ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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現代世界史9~レーガン政権の対ソ軍拡

2014-08-02 08:54:21 | 現代世界史
●レーガン政権の対ソ軍拡

 現代の世界史を画する出来事に、米ソ冷戦の終結がある。ここで冷戦が終焉に向かった過程を記し、冷戦後の世界について書きたい。
 冷戦の終結は、米ソの対立・抗争の結果だった。まず米国側から書くと、1980年(昭和55年)の米国大統領選挙で、共和党のロナルド・レーガンが現職大統領のカーターを打ち破ったことで、米ソ対立の構造は根底から動き出すことになった。

 米ソ2大超大国の冷戦は、20年以上も続いた。その間、米ソ両陣営に分かれての軍事同盟が世界中に張り巡らされた。核兵器、ICBMの開発等、米ソの軍備拡大競争は際限なく進められた。レーガンは、筋金入りの反共タカ派であり、カーターの協調路線とは打って変わって、ソ連との熾烈な軍拡競争を行った。レーガンは、ソ連を「悪の帝国」と呼び、共産主義との対決路線を打ち出した。とりわけ、敵が発射した大陸間弾道弾(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)をレーザービームで破壊するという戦略防衛構想(SDI)を進めた。SDIは、宇宙空間をも舞台にするため、スター・ウォーズ計画とも呼ばれた。この軍拡路線が、ソ連を軍拡競争に引き込み、経済的に窮地に追い込んだ。その結果、冷戦を終結させ、ソ連共産政権を崩壊に導いたことは、レーガン政権の功績である。

 経済政策については、レーガン政権は、新自由主義・市場原理主義を取り入れた政策を、8年間にわたって行った。イギリスでは、レーガンに先立ってサッチャーが同様の政策を行い、インフレ対策としては効果を上げた。そのため、新自由主義・市場原理主義は、1980年代以降、日本を始めとする多くの国々で圧倒的な影響力を振るった。
 レーガン政権の経済政策は、国内経済の建て直しと軍備増強という課題を掲げ、大幅な減税と国防費の増額という、相反する政策を同時に実行するものだった。その政策は、レーガノミックスと呼ばれる。
 レーガン政権は、新古典派経済学に基づくフラット型の税制を実施した。法人税と所得税を極端に低くし、一部の富裕層と株主や経営者の所得を最大にする財政政策である。結果は、当初の見込みに反して、大幅減税で税収が激減し、財政赤字が拡大した。またインフレ抑制とドル資金をアメリカに呼び寄せることを目的に高金利政策とドル高政策をとったために、製造業は海外に生産拠点を移していった。その結果、輸出が減り、輸入が増えて、貿易収支の赤字が拡大し、財政赤字と貿易赤字という「双子の赤字」が顕著になった。

 ソ連に打ち勝とうとする軍拡は、米国の財政を圧迫した。また、ドルの価値は低下を続けた。西側の結束を図りつつ自国の基軸通貨ドルを守ろうとするレーガン政権は、先進諸国に働きかけを行った。1985年(昭和60年)に主要5カ国の財務大臣がニューヨークのプラザ・ホテルに集結し、ドルの切り下げに合意した。これが、プラザ合意である。プラザ合意は、共産主義と対決するアメリカの財政赤字、ドルの価値低落を、日本及び西欧諸国の協力によって改善しようとしたものだった。

 米国は日欧と合意したドル安によって、輸出が増大し貿易収支は改善したが、国内経済は悪化し、財政赤字は膨らんだ。ところが、ソ連の方が多大な軍事費支出に耐え切れなくなり、経済危機に陥った。ソ連でミハエル・ゴルバチョフが共産党書記長に就くと、ペレストロイカと呼ばれる民主化政策が断行され、米国との関係改善が図られた。レーガンは、1985年から88年(60~63年)にかけてゴルバチョフと4度にわたる首脳会談を行った。この間、両首脳は87年(62年)に、中距離核戦力全廃条約(INF条約)に調印した。こうしたレーガン政権の対ソ外交を受け、ブッシュ父政権で、89年(平成元年)12月米ソ冷戦は終結することになる。

 日本は高度経済成長により、1968年に、西ドイツを抜いてGNP世界第2位の経済大国となった。1980年代には自動車産業など多くの経済分野で、米国に脅威に与える存在となっていた。米国はプラザ合意で日本に経済的に協力させる体制を作り、アメリカの軍事力と日本の経済力の合体によって、ソ連・東欧の共産主義政権を倒壊させることに成功した。米国にとっては、ソ連を潰すとともに、新たな経済的競争相手である日本を、アメリカの経済的支配下に組み込むという、一石二鳥の荒業をやってのけたわけである。
 一方、日本は、プラザ合意により、急激な円高となり、バブルが発生した。束の間の繁栄の後、1980年代末から90年代初めにかけてバブルは崩壊した。その後、日本経済は、政府の経済政策の誤りによって、戦後先進国で唯一、デフレに陥った。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「アメリカに収奪される日本~プラザ合意から郵政民営化への展開」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion13d.htm

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