対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

自己表出はアブダクションである6

2024-03-26 | ノート
吉本隆明の三段階論

1)第一段階は次のように図示されている。

この図の「音声」→「現実界」がマリーノスキーの第一段階である。
「音声は現実界(自然)をまっすぐに指示し、その音声のなかにまだ意識とはよべないさまざまな原感情が含まれることになる。

2)「音声がしだいに意識の自己表出として発せられるようになり、それとともに現実界におこる特定の対象にたいして働きかけをその場で指示するとともに、指示されたものの象徴としての機能をもつようになる段階である。

1)の1次元の「反射」が、2)では「自己表出と指示表出」に2次元化される。自己表出の矢印↑の先端にある有節(半有節)音声と現実対象を結ぶ右下がりの線分がマリノウスキーの第2段階にあたる。
「ここではじめて現実界は立体的な意識過程にみたされるのである。この自己表出性が生まれるとともに、有節(半有節)音声は、たんに眼前にある特定の対象をその場で指示するのではなく、類概念を象徴する間接性とともに指定のひろがりや厚さを手に入れることになる。」

3)「音声はついに眼の前に対象をみていなくても、意識として自発的に指示表出ができるようになる段階である。たとえば狩猟人が獲物をみつけたとき発する有節音声が、音声体験としてつみかさねられ、ついに獲物を眼のまえにみていないときでも、特定の有節音声が自発的に表出され、それにともなって獲物の概念がおもいうかべられる段階である。

ここではじめて有節音声は言語としてのすべての最小条件をもつことになる。」
右側の「有節音声」・「現実対象」・「対象像」を結ぶ三角形がマリノウスキーの第三段階にあたる。
「有節音声が自己表出として発せられるようになったとき、いいかえれば言語としての条件をもつようになったとき、言語は現実的な対象との一義的な関係をもたなくなった。たとえば、原始人が海をみて、自己表出として〈海(う)〉といったとき、〈う〉という有節音声は、いま眼のまえにみえている海であるとともに、また他のどこかの海をも類概念として抽出していることになる。そのために、はんたいに眼の前にある海は〈海(う)〉ということばでは具体的にとらえつくせなくなり、ひろびろとしているさまを〈海(う)の原〉なら〈うのはら〉といわざるをえなくなった。」

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