ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

現代の眺望と人類の課題129

2009-06-06 08:40:38 | 歴史
●ゴールドマン・サックスの代理人が日本郵政の社長に

 2006年(平成18年)10月に郵政民営化の準備企画会社「日本郵政株式会社」の初代社長に、西川善文氏が就任した。本年(2009年)、後に触れる「かんぽの宿」の一括譲渡問題で、西川氏の責任が問われ、社長職の留任を認めるかどうかが、大きな政治問題となっている。
 日本郵政の社長に西川氏を起用したのは、小泉内閣当時の小泉首相・竹中大臣である。西川氏は日本郵政に転ずる前、三井住友銀行の頭取をしていた。さらに前は住友銀行にいた。住友銀行は1986年(昭和61年)、ゴールドマン・サックス(GS)に対して5億ドル(約700億円)を出資し、証券業務のノウハウを学んだ。三井系のさくら銀行と合併して三井住友銀行となった。西川氏は、その頭取となった。
 西川氏は、2002年(平成14年)1月に三井住友銀行の持つGSの株式をすべて売却し、3000億円の売却益を得た。この年12月、西川氏は、当時GSのCEOだったヘンリー・ポールソンに付き添って、竹中平蔵大臣を訪問した。竹中氏は同年秋、金融担当相となり、不良債権処理を加速させる「金融再生プログラム」を策定し、05年(17年)3月末までに不良債権比率を半減させるよう、金融機関に求めていた。そのため竹中氏は、大手銀行と必ずしも友好的な関係にはなかったのだが、西川氏とは親密な関係にあった。

 三井住友銀行は、資本増強のため2003年(平成15年)に優先株を5000億円規模で発行した。そのうち、1500億円をGSが引き受けた。当時、三井住友銀行は、存続の危機にあった。旧三和銀行が金融庁から追い詰められて三菱東京フィナンシャル・グループに吸収合併された直後のことで、「次の標的は三井住友銀行だ」と言われた。頭取の西川氏は三井住友にとって極めて不利な増資引き受けをGSに頼まざるを得なくなったのである。ちなみに、明治時代から、三井はロスチャイルドと、三菱はロックフェラーとの関係が深い。
 もともとロスチャイルド系だった三井住友銀行は、GSと深い関係を持つようになり、やがてGSの下で動くようになった。西川氏は「ゴールドマン・サックスの代理人」とも言われた。そうした西川氏が日本郵政の社長になったのである。
 先に書いたように、ゴールドマン・サックスは、旧長銀の買収において、重要な役割を果たした。日本国政府のアドバイザーとなって、旧長銀の売却を進めた。リップルウッドやニューLTCBパートナーズに配置した同社の人脈を使って、日本から大きな利益を上げた。そのGSと、日本郵政の西川社長はつながっているわけである。
 ゴールドマン・サックスは、ロスチャイルドとロックフェラーが相乗りしている金融機関である。実質的なオーナーは、デイヴィッド・ロックフェラーの甥ジョン・デヴィソン "ジェイ" ロックフェラー4世と見られる。デイヴィッドとジェイの間では、世代交代の争いが行われているようだが、ジェイは、単独ではデイヴィッドに対抗できないので、ロスチャイルドと提携している。その提携の主要な機関の一つが、ゴールドマン・サックスなのである。
 私は西川氏を日本郵政のトップにすえた人事は、小泉元首相・竹中元大臣の個人的な判断ではなく、巨大国際金融資本の意向を反映したものと推測する。そこには、郵貯・簡保の資金を金融市場に引き出し、外資と買弁によって山分けしようという思惑があるに違いない。

●ロックフェラーを中心とした外資と日本の資本との戦い

 郵政の民営化=私営化を推進してきた政治家たちは、旧長銀を外資にただ同然で売り渡した政治家たちと重なる。従米売国の政治家によって、日本の金融的な隷属が徹底され、日本の伝統文化が破壊され、日本がアメリカの属州のごとき存在と化していく。経済的自由化は、合理主義の思想である。しかし、その理念を追求することで、日本を売り渡すことは、日本の自滅行為である。
 郵政民営化は、日米保険摩擦であり、アメリカの保険業界が簡保を狙って要望してきたものである。アメリカの十大保険会社のうち6社は、ロックフェラー系である。ロックフェラー系保険会社の筆頭は、世界最大の保険会社AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)である。AIGの元会長モーリン・グリーンバーグは、デイヴィッド・ロックフェラーの影響下にあるCFRの副会長をしていた。日本に郵政民営化を求めるアメリカ保険業界を牛耳っているのは、ロックフェラー財閥なのである。

 私は、本稿で簡保の次は郵貯が狙われており、郵貯こそ最大の獲物だと書いてきた。ロックフェラー系を中心とするアメリカの金融機関は、日本の銀行を買収の対象としてきた。旧長銀は、見事に買い取られた。買収には、デイヴィッド・ロックフェラーが関わっていた。デイヴィッドは、改称後の新生銀行の取締役になってもいた。デイヴィッドらのアメリカの金融資本家が本当に狙っていたのは、旧長銀程度の規模の銀行ではない。日本を代表する大手銀行こそ、吸収合併の対象である。
 旧UFJ銀行は、三和銀行と東海銀行が合併して出来た銀行だった。三菱東京と三井住友の争奪の結果、現在は三菱東京UFJ銀行になっているが、UFJ銀行だった時に、デイヴィッド・ロックフェラーらが触手を伸ばしていた。当時の小泉首相は、UFJグループがデイヴィッド系のシティ・グループやハゲタカ投資ファンドのサーベラスに買収されないように、ブッシュ子政権と交渉した。その結果、シティ・グループとの関係の深い東京三菱フィナンシャル・グループがUFJを買収することで、米国側と妥協したと見られる。
 この件について、副島隆彦氏は著書「重税国家日本の奈落」(祥伝社)に次のように書いている。
 「UFJ(旧三和銀行・鴻池財閥系)が解体され、旧三和からたくさんお金を借りて不良債権になっていたダイエーが潰された。ミサワホームも潰されてトヨタグループに乗っ取られた。だから本当の話は、UFJを無理やり潰すことによって、そこからお金を借りていた大企業群を、『借金の返済能力なし』と追い詰めて乗っ取らせる初めからの計画的な動きだったのである」「アメリカのUFJ潰しの最後の標的は、実はトヨタ自動車そのものであるとささやかれている」と。UFJ銀行を外資に買収されると、トヨタが外資に資金源を押さえられ、窮地に陥るおそれがあったのだろう。
 アメリカの代表的な銀行には、シティ・グループとJ・P・モルガン・チェイスがある。また2008年(平成20年)世界経済危機後、投資銀行から商業銀行に変わったゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーもある。これらの企業買収に巧みな外資系金融機関は、日本の大手銀行を狙ってきた。そして将来的に最大の目標物が、完全民営化=私企業化された場合の「ゆうちょ銀行」なのである。
 2008年世界経済危機で、デイヴィッド・ロックフェラーのシティ・グループをはじめ、アメリカの多くの金融機関は経営が悪化している。日本侵攻計画は頓挫した。これは、わが国にとって、僥倖である。この機をとらえて、郵政の民営化=私営化を見直し、わが国民の資産を守り、わが国の国益にかなった形に修正すべきである。

 次回に続く。

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