない。
だがしかし本作は1962年に、すなわち57年前に書かれたという事実がとにかく恐ろしい。昭和も昭和の大昔にこの発想をし、これを実行したことだけで十分にお釣りが来る、読む価値のある作品である。


19.2.6
評価:★★★ 6
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小(コガ)リーグ目安箱

2019年02月10日 | お笑い
小金沢ビルヂングにて開催中の新レギュラー企画、小(コガ)リーグについて何かご意見・ご質問や集計間違い等ありましたら、お手数ですがここにコメントか、チャット室やツイッター等でお知らせください。
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SCP-1721~1730

2019年02月09日 | SCP紹介
SCP-1721 - Cultural Revolution (文化大革命)
3つの独楽。回すとそれぞれロシアの小説、無作為に選ばれた周囲の誰かの心情、回した人物への不適切な助言を書き上げる。3つを同時に至近距離で回すと、文章に限らずイラストや回路図等も含めランダムに生成する。職員間の不倫を示す記録や、危険なSCPの収容違反手順を生成したため実験は禁止された

SCP-1722 - Curmudgeon's Walking Stick (偏屈な杖)
約1.7mのホワイトオークの枝で造られた杖。人間が所持していると5m圏内のあらゆる記録に論評や校正を加える。文書には手書きで原文が判読困難になるほど書き加え、映像には60歳ほどの男性のコメントが入る。毒舌だがボブ・ディランの大ファンの様子

SCP-1723 - Radio Intercepting Woman (ラジオおばあちゃん)
94歳前後のウズベク系の女性。300m以内のあらゆる無線放送を聞き取れる。暗号すら聞き取れ多くの言語を操れるためスパイとして利用されていたが、高齢かつ長年の酷使で満身創痍となったところを財団に買い取られた。現在は無線を遮断する部屋で余生を過ごしている

SCP-1724 - Soul Meter (ソウル・メーター)
未知の動力で稼働する大型の装置。取り付けられた椅子に座った人物を未知の基準で採点しコメントをする。対象者は社交的になるが知性が低下する

SCP-1725 - Servant Enhancements (流行のしもべ)
真鍮の箱。人間を入れてパネルで操作すると、身体を流行の姿に作り変える。足をハイヒール型にしたり、耳をイヤリング型に出来る

SCP-1726 - The Library and the Pillar (図書館と石柱)
中国の13世紀に造られたと思われる建築物。内部は図書館になっており、学者の石像に案内されると立ち入れる。空間異常により4時間以上滞在すると身体が不調に陥る。中庭には石柱が建っており、その高さは12.8kmまで計測出来た

SCP-1727 - Auto-Heaven (自動車天国)
洗車機。「オープン・サブ・クリーニング」を選ぶと車が上空に射出される。車は車体を覆うのに十分な量がある水場(海、湖、雲、プール等)まで飛び続け、着地の衝撃でドライバーはほとんどの場合で死に至る

SCP-1728 - Buttery Decapitated Highwayman (バターまみれの首なし盗賊)
頭部の無い人間型の生物。体表から無塩バターを絶えず滲出させ、それを利用し拘束から抜け出す。所持していたナイフとショートパンツだけはバターの影響を受けない。女性のバッグを奪おうとし、その後何かがありこの状態になったと語る

SCP-1729 - The Collectors (コレクター達)
自律移動するタクシー。拾った客を捕食する

SCP-1730 - What Happened to Site-13? (サイト-13に何が起こったか?)
異世界から転移してきた財団サイト。ある博士の愚行により大規模な収容違反が発生し壊滅した。内部には複数のketel級SCPが徘徊していたが特殊部隊の活躍によりサイトは異次元へと消えた
※現在のところ全SCPの中で最も長い記事である
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